ふしんばん
やはり疲れていたのだろう、さっさと寝袋に入ったかと思えばベイジルは直ぐに寝てしまった。
当然暇になるわけで、まあ何も無くぽけーっとしてるのもアリと言えばアリなのだが。
まあうるさくするのは寝ているベイジルに悪いので、静かに出来る何かが無ければ本格的に暇だ。
何故か暇という言葉に対して『私』は歓喜と拒絶反応という相対的な何かを感じているが、なんでだろーね?
『当機』としても働くことはやぶさかでないのだが、『私』的にはむしろ仕事をしていないと落ち着かないレベルの何かを感じている。
という訳でうるさくならない範囲で適当に周辺の荷物を漁ったりするかと思った矢先に自分以外の何かが動く音を検知する。
「お? もしかして生き残っていたごすずんの同行者……」
「Grrr」
「ではなさそうだな」
流石に四足歩行で実に野性的な喋り方の同行者という可能性は無いだろう。となれば野生の畜生だろうか。
恐らくは火も焚かずに寝入ったベイジルを晩御飯にするために来た、といった様子の……何?
犬とも猪とも何とも言い難い、かといって別に根本から生物でないものが動いているといった様子でもない、見た事の無い生き物。
大きさにして立っている当機と同じくらいの高さなのだから、全長たるや確実に大型と言っても過言ではないだろう。
無論ベイジルなど程よい御飯程度の大きさだろうし、外見的に言えば当機などはおやつ程度だろう。
しかし、言葉も通じぬ畜生に貴重な情報源を食べられるわけにはいかないので?
「Bo「安眠妨害は駄目だろう」」
威嚇のつもりか、吠えようとした畜生にインターセプトを行う。出来るだけ音を立てないよう、中身だけが潰れる強さでの掌打。
揺られるどころか軽く骨入りミンチになったであろう脳みそでは、何が起きたかを判断する事も出来なかっただろう。
ズシリと体躯にあった音を立てて沈む畜生に、慌ててベイジルの方を確認するがちゃんと安眠している。
「危険地帯で安眠とかやはりごすずんのほうがポンコツぇ……」
数時間の睡眠の間、一匹しか訪れないということもなく。結局空が明るくなるまで不寝番をすることになるのであった。