表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

ここをきゃんぷちとする。

 あるいた。ついた。かった。


 と、脳内で描写していれば勝手に目的地に着くのは物語の中だけなので、当機は山を下りて森を歩いている。


 キャンプ地があるなどと抜かす青少年ごすずんは先程からせわしなくあっちをきょろきょろ、こっちをきょろきょろといった有様で、もしかしたら道に迷っているのではないかという疑いが濃厚だ。


 むしろ、獣道どころか何も通ったことはありませんが? みたいな藪の中に突っ込んでいくのは、確実に通った事の無い道だろうからして?


 疲れる事も無ければ大概の状況で怪我どころか擦り傷一つ付かないハイスペックな当機はまあ寛大な心を持って不平不満も無く付き従っているが、正直大丈夫なのだろうか。


 と思いながら歩く事実に数時間。天体の見えない以上明度でしか時間帯の把握が出来ない現状で、そろそろ夜ですよと言わんばかりの暗さ。


 これはもう一度その辺で休憩するべきなのでは? と思う程消耗した青少年ごすずんは、ようやくその足を止めた。


「お? 遂に諦めたか?」


「ちげぇよ馬鹿、着いたんだよ」


 こっちは背丈より高い草ばかりで見えないってのに、馬鹿とは失敬な。まあ青少年ごすずんに敬意とかそういった高尚なものを求めるのも可哀想だな。当機理解した。


「うわ、なんか糞腹立つ顔してるし……まぁいいや、やっぱり誰も帰ってきてないのか……」


 藪を抜けた先に見えたのはどうやら森の外のようで、確かに簡単な台車のようなものや寝泊まりした跡のような物も見える。


 2桁に行くか行かないか程度の人数は居たのだと思えるその痕跡は、つまり先程の施設に立ち入った者達の痕跡なのだろう。


 これだけのろのろと歩いてきたにもかかわらず、誰も居ないとなれば考えられるパターンは多くない。


 これが勘違いの多い空気読めない低スペックであれば、青少年ごすずんを仲間外れにして帰ったとかそんな事を考えるのだろうが、当機はハイスペックなので?


 恐らくは先程の粗大ゴミ(オートマトン)とか、他の要因とかで芸術に昇華されてしまったのだろう。当機に出会えなかった不幸だな。


「親しかったのかごすずん?」


「いや、別にそうでもないけどさ。良い人達だったからな……」


「ほーん。ごすずんは良い奴なんだな」


 大して親しくも無い相手に良い人だったからとかそんな感じで悼むことが出来るのといい、名前の時の気遣いといい、性根は良い奴なのだろう。善人的な。


 つまり命を助けてくれたし名前を付けてあげた当機を急に売ったり捨てたりといった事は無さそうである。マジ(都合の)良い奴。


「良い奴なんかじゃないさ。儲け話に誘ってくれた先輩が目の前で……そんな時に真っ先に逃げ出したんだぜ?」


 まあ逃げてなかったら生きて無いんだろうしね? 仕方が無いんじゃない?


「いつだってそうだ。みんな死んじまって、俺ばかり生き残る……」


 死ぬよりはいい事なのでは?


「……とりあえず、今日は此処で夜を越すからな」


 突っ込みを入れた場合面倒なことになりそうだから空気を読んで黙ってられる当機。


 正直疲れとは無縁のボディなので当機は休憩しなくてもよいのだが、やはり人間は休憩が必要だろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ