影響力のある人間になりたくはあるけど濁点付くと辛いだけでしたまる
「ごすずん、臨時収入は安定した稼ぎじゃないから貯蓄すべきだぞでもちょっとくらいならご飯に使う事もやぶさかではない」
「いきなりかよポンコツぅ……」
翌日、朝一で昨日の雑多な死体の山の代金を確認したところ、少なくとも昨日買わせた当機の一張羅よりは多い金額であった。
まあ物価も知らないし『私』的にも『本当においしい食事』なんていうものは金額が天井知らずな上にベイジルが食べても……ねぇ?
つまり、そこそこに美味い飯程度の物を考えているのだが、流石に衣服より高いなんて言う事は……あり得るのか。
「冗談だごすずん。そんなことより安定した収入の為にも仕事の話をしよう」
「安定した収入、ねぇ」
ぶっちゃけた話をすれば当機が適当に台車満載の肉の山を運搬すれば定期収入な訳だが、流石に。
ほら、魚を与えるんじゃなくて獲り方を教えなさいって誰かも言っていたわけだし?
「とりあえずは依頼を受けるべき……だよなぁ……」
流石に最近旨い話とやらに飛びついて死にかけただけあって、儲け話を聞いてよし行こう! とはならないようで。
「ソラが居るっても流石にA級遺跡なんて行きたくは無いし、かといって溝攫いなんて儲からないし」
遠方の殺人機械マシマシな遺跡をさっと提示してくるローガン氏と、危険が無いとはいえ最低クラスな報酬の依頼を提示してくるリディア嬢。
一旦金の受け取りで逃げたものの、視線がこちらをチラチラ窺っているのは丸わかりなんだよなぁ。
「自分の力量に合った依頼を選ぶべきだぞごすずん」
「つっても、装備を買ってDに上がったばかりでなぁ……」
曰く、には等級というものがあるそうな。最低なのはFで最高はA、Sなんてものは無い。大体なんでAの上がSなんだよ。
Fであればその辺の子供でもなれる、というか仕事の無い孤児はゴミを漁るかF級遺跡漁りになるかのほぼ二択とか。なっても仕事はゴミ漁りだけど。
で、ある程度普通に仕事が出来る人間であればE級に昇格できると。掃除だとか公共の雑用をするらしい。
そしてベイジルが自称するD級以上は、実力なり装備なりである程度の荒事が出来ると判断された連中らしい。
金を貯めて装備を買うだけでD級、と言えば簡単なように思えるが年単位で計画的に金を貯めれないといけないのだから屑には無理だ。
逆説的に装備を整えられる計画性があるんだから、一定以上の評価は出来るという訳だ。
そしてある程度の実績を積めばC、B、Aと上がっていくらしい。無論実力が無ければ上がれないか愉快なオブジェなりなにがしかのご飯になり果てるそうだが。
つまり何が言いたいかというと、装備品を整えたばかりのD級っていうのはつまり実戦経験の無いほぼ一般人という訳である。
じゃあ安全なゴミ拾いなり溝攫いなりをするべきか? と言われれば、E級以下の依頼とD級以上の依頼の報酬を考えれば一目瞭然であった。
わざわざ高収入の為の投資をしたのに、投げ出すように底辺の仕事を続けるとか頭おかしいしね?
「D級の依頼って言ったら、やっぱり……」