とうとつなおっさん
それからしばらく、様々な質問や雑談という名の情報収集に励んでいた所で、扉の外から駆け寄ってくる足音。
勢い良くドアが開き、ガタイの良いおっさんが飛び込んでくる。しばらく後方にベイジルも居る事は確認した。
「リディアっ! 無事か! 何事もないか!」
「ど、どうしたのローガンさん!」
人間にしては実に高い能力を発揮するおっさんこと推定ローガン氏は、椅子ごとリディア嬢を引き寄せると当機との反対側に回す。
ふむ、考えられる事象としてはごすずんが弁明を行ったところ中途半端に伝わったか話の途中で慌てて、といったところだろうか。
「どうしたもこうしたもねぇぞ! ベイジルの奴も何考えてやがんだ!」
書類仕事をする職員とはかけ離れた筋肉と、此方の行動に備えるような重心やら体勢やらの割に服飾のデザインはリディア嬢と同じ。
敵意やら決意やらに満ちていそうな眼付といい、なんだろう、ごすずんの元同業的なアレが引退して事務に回りましたみたいな。
「ちょ、ちょっと! ソラちゃんがどうしたのよ! こんな女の子相手にどうしてそんな」
「ただのガキが何の遺物の補助もない台車であんなもん運べるかよ!」
その意見は実に正しいと思う。子供どころか大の大人だって厳しいとは思うが、まあ目の前のローガン氏なら余裕かもしれない。
先程の身のこなしは『私』の常識からしても人間離れしていて、ともすれば『同類』かとも思ったが。
それにしては各種反応や観測結果が『人間』、ベイジルと同じ種族であると告げている。
「半ミューかとも思って聞いたら遺跡で見つけた殺人機械だぁ? おい! テメェ!」
「ローガンさん、だから話を最後まで」
「馬鹿はだぁってろ! 糞!」
走ったのだろう、息を切らしながら呼びかける馬鹿の話を最後まで聞かないローガン氏はきっとずのうしすうとかが高いのだろう。
いや、まあベイジルの知能指数に関しては似たような感想を持っているので擁護出来ないのだが。
「ではソラは優秀なので口を挟ませて貰うが、一度落ち着かれてはいかがだろう?」
「!? おい、コイツ何を企んでんだ馬鹿!」
「だから、企むも何も多分敵対してたら今頃町ごと消し飛んでるって!」
「んなこたぁわかってんだよ馬鹿! 『人型』なんざ悪夢みてぇなもんだからな!」
あくまで臨戦態勢を崩さないローガン氏に役に立たなそうなごすずん、若干泣きの入りそうなリディア嬢、当機。
非常によろしくない空気だと理解できるが、実際なんの企みもない人畜無害だと証明、しなきゃダメなのコレ?