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ぷろろーぐ

初投稿です 感想などおなしゃす!

「はっ、はっ、っ……っはっ、はっ」


 ほの暗い通路を一人の青小年が必死の形相で駆けていく。


 うっすらと光を放つつるつるとした部分を残しながらも、岩石に侵食された洞窟じみた通路。


 想定されていない路面に足を取られながらも、ガシャガシャと規則的な音を立てて追うのは疲れを知らぬ殺人機械(オートマトン


 このままであれば、いずれ青少年は追い付かれるだけだろう。さりとて体力の残る内に立ち向かう気は青少年には無い。


 少なくとも、自身より上級の遺跡漁りスカベンジャーがソレになすすべもなくゆかいなげんだいオブジェにされた光景を見てしまった以上は。


「ふっ、ふっ、ふーっ」


 死という未来を理解してしまった理性と限界を告げようとする肉体を、死にたくないと本能が黙らせる。


 死にたくない、こんなところで死ねないという足掻きは果たして、ついには一筋の希望へと辿り着く。


「! うぉぉっ!」


 壁に空いた、辛うじて通り抜けられそうな穴。先の見通せぬほどの暗闇は、ともすれば死に直結しているが。


 危険性の分からぬ、先がどうなっているかもわからない穴と、背後から迫る確実な死。


 一瞬の躊躇いも無く飛び込んでいく青少年は、それを考える能力も天秤にかける知性も無いゆえにこんなところに居るのかもしれない。


 浮遊感。先ほどまでの通路と異なり光の無い中を僅かばかり落下して。


「ごふっ」


 幸いとも言うべきか、叩きつけられて衝撃を受ける程度で済む。と同時に、ぬるりと床が落ち始めて。


 抜けるように落ちる床。上から聞こえる破砕音。さほど広くはない空間に、差し込む一筋の光と、降ってくる死。


「ぐぉぉっ!」


 力を振り絞り、滑り込むようにして壁に開いた通路へと飛び移る青少年の後ろに、盛大な音を立てて着地する殺人機械オートマトン


 青少年へと伸ばしたアームが、加速する床の速度によりぎりぎりで宙を掴んで。


 辛うじて生を掴んだ青少年の後ろで、闇の中へと沈んでゆくのであった。


「はぁっ……はぁ、し、死ぬかと思ったぜ……」


 安全を確保出来たとは言えずとも、窮地を脱した青少年は這い上がったその場でへたり込む。


 安心感から、先程までの恐怖が怒りへと転化していく。


「あーくそっ! 何がボロい探索だよ、殺人機械オートマトンの居るレベルの生きた遺跡なんてB級以上だろっ!」


 未発見の、最近の地殻変動で入り口が出てきた遺跡に、C級の先輩に荷物持ち(ポーター)として連れてこられた青少年はついこの間D級に上がったばかり。


 組合による評価を待たず一獲千金を夢見た先輩の末路は現代アートであり、散り散りに逃げた他の遺跡漁りスカベンジャーもどうなっているのか。


 少なくともこのままでは青少年も前衛芸術の仲間入りだろう。未だ死地にて大声で喚いているのだから。


「ふーっ、ふーっ……はぁ、くそっ」


 ひとしきり騒いで落ち着いたのだろう。ゆっくりと立ち上がるとようやく周囲を見渡す。


「一本道か……」


 落ちてくる前の洞窟に比べて、全面が綺麗なそこは正に通路だった。


 光源を用意しなくとも光る通路は遺跡が未だに生きている証であり、青少年にとって良くも悪くもあった。


 警戒しながらも進んでいく青少年。脇道もなく、ひたすらに直線の道を進んでいく。


「出口……なわけ無いよな」


 直進した先の行き止まりに扉が一つ。途中に同じような物もなく、入ってきた縦穴は登れるかもわからない。


 だからその先に進む他に道はないのだが、落ちた以上は登らなければ出られない筈で。


 つまり、少なくともこの扉が直接の出口ではないというのは、青少年にも簡単に分かった。


 恐る恐る扉に触れる、と勝手に左右へと開いていく。


「なんだ……ここ……」


 ブーンと、何かが稼働する音が響く広間。いくつもの機械が薄暗い中にひしめき合う中で中央に一際目立つシリンダー。


 うっすらと蒼く光るそれは、しかし透明度が低く中に何が入っているのか不明で。


「あ? 説明か? 古代文字なんて読めねぇし……」


 シリンダーの前にある板に、存在は知っているが自分には関係ないモノが書かれているのを見て。


「所々は分かる、か? えっと、うーん」


 読める文字を探そうと、指を添えたところでガコンと突然何か大きな音がして。


「おあっ? なんだ!?」


 再度響く音は何か重い物が叩きつけられるような音で、発生源は。


 びしりと、シリンダーに皹が入り。


 飛び散るシリンダーの破片。


 流れ出る蒼い液体。


 人型の。


 死。


「ぽへー、ここどこ、あ、だいいちむらびとはっけん」


 ……それは、ボーイ・ミーツ・ガールと呼ぶには余りにも何もかもが酷かった。

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