✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳12︰稽古✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳
強くなりたいと願い、稽古をつけてもらった柧空。
柚月は、何かしてあげたいと思うが、何か分からない。
皓成に相談してみるが何か企んでいるよう…。
妖怪界の森の奥。
「はぁー!!」
「おい!キツネ!そんなもんなのか?」
「まだまだー!」
柧空と雷華が稽古をしていた。
そこに、柚月、珀空がきていた。
「柧空ー。頑張ってー!」
「どうですか?風華様。」
風華は、少し悩んで言った。
「うーん…。少しは良くなってきましたが、動きが遅いですね…。あと、力がこもりすぎているというか…。」
「そうですか…。あの子は、小さい頃からの悪い癖が、出てしまっている。」
「そうみたいですね…。」
柚月たちが、柧空と風華の稽古を見ていた。
柚月には、どういけないのか、どういいのか、分からないが、ただ柚月には、柧空の頑張っている姿を見て、
(柧空…。あんなに頑張ってる…。私も何か頑張らないと!)
そう思った。
「はぁー。やっと終わったー。」
「キツネ、まだまだ甘いぞ!」
「うーん。それは分かってるんだ。兄貴に及ばないことを…。」
「柧空、家では僕が教えようか?」
「うん。俺もまだまだだな…。」
「キツネよ。また明日だな。」
「ありがとうございました。」
風華、雷華は、自分の住処へと戻っていった。
柚月たちは、自分たちの家に帰った。
「ただいまー。」
「あら、おかえり。」
「お帰りー。どうだったー?」
部屋の奥から皓成が、腕組みをして出てきた。
「いやー…。全然だめだ…。あれでは、柚月を守るどころか、誰も守れない…。今までは兄貴が居たから、なんとかなったんだと改めて思ったよ。」
柧空の表情は硬くなっていた。
今までのことを思うと、柧空はいつか兄貴みたいに強くなりたいと思っていた。
幼少期の時は、いつも柧空は、珀空の後ろに隠れていた。その時は、臆病でいつも他の妖怪たちにいじめられていた。
そんなこともあってか、柧空はいつしか兄貴みたいに強くなりたいと思えるようになっていった。
その夜。柧空は珀空に稽古を申し込んだ。
「兄貴…。悪いな…。」
「いいや。大丈夫だよ。柧空が少しでも強くなるのなら、どんなことでも協力するよ。」
「ありがとう…。」
2人は、家の近くにある稽古場に来ていた。
そこに、柚月も様子を見に来ていた。
(大丈夫かな?)
そう心配をしながら、2人を見ていると、皓成が来た。
「おっ!今からかい?間に合ってよかった。」
「お父さんも、心配になってきたのですか?」
「ん?まぁ…。そうかな。」
曖昧な答えをしたところで、珀空と柧空の稽古が始まった。
――――――ブオ――――!!
突然、風が吹いたと同時に2人の姿が変わった。
妖狐の姿になっていた。その姿はいつになっても、きれいで、かっこよかった。
「さて、柧空。始めるよ。」
「ああ。」
そう言ったとたんに、2人は激しくぶつかり合った。
剣と剣のぶつかり合い。
「大丈夫なんでしょうか?」
「そうだね。結構、柧空は飛ばしている。あれでは、珀空の思うツボだよ。」
「でも、珀空は圧倒的に強いんでしょう?」
「柚月ちゃんは、気づいてないのかい?」
「えっ?」
「2人とも、君が好きなんだと思う。好きな人をいつまで傍に置いときたいからね。だから、2人とも頑張っているんだよ。」
その言葉は柚月にとってすごく分かっていた。
柚月は、2人のことはとても好き。どちらかを選ぶことなんて…。
柚月は、少し考えると、
「皓成さん…、私に、何かできることがありますか?2人の役に立ちたいんです!」
「そんなこと言ってもねぇ…。」
「だって、皓成さん。どちらかのお嫁さんになるのなら、危ないこともこの先たくさんありますよね?あと、ずっと守られているばかりでは、妖怪のお嫁さんが務まると思いますか?」
(柚月ちゃん…。そこまで…。この子は、凄いな…。)
「皓成さん?」
皓成は、じーっと柚月をみて、どこかに行ってしまった。
(皓成さん?やっぱり…。私には難しいのかなぁ?)
そう思いながら、2人の稽古を見ていた。
「はぁ…、はぁ…。」
「もう息が切れているぞ?体力がないんじゃないか?」
「そ、そんなことはない…。」
3時間程していたんだろう。珀空はほとんど息を切らしてはいなかった。
(さすが…。珀空。全然息が切れてない…。)
「くっそ…。」
柧空はその場に倒れこんだ。
「兄貴は、やっぱり凄いな。」
「柧空は、昔からだが、動きが遅いのと、無駄な動きが多すぎる。」
「そうなのか…。」
「ああ。それでは、相手が突っ込んで来られたときに、太刀打ちが出来ない。だから、1テンポが遅れるんだ。」
「なるほどなぁ。」
「まぁ、この続きはまた明日だな。」
「まだ、俺はいけるぞ!」
「あまり、無理してもダメだ。それに…。」
「それに…?」
柧空が首を傾げて言った。すると、珀空は稽古場の入り口を指さした。
「あれを見てごらん。」
「あっ…。」
そう言われて入り口を見た。
そこには、柚月がウトウトと寝ていた。
「柚月…。あいつ、3時間ずっといたのか?」
「初めから、ずっといたよ?心配そうに見ていたよ。」
「そうだったのか。じゃあ、柚月のためにもうやめておこうか…。」
2人は、稽古をやめて、珀空は柚月を抱え、部屋へと連れて行った。
部屋に向かって行っているとき、蒼葉にあった。
「あら?2人とも稽古は終わったの?柚月ちゃん?」
「はい。終わりました。」
「柚月は、俺たちの稽古をしているところを見ていたんだ。」
「心配そうにね。」
「そうだったの?あまり、心配させないのよ?特に、柧空。あなたよ。」
「分かったよ…。」
そう言って、部屋に戻った。
布団に柚月を寝かした。
2人は、柚月の寝顔を見ながら、
「かわいい顔をして寝て…。」
「兄貴、襲うなよ?」
「えっ?今日はね。」
珀空がニヤニヤしながら、そう言う。
呆れ顔の柧空は注意深く、この先見ていこうと思った。
皓成の企みは?
まだまだ続きます。
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