9︰*********編入生がやって来た*********
柚月、珀空、柧空は、人間界へ戻ってきた。
人間界に戻ると、夜中だった。
(時間差が激しいですぅ~。ね、眠い…。)
柚月は、眠さでフラフラしていると、珀空が話しかけてきた。
「柚月、大丈夫?」
「だ、だ、大丈夫で!大丈夫…。」
(危なかったです…。敬語言っちゃいそうになりました…(汗)ヤバかった…です。)
柚月は、冷や汗をかき、珀空と柧空に、
「ごめんなさい…。明日朝、早いしさ。今日は寝るから、おやすみなさい…。」
と、あいさつをし、その場を逃げるように部屋に戻った。
「ちょっ!ちょっと……柚月…。」
柧空は、柚月を追った。
「やっぱり、柚月にはハードルが高いかな?まぁ柧空には、負けないよ?」
珀空は、ニコッと笑うと2人の後を追った。
(あー…、眠い…。でも、めっちゃ寒い…。)
柚月は、部屋の布団にもぐっていた。
すると、そこに変化でケモノになっている柧空がやってきた。
「柚月…。一緒に寝るか?この姿だったら…。一緒に寝ても、問題はないとは思うのだが…。」
「ん?柧空さん?」
「あ、あのさ、その『柧空さん』って変な感じするから
さ。呼び捨てでいいよ…。」
「分かりました。では…。こ、柧空…隣にどうぞ?ケモノバージョンは久しぶりです!
やっぱり、毛がフワフワしてて気持ちです。」
「あっ、えっと、あんまり尻尾の方とか触るなよ?」
「えっ?じゃあ、えーい!」
柧空の尻尾を持った瞬間に、
「ふぇ!!」
(ふぇ?あっ!?なるほど…(笑))
「もしかして、柧空…、尻尾触ったらくすぐったいってことですか?」
「それ以外、何があるんだよー(恥)」
「ちなみに、それは小さい頃から弱いところだよ。」
二人が、声をする方を見た。
そこには、珀空も変化してケモノなっていた。
「珀空も一緒に寝る?二人がいると、すごく温かいから。」
「いいよー。」
珀空は、柚月の隣に入った。
「やっぱり、温かいー。ケモノ様々ですー!
いい匂いもしますしー。」
柧空が、柚月の耳元でソコソコと言った。
「ちなみに、兄貴は耳をパクパクすると、くすぐったいんだって。」
「そうなのですかー?さっそくしてみましょうー。」
柚月は、珀空をガシッともち、耳をパクパクした。
「ハニャ!!」
柚月と柧空は、クスクスと笑った。
「ほらな、変な声出た。」
「お前か、柚月に教えたの!」
「珀空も弱いところあるんで…あるんだね。」
「んー…クソッ!ふん!!」
「あっ、すねたー。可愛いところあるんだ。」
そして、三人は眠りについた。
―――――――――――――――――――――次の朝。
「あ、朝…。眠たい…。」
「おはよう。柚月…。」
「おはよう。珀空。」
「柧空、起こさないと。」
「今日は、ケモノになってる。こないだは、朝起きたら人間に戻ってたのに…。」
「あー、あれは意識の問題でしょ?」
「意識の問題?」
「うん。ずっとなっていたいと強く願えば、ケモノの姿
になれる。
あと、妖力を自由に操れるように、なったからかなー?」
「へぇー。そういうのってあるんだ。」
「前に、柚月を危ない目に合わせてしまったからね。
もっと、強くならないと。と思ってね。
お父さんに頼んで、いつも稽古を、つけてもらってたん
だ。」
朝食の準備をしながら、その話を聞いた柚月は、
(根にもってるんだ…。自分達のせいだと…。
私も何かしてあげたい…。)
そう思った。
皓成と蒼葉は、まだ帰ってきてはいなかった。
柧空は、まだ寝ていた。
居間で寝かせていたが、朝食ができたため、柧空を起こした。
「ん?あ、あれ?」
「柧空、朝ご飯できたぞ?」
「ここ、居間?なんで?」
「私が、抱っこして居間まで来たんですよー。可愛らしいし。」
そう言われた柧空は、少し照れた。
「あれ?柧空、顔赤いよ?」
「べ、別になんでもない!」
慌てて朝食を食べていた。
三人で、学校へと向かった。
それぞれの教室に行くと、柧空のクラスに、転校生が来るという噂が流れていた。
(まぁ、俺にしては、関係ないことだよ…。別に気にしないし。)
そして、チャイムが鳴り、同時に先生が入ってきた。
「はーい。皆、席につけよー。多分、噂が流れているとは思うが、編入生を紹介する。入ってこーい。」
入ってきたのは、男子高校生だった。
「はい、では皆に自己紹介を。」
「はい、先生。どうも、朱雀 颯斗です。よろしくお願いします。」
(は!颯斗ー?なぜ?颯斗が?)
「では、朱雀には、千狐寺の隣に座ってくれ。」
颯斗が、柧空の隣の席に座った。
「なんで、お前が?」
「それは…、柚月ちゃんに会うために決まっているではないか!!」
「本当に、お前は変態だな!」
「あと、もうひとつ…。」
「ん?」
ホームルームが終わり、柚月と珀空が屋上に、柧空に呼び出された。
「どうしたんだ?編入生は、颯斗だったか。」
「兄貴、知ってたのか!?」
「うん。知っていたよ?」
「なんで、教えてくれなかったんだよ!」
「いやー。また、会ったね。柚月ちゃーん!!」
颯斗は、柚月に飛び付くようにやってきた。
颯斗の首根っこをつかんで、
「お前は、大人しくしとけ!」
「ぶーぶー。柧空のケチ。柚月ちゃんに会いたくて、編入してきたのにー。」
「お前、それだけじゃないだろ?」
「えっ?あー、そうそう。いろいろとねー。秋くらいには、また編入生が来るだろうねー。」
「どういうことだよ?」
「まぁ、それは置いといて!」
「置くなよ!ちゃんと教えろ!!」
「んとね、」
「おい!」
柧空が怒っていることに、構わず話を進めた。
「仲間を集めなければ、闇には打ち勝たない。だから今、動いてもらっている。」
「そうでしたか…。まぁ、いろいろと予想はついていましたけどね…。
夏休みに、妖怪界へ戻らなければなりませんね…。
もしかして、颯斗さん、その事を伝えるために、わざわ
ざ、編入生として来たわけですか?
柚月に会いたいのは、本当の事だとして…。」
「そういうことだよ。早めに耳に入れた方がいいと思ってね。」
「そういうことでしたかー…。」
「俺だけ、置いてけぼりかよ…。」
「柧空、大丈夫?」
柚月に、柧空は頭を撫で撫でされていた。
柚月には、妖怪界の世界の事は分からないが、手伝いが出来ればと思った。
――――――――――キーンコーンカーンコーン。
チャイムが鳴った。
「あっ、次は移動教室でしたー。急がなければなりません!」
「あっ、やば!」
四人は慌てて、それぞれの教室へと戻っていった。
その帰りに、四人は一緒に帰った。
「いやー、一緒に帰れるって嬉しいことですねー。
しばらくは、珀空や柧空、柚月ちゃんと一緒の所に。」
「はっ?」
「それはありませんよ?帰れるでしょ?すぐに」
珀空と柧空の顔が怒っていた。
(あらら…。怒っちゃった…。本当に二人とも分かりやすい…です。)
「冷たい!二人とも冷たくなーい?」
「あなたは、朱雀家の当主でしょ?」
「そうだけどさー、いつも屋敷にこもっても楽しくない
でしょー?」
「全くあなたって人は!」
「わかったよ、帰るよ。そんな、怖い顔で言われた
ら…。じゃあね、また明日。」
誰もいないところで、颯斗は妖怪界へと帰っていった。
「いいの?少しの間だけでも…、」
「ありえないっつーの!なんで、学校でも家でも、あいつの顔を見なくちゃいけないんだよ。」
「柚月と一緒に居たいんだってさ。」
「おい!兄貴!また、要らないことを!」
「本当の事を言ったまでさ。」
「全く!」
「でも、妖怪界のこと、お父さんたちが頑張ってくれて
いるんだから、私も何かお手伝いしたい。」
「でも、危ないからやめた方がいい。」
「いやっ、珀空と柧空の役に立ちたいの!いいでしょ?
夏休みに妖怪界へ帰ってお手伝いした方がいいと思うの
!!」
「うーん…。でも、親父がなんていうか…。」
「でも、少しでも手はあった方がいいとみた。わかった。柚月も、妖怪界へ行こう。
せっかく、手伝ってくれるって、言ってくれてるんだか
ら、ここは柚月に免じてさ。ねっ、柧空。」
「わ、わかったよ。兄貴が言うんなら…。
ただ、死ぬ気で柚月のこと守らないとさ。」
「ああ…。わかってるさ。」
二人は、柚月を見てそう誓いあった。
――――――――――家に帰り。
「ただいまー。」
「帰りましたー。って、普通に私、千狐寺家に帰ってま
すけど?いいの?」
「いいんじゃない?いずれは、わが家に入る身になるんだからさ。」
「そうだけど…。」
「別に気にしなくてもいいよー。」
「でも、まだ結婚するとも言ってないし…。
お邪魔するわけには…。」
「大丈夫だよ。」
「でも!」
「大丈夫だよー。柚月ちゃんがいてくれるだけで、私た
ちがホッコリするんだから。」
どこからともなく、皓成が現れ、なぜか柚月の胸を揉んでいた。
「ヒヤッ!!ちょっ…。」
―――バシン!
―――――ウゲッ!!
「あーなーたーはーなーにーをーしーてらっしゃるので
すか!?」
蒼葉は、怒りを全開にし、皓成を殴った。
「い、痛いー!なんで殴るのさ!?」
「なんで、あなたは!息子の彼女をとろうとしている
の?しかも、胸を揉むってハレンチですよ?
バカなのですか?バカですよね?」
「そんなにいうことないでしょ?」
「あるから、こうやって怒っているんでしょ?
あなたは、昔から可愛い子を見るとそうやって!!」
「夫婦喧嘩はほっとこうぜー。」
「さぁ、柚月あっちに行こう。あのバカは、後で柧空とボコしておくから!」
「ハァーハァー…。」
(油断も隙もないですー…。)
三人は奥の間に行った。
荷物をおき、夕食の準備をした。
「あっ、柚月。手伝うよ。」
「ありがとう。お父さん…大丈夫なの?」
「えっ?あれはほっといていいよ…。
さぁ、今日の夕食は何を作る?」
「そうですねー。何がいいですか?」
「柚月が作るのは、全部美味しいからさ。なんでもいいよ。」
「その答えは、一番困る…。」
柚月が悩んでいると、柧空がやってきた。
「どしたの?」
「今日のご飯…、何しようかなー?って。」
「うーん。」
「じゃあ…、肉じゃが?」
「それはいいですね、そうしよう。では、野菜を切ってて。」
「わかった。」
三人で、分担をして夕食を作った。
――――――夕食。
「完成!」
肉じゃが、和食が揃ったところで、蒼葉が、皓成をボコボコになって、引きずってきた。
「あら?いい匂いがすると思ったら、ご飯が出来ていたのね。嬉しい。この人をボコしてる間に…。
ごめんなさいね…。」
「いえ、いいんです。大丈夫です。」
(皓成さん…、あれは大丈夫なのですか?
なんか死にかけになってるみたいです…けど?)
皓成のその姿を見て、逆に心配する柚月だった。
まだまだ続きます。
恋の行方はどっちに?