ブラッドムーンの瞳
「これはこれは…お初にお目にかかります…
私は史上最強の魔法使い…どうぞお見知り置きを…ただ…あなたがお目にかかるのは今日で最後になるやも…しれませんが…」
大胆不敵なセリフを吐いたのは…黒いシルクハットにタキシード…ヴァルプルギスが纏っていた黒いマントを翻したその紳士の表情にそこにいる誰もが驚いた…
誰に対しても優しさが滲み出るいつもの優也の表情は影を潜め、野獣のような…今にも相手に飛びかかりそうな…そしてとりわけ皆が驚いたのは…
太陽の光が反射した月…ブラッドムーンのような真っ赤な瞳…誰もが一目で思い浮かべる人物の目と同じであった…
「ダー…リン？」「あ…あの眼は…まさか婿殿は…」
「な…そんなバカな！あの女はさっき空へと還った筈…」
「そうさ…お前達も還るんだよ…オレが送ってやるからさあ…ハッハッハッ…」
ニヤリと笑った凍るような笑顔がとても優也のものとは思えなかった…
ダイナは真っ青になって優也に詰め寄る…「お、おひい様は最期のレガシーを放って魔法力が空っぽになったのでは無かったのか？…」「…まあ最後だから教えてやるよ…
ヴァルはお前達と闘う前にオレに9割程、魔法力を預けていたのさ…口移しでオレの中にな…」「な、何！…すると、私は初めからほぼ魔法力が空っぽのおひい様と…おひい様はそんな状態でレガシーを…？バカな！」
「さあ…元のオレの魔法力と9割のヴァルの魔法力…満タンだぜ！」「ま、待て…」
「あの世で姫に逆らった事…後悔するんだな…」
優也がパチンと指を鳴らした…
突然…ダイナの身体はヴァルプルギスと同じように光の粒子に変わり始めた…「うわぁぁぁぁぁ！」
「な、何が起こったの？」「見えんかったか…そうじゃろうて…ワシもハッキリとは見えておらんのじゃから…」
プラティナの不思議そうな表情を見てゴルドは続けた…「婿殿は…完全なるレガシー…クロノで時間を止めた…そしてダイナ様の身体に直接、また違うレガシーのホーリーという魔法を叩き込んだのじゃ…
ホーリーは聖ヴァルプルガ…つまりワシの師匠が得意としていた魔法…闇の力を浄化する魔法よ…」「す、すごい…ダーリンがそれを一瞬で…」
「…今の婿殿は何らかの形でワシのもう一人の師匠…ヴァルプルギスの力を手に入れたのじゃ…そう…今の婿殿は…」「ダーリンは？」
「優也…ヴァルプルギスモードとでも呼ぶべきだろうかのう…」
