テレパシー
僕は憔悴しきったティナに酷だとは思ったがラリーさんを呼んでもらった。魔法の使えない僕に出来る事は少なかったが、この事態を何とかするには一先ず落ちついて態勢を整えないと…
事情を大まかに話してラリーさんに自宅までの瞬間移動をお願いして、取り敢えずティナをベッドに運んで休ませた…そして明日の朝に迎えに来てもらう事を約束して僕もその夜は眠りについた…
次の朝、ラリーさんが自宅まで迎えに来てくれた…「婿殿、昨夜は大変でしたな…しかしお子達と兄上夫婦まで拐われたとなると…これはどうしたものやら…」「僕はラリーさん以外に魔界に頼れる方は殆どいません…しかし、お話を聞いて頂いて、お知恵を貸して頂けそうな方を一人だけ知っています…」「ほう…そのお方とは…」「ちょっとお待ち下さい」
僕は自分の頭を指でチョンチョンと突いてラリーさんに合図を送った。ラリーさんは僕の合図に気づいてくださった。
「これでいいのですな!婿殿。」「ご理解頂けて嬉しいです。」そう…僕達は頭の中…
僕達の世界でいうテレパシーで話した。
「婿殿は頭も切れるようですの…」「いえ…ただ、ミラール王国のアイさんは僕達の事を全て知っていました。口頭で伝えても、例えば筆談のような伝え方も全ての物理的なアクセスは相手に筒抜けになる可能性があります。しかし、これなら相手にバレる事も無いでしょう…僕とラリーさんの心の中でのアクセスですから」
そして僕はラリーさんに僕の考えを説明した…「うーむ!いや、しかしこれは名案かも知れませんな。早速連絡を入れてみます。ちょっとお待ち下され!」
この時、僕は思い違いをしていた…
僕はティナの残留した魔法因子を纏っているからラリーさんがテレパシーで話してくださるのだと…しかしこの思い違いこそがミラール王国が僕を狙っている理由そのものであった…




