お水が…
「…めん…さい…きて…ださい…」
「う…うう…」
綺麗な呼びかけの声にうっすらと目が覚めた僕…
そうか…確か頭に突然何かが…落ちて…
ゆっくりと身体を起こす…その瞬間激しい頭痛が僕を襲った…
「うわああああっ!!!」
「ご、ごめんなさい…びっくりしちゃって…咄嗟に…その…頭を水で冷やすにも、泉も水瓶も近くに無くって…」
「泉…?水瓶…?お水なら水道から出ますよ…」
「す、水道…?」
…水道を知らない?やっぱりこの人外国人なのだろうか?
…髪の色も目の色も僕とは違うもんな。井戸とかから水を汲んで生活している国の女性かも…
「こ、ここです…」
僕は頭を押さえながら彼女を台所に連れて行って蛇口を捻った…すると…
「キャッ!」
彼女は水が出てきたのを見て凄く驚いた。
「こうすれば水が出ます。」
僕はコップに水を汲んで口に運んだ。少し落ち着いたのでベッドに腰掛ける…
あれ…?僕って確か廊下で倒れたんだよな…
か、彼女がベッドまで運んでくれたのかな…?
まさか…あの細い腕で僕をベッドへ…?
「あの…」
「は、はい?」
「私の服は…?」
「あ、そうでした…実は…」
僕は彼女を見つけて家に連れて帰って管理人さんに着替えさせてもらった経緯を全て話した…
「そ、そうだったのですか…
ありがとうございます。私、何も知らずにあなたを酷い目に遭わせてしまって…
すぐに出て行きますね。」
「ち、ちょっと待って下さい…
服を管理人さんの所に取りに行ってきますから…
その前にあなたの事を少し教えて頂けませんか?何故あんな所で倒れていたのですか?
…お名前とか…ご家族は?」
「すみません…いっぺんには…」
「あ…ご、ごめんなさい。「」」
「…名前はプラティナです…」
《やっぱり外国人の方だったんだな…》
「他は…言えません…ご迷惑がかかるので…」
「僕は仙石優也と言います。怪しい者ではありません。」
「…分かります。」
「えっ?」
「だって…あなた…優也さんは私を大切にして守ってくれると…言ってくださったから…」
プラティナさん…真っ赤になっている…
ああ…綺麗だな…
「じゃあ、私はこれで…
嬉しかったです。ありがとうございました。」
「ま、待ってください…お家に帰るんですか?」
彼女は悲しげな表情で首を横に振る…
「どこか行くアテは?」
その質問にも彼女は首を横に振るだけだった…
「あの…こんな所で良かったらもう少しゆっくりしていきませんか…?
足りない物は…そうだ!!生活に必要なものをこれから一緒に揃えに行きませんか…?」
「…えっ…」
こうして僕とプラティナさんの思いがけない同棲生活が始まった。