迷い道
「ブルルルルル…」今日も仕事が終わって愛する家族の待つ家に向かう…
暗闇をヘッドライトで切り裂きながら優也は車を走らせる…
やがて小高い丘の上の道に通りがかって、この道沿いでティナやラリーさんに出会えたことを思い出す…「色々あったな…」側に池や森のある丘陵地を過ぎて下り坂に差し掛かった時だった。
ヘッドライトに照らされた小さな人影が道の左側に見えた…小さな人影は行くアテも無くただ彷徨っているように見えた…近づくにつれてその人影はフードをすっぽり被って僕の持っているのと同じようなローブを纏っている…僕は車のスピードを落として更に近づくとローブには僕のとは違う紋章が描かれていた…「やっぱり…」
僕は人影を一旦通り越して車を路肩に寄せ、
車から降りて人影に近づくと「あのう…」と声をかけてみた…
フードの中の人物が顔を上げて目が合った瞬間、僕は驚きのあまり声をあげてしまった。
「ああっ!」「ええっ!」向こうも僕の顔を見て驚いたようだった…
「ナ、ナギさん?」「ティナの旦那さん…ですよね?」「どうしてこんな所に…」「私、ティナの所に遊びに行こうと思って人間界に来たんですけど、誰にも連絡せずに来たので道に迷ってしまって…」「そうだったんですか…さあ、車に乗ってください!どうぞ!」
「車って…この鉄の馬車みたいな物ですよね…さっきからずっと横を通っていて…私、怖くて端を歩いていました…」「ああ…魔界には無いですもんね。」僕は左のドアを開けて「さあ、どうぞ!」とナギさんを助手席に乗せてから車に乗った…
「きゃっ!すごい早いですね…私、あまり馬や馬車にも乗ったことが無いので…」「ごめんなさい…もう少しスピードを落としますね…そうだ!お腹は空いていないですか?少し家に着くのが遅れますけど…」「…大丈夫です。」ナギさんは少し嬉しそうに見えた…
マンションの駐車場に着いてエレベーターに乗る…ドアの鍵を開けて「ただいま!」と言うとミスとリルが「わーい!パパおかえり!」と駆け寄って来てナギさんの顔を見て「あ…こ、こんばんは…」と言ってまた奥へ走って行った…「恥ずかしいんだな!」僕がそう言うとナギさんはクスッと笑った。
「ママ…パパがおねえちゃんといっしょだよ!」リルの声が聞こえた後でティナが奥から出てきてくれた…「ダーリン!お帰りなさい…あら?」「ティナ…ご機嫌よう!」「ナギ…どうしたの?」「帰る途中に出会って…一緒に帰ってきたんだよ。うちに遊びに来てくれたんだって。」「そ、そう…」「ゴメンね…突然…」「ナギ…ご飯まだでしょう!一緒に食べましょう!」「ありがとう…ティナ…」
あれ?…僕はティナの態度がちょっといつもと何か違う気がした…




