危機一髪
「どうじゃ…ティナ…ちょっとは頭が冷えて冷静になったかな?」
「お父様…元々、私は冷静です。早く旦那様と子供達の所に帰して下さい。お願いします!!!」
「まだ分からんのか!!お前は人間に騙されておるのじゃ…ハァ…」
ティナの父親…ゴルド大魔王は牢屋の鉄柵の棒を握りしめながら、大きなため息を吐いた…
「ティナ…お父様の立場も考えなければいけませんよ。お前は魔界のキチンとした婿をもらってゆくゆくは二人でこの国を動かすのです。
そのために相応しい相手をお父様は我が国の貴族より選ばれました。人間などという魔法も使えない乱暴な下等動物を旦那様と呼んだり、その男との子供まで…ああ、なんて穢らわしい…」
美しい王妃…母親のシルヴァはプラティナに諭すように話した…
「何故です…何故分かってもらえないの…?私、自分の人生は自分で決めて幸せになります。いくらお父様やお母様だからってそんな事まで貴方達の指図は受けたくありません!」
「仕方がない…ティナ…許せ!!しかし…いずれ…ワシらの考えを理解する日がきっと来る!!」
その時、ゴルド大魔王はプラティナに傀儡の術をかけた…
「何これ?身体が動かない…喋る事も出来ない…」
プラティナは涙を流す事すら出来なかった。
「これでお前は今日、婚約者のイミテ伯爵と結婚することになる…一度きりの失敗などもう忘れるのじゃ!!」
王宮の晩餐室では婚礼の準備が進められ、何も出来ないプラティナと頭頂部ハゲ、デブ、チビと三拍子揃ったイミテ伯爵が並んで座ることとなった…
イミテ伯爵はプラティナの手を握って「プラティナ…今日から君は僕のお嫁さんだね…今日は一緒にお風呂に入って、一緒にベッドで寝ようね…ぐふふふふ…」
「ではこれよりイミテ伯爵とプラティナ王女の婚礼の儀を始めたいと思います。まずは誓いの言葉と口づけを…」
「私、イミテは健やかなる時も病める時も一生妻、プラティナを愛し、大切にすることを誓います。」
「私、プラティナは健やかなる時も病める時も一生夫、イミテを愛し、大切にすることを誓います…」
「何よ、これ!全く動かない…」ティナの言動はすべてゴルドが操っていた…
…許せよティナ…これも全てお前の…そして私達…ひいては国民のためなのだ!!
「さあ!誓いのキスを…」イミテの口唇がプラティナの口唇へと近づく…
…バァァァァァァァン!!!!!
「ま、待ってください!!」
ラリーさんの手引きで僕達は婚礼の会場に乗り込む事が出来た…
「何じゃ!お前は?」
ゴルド大魔王が優也に近づいた…
「僕は…仙石優也と言います。
ティナ…いや、プラティナさんと結婚させて頂きました…
ご挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。」
「そうか…貴様か…プラティナをたぶらかしたのは…よくもぬけぬけとまあ…」
ゴルドは指をパチンと鳴らして立派な刀を魔法で出した…
「この場で成敗してくれるわ!」