王宮へ急げ!
僕は森の木漏れ日が射し込む広場の切り株の上に座ってラリーさんと対面でお話をしていた…
「婿殿…本当にすまない…ワシがティナを両親の元に戻したばかりに…」
ラリーさんは僕に向かって申し訳無さそうに頭を下げた。
「いえ…そんな…頭をお上げください。ラリーさんはティナに正しい事を言ってくださいました。僕もティナと一緒にご両親に分かってもらえるように説得を試みるつもりです。
しかし…僕はこの世界の右も左も分かりません…
申し訳ありませんがお力添えを…」
「うむ。勿論じゃ…それが良いじゃろうて…
しかし、人間のなかにも婿殿のような誰に対しても礼儀を重んじる方がおられるとは…私達の認識とは少々違うのでびっくりしておりますわい。」
「いえ…しかし…この森はいったいこの世界のどの辺になるのですか?」
「この森はわがジュエラ王国のエメラルダの森になります…ここから王宮まですぐの距離です。」
「王宮…?ティナは王宮にいるのですか…?」
「ティナから聞かれておられないのかな…?
ティナはジュエラ王国の第一王女…つまり姫じゃな。しかも私の兄…ゴルド大魔王の一人娘なのじゃ。」
「お姫様…」
気品のある容姿、上品で流暢な話し方…なるほど…ティナの謎だった部分のピースが全て揃ったような気がした。
「多分…ティナの両親は早急に何年も待たせていた婚約者との結婚式を行うつもりです。とにかく王宮にお連れしますからこれに着替えて下さい…」
パチンと指を鳴らしてラリーさんが切り株の上に魔法で出してくださったのはジュエラ王国の紋章が入ったローブだった。
ミスとリルの小さなサイズのもご用意して下さっていた…分厚そうだったが着てみるとまるで魔法にかかったように全然暑さを感じなかった。
僕の大切な妻が他の男と結婚させられてしまう…
早く何とかしないと…
僕はラリーさんと子供達と王宮に急いだ。