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前世の記憶
僕がいたこの世界には、魔法使いがたくさんいた。
むしろ魔法の使えない者などほぼいないに等しい。
たとえ魔力が少なくても、食いっぱぐれることはない。
僕も魔力が少ない方だったが、魔法の鍛錬を重ねて、自分に合った魔道具を使いこなし、世界を支えるまでの魔法使いになった。
まぁそうなるまでに色々あったけど、忘れた。
正確に言うと忘却の彼方に葬り去ってしまいたいぐらい、大変だった。
魔法学院では魔力が少ないせいで馬鹿にされたりもしたし、研究チームに入れてもらえなかったりした。
だけど僕のことを慕ってくれる後輩も仲間もいて、一緒に少ない魔力でどれだけの効果を発揮できるかを考えてくれた。
それを研究成果として発表したら、国中のお偉いさん方から自分の領地でも応用出来ないかと、引く手数多な状態になり、僕は仕事として世界中を飛び回っていた。
その話が国王の耳にまで届き、魔道具を扱うスペシャリストとして国王の側で働くよう勅令を頂き、身を粉にして働き続けていた。
…というところまでしか正直覚えていない。
だって僕は、不幸な事故で死んでしまったのだから。