96式装輪装甲車
「これより強襲救出作戦へ移行する。各自、訓練の成果を見せるのは今この時だ!」
「ジョー兄い、あの怪物……勇者様と同じ鉄の箱車を使うの?」
「ああ、アン、使う。今が使うべき時だと思う。アンの腕前なら大丈夫だ」
「うん、アタイやるよ!」
「ナークには、別車輌の運転を頼む。訓練は十分しているから大丈夫だよね?」
「……自信は無い。だけど、あたしはやる」
「平気さ、訓練どうりにやれば良いだけだから」
「……はい」
「ベルは、俺とアンの車輌に同乗してくれ。これも訓練どおりだから」
「はいでしゅ、ジョー様。私がんばりましゅ」
「うん、アンとベルなら息もピッタリだったから大丈夫」
「はいでしゅ!」
「ミラはナークの運転する車輌に同乗してくれ」
「はい、ジングージ様。足手まといにならぬ様にします」
「今回の救出作戦では、ミラの役割が欠かせないからね。俺達と一緒に訓練はして無かったけど、教会で修行した成果を発揮してくれ」
「はい!ジングージ様。お心の儘に」
パーティー"自衛隊"全員へ俺の決断を伝え、俺は無限収納から新たに追加された車輌を召喚し、強襲救出作戦の準備をすべく、軽装甲機動車の運転席から降りる。
まだ、夜明けまでは大分時間はあるが、急いで準備しないと幼い命の灯火が消えてしまうのだ。
俺は、"女神様の加護"を発動して、一台目の車輌を召喚した。
「召喚、96式装輪装甲車!」
大型トラック程の巨大な車体を持ち、8個もの車輪を装備している、96式装輪装甲車が目の前に忽然と現れる。
既に訓練では、何度も召喚しており、ロックやナークは運転技術も習得している車輌だ。
乗員も最大で15名ほど搭乗する事が可能なので、救出人数が7名で有っても全く問題は無い。
96式装輪装甲車には、A型とB型が有り、搭載銃器によって区別されている。
俺が召喚できるのは、12.7mm重機関銃M2を装備出来るB型だ。
念のために、攻撃用の重機関銃M2も召喚すると、そのまま基部へ装着された状態で装備される。
今回は、搭乗するのがナークとミラであり、ナークは、運転を担当するため、走行中の銃撃は不可能なのだが、何らかのアクシデントが発生した場合を想定して置く必要はある。
同時に、重機関銃M2用の予備弾帯箱も、5個ほど召喚しておいた。
念には念を入れて置くのが、転ばぬ先の杖だ。
加えて、広帯域多目的無線機(車両用)を無限収納から召喚し、96式装輪装甲車へ装備した。
アマチュア無線用のハンディー・トランシーバーを全員が装備しているので、無線機は不要かもしれないが、女神様が折角全ての召喚可能な車輌分を召喚可能にしてくれていたので、有り難く使用させて頂く。
特に、遠距離通信が可能なので、離れて進行してくるロックとの通話も可能なるというメリットもある。
96式装輪装甲車は、片側4輪で計8輪のタイヤで走行するが、運転はオートマチックなので軽装甲機動車の運転と殆ど変わらない。
しかし、車体が大きいので狭い街中の道路では、取り回しも悪く運転慣れていないと、交差点などで曲がる場合には注意が必要だ。
元の世界であれば、公道を走行するには、大型免許の取得も必要になる。
スベニの街からタースに来る際、内部空間も広い96式装輪装甲車を使わずに、4人乗りの軽装甲機動車へ無理して5人も搭乗して使用したのかと言えば、単純に96式装輪装甲車には、エアコンが装備されておらず、軽装甲機動車には装備されている、と言う空調装備の問題からだ。
俺は、暑いのが嫌いだ、という単なる個人的な我が儘である。
「ナーク、WAPCへ搭乗して、後部ハッチを開いてくれ」
「……判った」
96式装輪装甲車(WAPC)の運転席へ搭乗したナークは、制御スイッチを操作して、油圧によって開閉する後部ハッチを開く。
「よし、全員でLAVの後部へ搭載してある荷物をWAPCへ移してくれ」
「判ったよ!」
「はいでしゅ」
「畏まりました」
俺も含めて、4人で軽装甲機動車の後部スペースへ搭載してきた、食料や水、燃料、武器などを96式装輪装甲車へと移動させた。
荷物の移動が終わったところで、俺はロックへ事態が変わったので、作戦変更を行う旨を軽装甲機動車の搭載通信機で連絡する。
『こちらマーベリック。アイスマン、聞こえるか?送れ』
『ザザザ……こちらァィスマンです。聞こぇます。送れ』
『了解。緊急事態が発生したので、以後作戦を変更する。送れ』
『ザザザ……了解。何が起こったのですか?送れ』
『"会長の宝"が急病。時間が無いので、事前打ち合わせの作戦Cへ移行。送れ』
『ザザザ……ァィスマン了解。会長には伝ぇますか?送れ』
『……伝えてくれ。だが安心して待って居てくれと。送れ』
『ザザザ……了解。会長と大佐へ伝ぇます。ァィスマンも夜明けを待たずに出発します。送れ』
『了解。以後の通信は緊急時、及び作戦終了時のみとする。無理させて悪いなアイスマン。送れ』
『ザザザ……了解。問題ぁりません。寝て行けますから。送れ』
『了解、そうだったな。チャーリーとの通話試験もしておいてくれ。送れ』
『ザザザ……了解。チャーリー、聞こぇますか?こちらァィス。送れ』
『ザザザ…………了解。こちらチャーリー。良く聞こえる。送れ』
『ザザザ……ァィス了解。チャーリー、こちらも良く聞こぇてます。ご武運を!送れ」
『ザザザ…………了解。アイス、ありがとう。マーベリック、聞こえるか?送れ』
『了解、チャーリー。こちらマーベリック。良く聞こえる。以上、通信試験終了。アイスマン送れ』
『ザザザ……了解。では、ご武運を!以上、ァィスマン通信終了』
『了解。アイスマンも気をつけてな。マーベリック通信終わり』
『ザザザ…………了解。チャーリー通信終了』
ロックへの通信と、ナークの搭乗している96式装輪装甲車との通信試験が終了したので、軽装甲機動車の中に、忘れ物が無いかをチェックする。
これから無限収納へ回収するので、忘れ物が有ったとしても、本当に無くしてしまう訳では無いが、確認は不可欠だと叩き込まれている。
ドローンの専用コントローラー等も、もう一度使用する可能性があるので無限収納へは回収せずに、96式装輪装甲車へと移動させておく。
ドローンからの映像受信に使用した2台目のスマートフォンは、マップ表示のアプリを起動した状態にして、96式装輪装甲車へ搭乗しているナークに渡してある。
これで、お互いが離ればなれになったとしても、お互いの位置を確認しあう事が可能だ。
俺は、忘れ物チェックが終了した軽装甲機動車を無限収納へ回収し、アンが"怪物の箱車"と呼んだ、俺が無限収納から召喚可能な兵器の中でも、最大火力を持つ兵器を召喚した。
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舳江爽快




