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自衛隊西へ

 夜のスベニの街を、俺が運転する軽装甲機動車と、ロックが操る指揮者(コマンダー)ゴーレムがゆっくりと進行する。

 人影が少なくなったとはいえ、歓楽街から帰宅する住人や、食事から帰宅する人々も未だ居るのだが、既に知られた存在なので驚く人は少ない。

 中には、手を振ってくれる色町の若く艶っぽい、ご婦人も居るくらいだ。


 軽装甲機動車には、俺の他にナークが助手席に乗り、後部座席にはアンとベルが乗車している。

 この後部座席へは、教会でミラが加わるが、三人とも15歳の小柄な少女達なので、窮屈だろうが何とか我慢してもらおう。

 同じ孤児院で短期間だが、ミラも一緒に過ごしたとの事なので、問題は無いと思いたい。


 ロックの操る指揮者ゴーレムは、その黒い巨体を夜の闇に紛れさせてはいるが、その頭部に爛々と光る黄色い両眼が、その存在をスベニの街の住人達に知らせているかの様だ。

 道路脇の住宅からは、その巨体を眺めている人々も多く、未だ寝ていない子供が手を振ったりもしていた。

 一時は、スベニの街を恐怖に陥れた黒い闘牛も、今では、すっかりスベニの住人に愛される街の守護者と成ったのだ。


 比較的ゆっくりとした速度で軽装甲機動車を運転し、俺たちは教会の前へと到着した。

 ロックの指揮者ゴーレムも、教会の前まで来ると屈み込んで、操縦席からロックが降りてくる。

 俺達は、見張りのナークを軽装甲機動車に残し、教会の中へと入りマーガレット司教の執務室へと向かう。

 執務室のドアをノックして、俺は、静かに告げる。


「マーガレットさん、ジョーです」

「ジングージ様、お待ちしておりました。どうぞ、お入り下さい」


 マーガレット司教の言葉に応じて、俺たちは、司教の執務室へと入室した。

 双子の従者のアリスさんとエリスさん、そして、新米聖女となったミラが執務室で待っていてくれ、俺たちを出迎えてくれた。

 俺は、マーガレット司教へ依頼していた作業を行うべく、首から外した陸自の認識票をマーガレット司教へ渡して言う。


「マーガレットさん、お願いした件、宜しくお願いします」

「はい、ジングージ様。ミランダ、貴女の身分証をお出しなさい」

「はい、司教様……どうぞ」


 ミラは、胸に掛けていた自らの身分証――レザー・ランカーの革製Lランク――をマーガレット司教へ渡した。

 マーガレット司教は、俺の認識票とミラの身分証を重ね合わせ、青い色の身分証表示板の上に置き、何やら呪文の様な言葉――この魔法の呪文だけは、俺にも聞き取れない――を唱える。

 すると、身分証表示板が一瞬だけ青く輝き、そして、直ぐに元の青い色をした身分証表示板へと戻る。


「ジングージ様、パーティー"自衛隊"へミランダを登録致しました」

「ありがとうございます、マーガレットさん。これでミラの居る位置を、常に知ることができます」

「ミランダの居る位置をですか?」

「はい、これをご覧ください」


 そう言って俺は、スマートフォンを取り出しゴッド()ポジショニング()システム()とマップ表示を起動し、マーガレット司教へ見せる。

 俺の位置を示す「◎」に加えて、室内に居るアン、ベル、ロック、そしてミラを示す「○」が表示されている。

 ナークだけは、教会の表に居るので「○」が一つだけ離れて表示された。


「これは……女神様の天からの視点による教会でしょうか」

「そうです。女神様は常に俺の事を見てくれています。そして、俺の仲間のいる位置も見えるのです」

「流石、女神様に愛される使徒様。そして、使徒様のパーティーの恩恵が、これ程凄いとは……」

「マーガレットさん、使徒の件は言わない約束ですよ……」

「おお、申し訳ありません。あまりに素晴らしい恩恵だったので、つい……」

「ロック、ミラ、今のマーガレットさんの言葉、何れ説明しますね」

「はぃ、ジョーさん。でも僕は驚きませんよ。やっぱりかと思っただけです」

「ジングージ様が女神様の使徒様……」

「女神様の使徒じゃないですよ。女神様の加護と祝福を持ってるだけです」

「ジョー兄、それが凄いんだよ」

「そうでしゅ。伝説の勇者コジロー様と同じでしゅ」

「まあ、この事は良いから……タースへ行く途中に、ナークへも話すから、詳しくはその時ね」

「「「はい」」」

「それでは、マーガレットさん、ミラをお預かりします」

「はい、お気を付けてどうぞ。そして女神様へご武運を祈っております」

「「女神様へご武運を祈っております」」


 マーガレット司教と双子のアリスさん、エリスさんが口を揃えて言う。

 俺たちは、マーガレット司教の執務室を出て外へと出る。

 俺たちの後をマーガレット司教達も付いてきて、教会の前で俺達を見送ってくれる様だ。

 俺は、軽装甲機動車の運転席へと乗り込み、助手席のナークへ「待たせたね」と言うと、「……問題なし」と短く応えてくれる。

 後部座席には、アンさんを真ん中にし、俺の後ろにベルさん、ナークの後ろにミラが座った。


 ロックも跪いて駐機していた指揮者ゴーレムへ乗り込み、頭を下げて俺達を見送ってくれているマーガレットさん達へ、「行ってきます」と声を掛けスベニの西門へと出発した。

 西門へは、ショートカットの道順を先日アマンダさんに教えて頂いたので、その逆の道順で裏道を行くことにする。

 軽装甲機動車は、問題なく通れる道幅だが、指揮者ゴーレムは両脇の建物に触れない様、慎重に、そして静かに歩行している。


 スベニの西門へ到着すると、そこには、警備隊の兵士や冒険者、そして、各ギルドの職員達が待機していた。

 まだ、全ての準備は調っていない様で、慌ただしく装備や、荷物を馬車に積んだりしている。

 俺は、篝火の焚かれている西門の手前で軽装甲機動車を止め、運転席から外へ出た。

 ロックは、邪魔に成らない様に、指揮者ゴーレムを警備隊の門番用建物の脇へ駐機させ、指揮者ゴーレムの外へと降りて来る。


「ジングージ殿、今回は本当に済まんが、頼んだぞ」

「はい、ビル大佐。何かあればロックへ知らせます」

「知らせる?伝書鳩を持っているのか?」

「いいえ、別の方法です。詳細は今回の件が終わったらと言うことで……」

「判った。ジングージ殿を信頼しているので、何も聞かんよ」

「はい。アントニオさん、お願いしていた缶詰は用意できましたか?」

「無論ですとも、ジングージ様。今、鉄の箱車の後部へと運んでおります」

「ありがとうございます。緊急用の食料が無いと、何かと不安でしたので」

「お気になさらず。危険な任務に比べれば、何でもありません」

「小僧……ジョー、お前の箱車、4人乗りとか言っておらんかったか?」

「はい、本来は4人乗りですが、今回は無理して回復治療要員を、教会で手配してもらいましたで」

「うぬぬ……儂が行きたかったんじゃい。まあ、仕方ないわい。気をつけるんじゃぞ」

「はい、テンダーさん。次は皆で楽しく遊びに行きましょう」

「うむ、期待しておるぞい」

「ジョー、俺達も直ぐに後を追うから、無理するんじゃねえぞ」

「ジングージ殿、傭兵軍を侮るでないぞ。それがし達が行くまでは斥候に徹するのだ」

「はい、ゴライアスさん、モロー卿。そちらも無理な進行はしないでください。ロックを宜しくお願いします」


 その他、冒険者ギルドのアルバートさんや、警備隊のアマンダさん、商業ギルドのエルドラさんらに激励され、最後に挨拶されたのは、スベニの貴族バンカー公爵だった。

 バンカー公爵は、かなり沈痛な表情をし、残してきた家族や大公を案じたのだろうが、決して俺に救出を依頼しては来なかった。

 そして、最後に俺へ声を掛けてきたのは、なんと、バンカー公爵の娘であるエリザベス・バンカー姫だった。







お陰様で、『目指せ!一騎当千(ワンマンアーミー) ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~』が、昨日、ついに「日間ファンタジー異世界転生/転移ランキングBEST100」の1位へランクインされました。また「日間ランキングBEST300」も、なんと3位へとランクインされました。作者も本当に驚いていると共に、喜びまくっております。これもひとえにブックマークをして下さった読者の皆様、そして評価ポイントを入れて下さった読者の皆様のおかげです。本当に有り難うございました。


引き続き、『目指せ!一騎当千(ワンマンアーミー) ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~』のご愛読を、よろしくお願い致します。


舳江爽快

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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に徐々コーキが装備に入ると楽ですね?そうすれば ラットパトロールの様に、後部荷台にM-2重機か MINIMIを攻撃力が良いのですが?装備して誰か女性に 運転して貰いアンちゃんかナークさん…
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