予期せぬ来客
「パーティー"自衛隊"は、斥候として準備が完了次第、先行して城塞都市タースへ向けて急行します!」
「おお、ジングージ様。行って下さいますか!?」
「勿論です。アントニオさん」
「ジングージ殿、警備隊からも、お願い申す!」
「ジョー、お前ならそう言うと確信していたぜ。"自衛隊"へ指名依頼を出すぜ!」
「ジングージ様、お気を付けて……女神様に祈っております」
「小僧……ジョー、儂も一緒に行くぞい!」
「テンダーさん、自分の鉄の箱車には乗車人数制限が有りますので、残念ですが……」
「ぐぬ、致し方ないな……」
「ジングージ殿、城塞都市タースの内部地図は重要機密扱いだが、儂の持っておる地図を使ってくれ」
「バンカー公爵閣下、有り難うございます。大変、助かります」
その後、城塞都市タースへの救援派遣の詳細が論じられて、計画も立案された。
まず、俺達"自衛隊"が先行してタースへ赴き、より詳しい情報収集と可能ならばアントニオさんの娘さん一家や、ギルさん達"雛鳥の巣"のメンバーと落ち合い救出活動を行う。
第二陣は、警備隊と冒険者部隊が乗馬して急行する。
そして、指揮者ゴーレムを操り、ロックも第二陣に同行する。
第三陣は、馬車にて人員輸送や、支援物資などの輸送を担当する手はずになった。
俺達"自衛隊"は、軽装甲機動車LAVでの移動なので、恐らく1日もかからず城塞都市タースまで移動可能だが、乗馬部隊は馬の疲労を考えると、指揮者ゴーレムで移動するロックよりも遅い。
馬車での移動は、言わずもがなだ。
会議が終わった頃には、既に夕刻になっていた。
俺は、自宅へと急いで戻り、城塞都市タースで起きた傭兵ギルドの反乱に関して、"自衛隊"のメンバー全員に説明した。
皆、驚いていたが、直ぐに状況を理解し支度を始める。
特に、兎耳メイドの姿のベルは、アントニオさんの娘マリアンヌさんとも面識があったため、凄く心配そうな顔をした。
「ジョー様。マリアンヌ様は、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だよ、ベル。ギルさん達"雛鳥の巣"が一緒だから」
「はい、ジョー様」
「そうだよ、ベルちゃん。早く駆けつけて助けようよ」
「うん、アンちゃん」
そんな会話をしながら、夕食の支度をしていると、玄関のドアがノックされた。
「はい、お待ち下しゃい」と、ベルがドアへと向かいドアを開ける。
表には、マーガレット司教と、アリスさん、エリスさん、それにミラが立っていた。
「夕食時に失礼します。ジングージ様」
「いらっしゃい、マーガレットさん。何か急用でしょうか?」
「はい、城塞都市へ行かれるので、出来ればミランダを同行させる訳には参りませんか?」
「えっ、ミラを同行ですか?取り敢えず、家の中へお入り下さい。どうぞ」
「はい、失礼します」
「「ジングージ様、お邪魔致します」」
「こんばんは、ジングージ様。お昼は有り難うございました」
「はい、兎に角中へどうぞ」
俺は、四人を家の中へと招き入れ、応接室へと案内する。
そして、4人へソファーへ座る様に言い、食事の支度をしていた"自衛隊"のメンバーを応接室へと呼ぶ。
「院長先生、こんばんは、アリス姉様、エリス姉様もこんばんは」
「はい、アン、こんばんは、ちゃんと挨拶できる様になったのね」
「先生、アタイはもう15歳だよ」
「そうだったね。おほほほ……」
「がさつな女の子だったけどね」
「アリス姉様、それは言っちゃ駄目だよ」
「ごめん、ごめん。でもね、嬉しいのよ」
「そですよ、アン。貴女は気が強いからね」
「それも言っちゃ駄目だよ、エリス姉様……」
「お茶をどうぞ、院長先生、アリス姉様、エリス姉様、ミラちゃん」
「「「ありがとう、ベル」」」、「ありがとうございます。ベルちゃん」
ロックとナークは、無言だったが、ロックとミラは、お互いを確認しあって目礼をしていた。
教会からの来客が、お茶を飲むのを待ってから、俺はマーガレット司教へ我が家への突然の来訪目的を尋ねる。
「マーガレットさん、それでミラさんを俺たちに同行させるとは?」
「はい、ジングージ様。ミラもまだ回復治癒魔法は未熟ですが、タースの街の民が怪我をしていれば、お役に立ちます。そして、ジングージ様ご自身や、お仲間が万が一負傷された場合を考えると、同行させようと考えたのです」
「それは大変に有り難い提案なのですが、とても危険が伴う任務です。非戦闘員のミラさんを危険に晒す訳には……」
「大丈夫です。ナークさんもご一緒でしょう?」
「はあ……」
「ジョーさん、僕もミラが一緒に先行する"自衛隊"に同行するのに賛成です」
「ロック……妹さんが危険に晒されるのだよ?」
「僕もナークさんを信頼してぃるし」
「……あたしから離れないと約束できる?」
「はい……ナークさん。約束します」
「アタイもミラちゃんが一緒に来るのに賛成だよ」
「私も賛成でしゅ。孤児院では少しでしたけど一緒でしゅた」
「……判りました。それでは、ミラにも同行してもらいます。ミラ、よろしく」
「はい、ジングージ様。宜しくお願いしましゅ……噛みました。ごめんなさい」
「「「「「「「はははは……」」」」」」」
「ミラちゃん、私みたいでしゅ……」
こうして、なし崩し的に、ミラの同行が決定した。
ただし、出発前に教会へ寄るので、その時マーガレット司教に、あるお願いをしたい旨を伝えると、快く承諾してくれる。
夕食を一緒にどうかと尋ねたら、教会へ帰り孤児院の子供達と一緒に食事をするとの事で、4人は教会へと帰って行き、俺たちはいつものメンバーで夕食を食べた。
俺たちは、食事を済ませ、屋敷の庭に駐車してある軽装甲機動車と、同じく駐機させている指揮者ゴーレムへ、荷物を積み込む。
特に、指揮者ゴーレムへは、移動時に必要な食料や、水なども積み込まねばならなかった。
逆に、燃料補給が必要な軽装甲機動車には、無限収納からディーゼル燃料のタンクを召喚して、燃料を満タンにしておき、予備の燃料タンクも積んでおく。
ロックさんへは、予備のマガジンや缶飯、コンビニ弁当やスナックなども渡した。
日付が変われば召喚のカウンターは、リセットされるので全く問題ない。
さあ、準備は完了だ。
既に夜は更けており、街中の通行人も減ってきている。
俺達は、軽装甲機動車と指揮者ゴーレムへそれぞれ搭乗し、深夜のスベニの街へと出発した。
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舳江爽快




