緊急会議
本日二話目です。
お陰様で、『目指せ!一騎当千 ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~』が、なんと「日間ファンタジー異世界転生/転移ランキングBEST100」の3位へランクインされました。また「日間ランキングBEST300」の14位にランクインされました。これもひとえに読者の皆様のおかげです。有り難うございました。
「それでは、緊急会議をはじめますぞ。議題は城塞都市タースで起きた傭兵軍による反乱に関してです」
「まずは伝書鳩の文だが、各ギルドや教会には、どの様な文面が届いていたかを教えてくれんか。儂の生産ギルドには『タースにて傭兵軍が決起し無血にて街は平穏なり。心配は無用』じゃったぞい」
「商業ギルド宛には『傭兵軍によりタースで革命成功。死傷者無しにて街は平穏なり。特に異常なし』でしたな」
「冒険者ギルドは『傭兵ギルドが革命のため反乱。無血で領主を捕縛し街は平穏なり。詳細は後日』だったぜ。教会宛は如何でした、マーガレット司教?」
「はい、アルバート殿。『タース傭兵軍が領主へ反乱を起こすも死傷者は無く街は平穏なり。安心されたし』でした」
各ギルドと、教会宛に届いた伝書鳩の文面は、何故か内容が、どれも似たような感じがする。
そして、全ての文面で、共通して強調されているのが『街は平穏なり』という一文だ。
何か違和感を感じる文面で、それは自らが書いた文面ではなく、誰かに強要されて書かされた感の強い内容だった。
警備隊大隊長のウィリアム大佐が、文面の報告を聞き言う。
「少なくとも、各ギルドと教会は傭兵ギルド、もしくは傭兵軍による支配下に有るのは間違い無いな」
「やはり、ビル殿もそう思われますか」
「ああ、アントニオ。街が平穏と伝えて、スベニからの援軍を来させない時間稼ぎだな」
「俺も同じ考えだ。そもそも、冒険者ギルドからの伝書鳩なんて初めてだった。何時もは、傭兵ギルドからだからなぁ」
「教会では緊急以外は伝書鳩は使いませんが、文面からして違和感があるのは、女神様への感謝の一文が無い事です」
「儂も同じじゃ。何時ものタースのギルマスなら、こんな硬い文面を書きはせんわい」
そんなスベニの重鎮達の会話へ、タースの貴族バンカー公爵が割り込んだ。
「恐らく、儂がタースの街を出るのを待って、傭兵共めら決起し反乱を起こしたのだろうな……くそっ」
「バンカー様、大公閣下は今回の反乱、予期されておりませんでしたのでしょうか?」
「何も儂は聞いておらんかったな、アントニオ殿。儂を見送ってくれた大公閣下は何時もどおりだった」
「侯爵家は今回の反乱で、どちらに付いたのでしょう?」
「無論、大公閣下側だろう……少なくとも儂はそう信じたい」
「他の貴族家の動きも気になりますが、傭兵を雇っていた貴族は制圧されたと考えるべきでしょうな」
「うむ、何れにしても、もう少し詳細な情報が欲しい。残して来た身内も心配でならんしな」
「心中をお察し致します、公爵閣下」
どうも話しを聞いていると、傭兵軍か傭兵ギルドを裏で操っている貴族の存在も臭ってくる。
或いは、先日の奴隷商人達が属しているという、闇ギルドが関与しているのかも知れない。
何れにしても、バンカー公爵が言う様に情報が少なすぎるので、二進も三進も行かない状況なのは間違い無かった。
「俺の所の冒険者パーティーが今、依頼でタースに滞在している。何とか情報を送ってくれれば良いのだがなぁ」
「アルバート殿、何方達が?」
「あぁ、パーティー"雛鳥の巣"だ。俺の弟ギルバートと配下の二人だなぁ」
「おお、ギルバート殿達が行っておられるのですか。いや、しかし災難でしたな……」
「まあ、奴らなら大丈夫さ。伝書鳩さえ何処かで入手できれば良いのだがなぁ」
「私めの娘が嫁いでおります商家には、先日訪問した際に数羽の伝書鳩を置いてまいりました。私的な伝書鳩です故、何か情報を送ってくれれば良いのですが……」
この話しは、以前アントニオさん宅へ居候して居た際に聞いた事があり、実際に娘さんからの伝書鳩が戻って来たのも見た。
内容は、アントニオさんの孫の成育状況だけで、おじいちゃんの孫を愛おしむ気持ちに溢れていた。
そうか、あの伝書鳩なら傭兵ギルドや軍の監視下から漏れているかもしれない。
しかし、仮に傭兵軍に見つかった場合は、非常に危険なのも事実だ。
その時、会議室のドアを激しく叩く音が聞こえ、一人の男性が息を切らして駆け込んで来た。
「親父殿、タースのマリアンヌから伝書鳩が返ってきたぞ!」
「おお、アストン!来たか!」
「あぁ、二羽も返って来た。一羽は冒険者からだ」
「冒険者?誰からだぁ?アストン殿」
「貴方の弟、ギルバート殿からだ」
「おぉ、ギルの奴め、マリアンヌさん宅へ駆けつけたかぁ。出来したぁ」
「そうですか、先日タースへ訪問した際、娘宅に寄っていただきましたので……有り難い。感謝しますぞギルバート殿!」
「それで、文には、どんな内容が書かれているんだぁ?」
「私めが読みましょう。先ずは娘の文から」
『家族全員無事。街は戒厳令下。城門は全て閉鎖。街は傭兵達が占拠。略奪と暴行が多発。当家はギルが護衛。助けて』
「……なんて事だ。何が街は平穏だとぉ。くそっ!」
「落ち着いて、アルバート殿。次を読みます」
『雛鳥は無事。冒険者ギルドは制圧下。大公家と公爵家は籠城交戦中。侯爵家は制圧下。傭兵ギルドは闇ギルド支配下』
「やはり、闇ギルドが裏で糸を引いていたのかぁ。誰か冒険者ギルドへ急いで行って、傭兵ギルドの職員を捕縛させてくれぇっ!」
「はい、アルバート殿。警備兵を向かわせます。同時に傭兵ギルド登録者も捕縛しましょう」
「ああ、それで構わねぇ。頼んだからなぁ、アマンダ」
「これでタースの状況が大方把握できた訳じゃな。どうする、アントニオ?」
「はい、テンダー殿。勿論、救助に向かいましょう。至急に……」
「よし、警備隊には、俺から直ぐに準備の指示を出そう。明日の朝には出発させる」
「ビル大佐、よろしくお願いします。冒険者ギルドは、どう動きます?」
「緊急依頼発動に決まっているな。お前が指揮を執ってくれ、ゴライアス!」
「当たり前だ。生まれ故郷のタースの危機に、俺が行かねぇでどうすよ、ギルマス」
「それがしも同行させてくれぬか?宜しいですな、バンカー閣下?」
「無論だ、サンダース!家族を救出してくれ。頼む……」
「この身に代えても、必ずや奥方様方や、ご家族方を助け出しますぞ」
少し間を置き、各ギルド長、警備隊大隊長、教会の司教の目が一斉に俺を見た。
更に、俺の捜索から戻ってきたエルドラさんや、ゴライアスさん、アリスさん、エリスさん、アマンダさん、アストンさんの目も俺を見つめる。
俺が、それでも無言で居ると、バンカー公爵とサンダース騎士までもが、俺を見つめて俺の発言を促す様な仕草だ。
要するに、会議室の全員が俺の言葉を待っていたのだ。
日間ファンタジー異世界転生/転移ランキングBEST100」の5位以内へランキング入りが果たせたのは、ブックマークをして下さった読者の皆様、そして評価ポイントを入れて下さった読者の皆様のおかげです。本当に、有り難うございました。読者の皆様への感謝を込めて、本日二話目の投稿をさせていただきます。
引き続き、『目指せ!一騎当千 ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~』のご愛読を、よろしくお願い致します。
舳江爽快




