コナモン
『目指せ!一騎当千 ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~』
連載三ヶ月目に突入です。
「見ぇます。はっきりと見ぇるよミラ!」
「お兄ちゃん、私が見えるの?」
「見ぇるよミラ!。ミラ、ぁりがとぅ……」
ロックさんとミラさんは、お互いを抱きしめ合い、そして泣いた。
ロックさんの回復した両眼からも、その眼を治癒回復したミラさんの両眼からも、溢れる涙が止まらない。
抱き合う兄妹を見ながら、アンさんやベルさん、そしてナークさんも貰い泣きを始める。
俺も勿論、目頭が熱くなり二人の姿が涙で滲んでしまっていた。
ロックさんとミラさんを治癒部屋へ残し、俺たちは、マーガレット司教の執務室へと場所を移動する。
そして、巨大な白い魔結晶の件で話しを始めた。
同席しているのは、マーガレット司教とシスター・アリス、エリス、アンさん、ベルさん、ナークさん、それに警備隊長のアマンダさんだ。
「マーガレットさん、先ほどの件ですが、あの巨大な宝珠は教会に寄付しますので、是非ともお受け取り下さい」
「ジングージ様、それは有り難いご提案でございますが、本当に宜しいのでしょうか?」
「構いません。自分が持っていても何の役にも立ちませんので。それから、先ほどアリスさんとエリスさんへお渡しした白い魔結晶も、お二人とミラさんへ差し上げます。是非、役立ててください」
俺がアリスさんとエリスさんへ、そう告げると二人は驚いた表情で俺に礼を言ってきた。
「ジングージ様……何とお礼を申して良いか判りません。これだけの大きさの光の結晶、本山でも所有しているのは十人もおりません」
「ジングージ様、宜しいのでしょうか?この大きさの光の結晶であれば、オークションでも驚くほどの高額で落札されます」
「いいのですよ。それでスベニの街の民が安心して暮らせるのですから。それと、アマンダ隊長にお願いがあります」
「なんでしょうか?ジングージ様」
「あの巨大な宝珠を教会へ奉納すると、それを狙う闇ギルドの様な馬鹿達が狙う可能性もあります。是非、常時教会を警備する警備兵を置いてもらえませんか?」
「左様ですね。直ぐに上司の大隊長へ具申いたします。大丈夫、十中八九、警備兵を常駐する事になるでしょう」
するとマーガレット司教が、俺に微笑みながら宝珠の寄付や、奉納に関しての決まり事を告げる。
「ジングージ様、過去に貴族の方々が宝珠を教会に奉納する際、もちろん赤や青の宝珠ですが、その宝珠に家名を着けるのが慣わしになっております。ですので、今回の巨大な白い宝珠は"ジングージ宝珠"と名付けましょう」
「えぇ~、それは自分、嫌です!」
「いいじゃないジョー兄さん。アタイは院長先生に賛成だよ」
「そうでしゅ、ジョー様。私も大賛成でしゅ」
「よい慣わしですね。ジングージ様の名が付いた宝珠ならば、少なくともスベニに在住する悪人は恐れをなして手を出さないでしょう」
「多分、アタイの冒険者仲間じゃ"爆裂の宝珠"って呼ばれるよ」
「……それは、もっと嫌だ」
結局、巨大な白い宝珠は、教会で管理する事に決定し、
小さい2個のビー玉サイズの白い魔結晶は、アリスさんとエリスさんが使い、大きなビー玉サイズの白い魔結晶は、ミラさんが使う事に決定した。
俺の苗字を宝珠に着ける事には、最後まで反対したのだが、俺以外の満場一致で決定されてしまう。
俺は、"自衛隊宝珠"を提案したのだが、ネーミング・センスを疑われただけだった。
加えて、マーガレット司教が言うには、今回の白い魔結晶は"親子結晶"と呼ばれる、非常に珍しい結晶なのだとか。
これは、魔結晶を落とすスライムが、狩れる直前に希だが分裂した際、分裂したスライムも狩ると、そのスライムが落とす魔結晶と同期して魔法を発動するのだと言う。
魔結晶の大きさが同一の場合は、"双子結晶"とも呼ぶらしい。
今回の宝珠と魔結晶は、大きさが非常に異なっているので、"親子結晶”となり、しかも小さいビー玉サイズの魔結晶は、"双子結晶"でもあるし、加えて微小でも珍しい白の魔結晶だ。
恐らく、その価値は、計り知れないので、冒険者ギルドと商業ギルドや生産ギルドにも周知しなければならないそうだ。
ちなみに、アリスさんとエリスさんは、二卵性の双子だそうで、"双子結晶"を管理できる事を凄く喜んでいた。
■ ■ ■ ■ ■
巨大スライム事件から既に半月以上が経過し、負傷したロックは完全に回復して毎日の訓練に励んでいる。
結局、巨大宝珠は非常に不本意だが"ジングージ宝珠"と名付けられ、教会で管理される事になった。
宝珠の警護には、三交代で警備隊より常時3人が派遣され、加えて冒険者ギルドからも常時依頼により、2名の冒険者が二交代で警護に当たっている。
小さな白い魔結晶は、生産ギルドによってネックレスとして加工され、"双子結晶"をアリスさんとエリスさんの姉妹が使い、大きなビー玉サイズの白い魔結晶をミラが首から提げている。
ミラは、以前よりも一層厳しく聖女として鍛えられているのだが、本人は期待に応えるべく日々修練に励んでいた。
そして、それを暖かく見守る兄ロックも嬉しそうだ。
さて、俺たちのパーティー"自衛隊"のメンバーはといえば、今日は休息日として全員で中央広場に来て昼食の真っ最中だ。
それと、修行中のミラも誘ったので一緒におり、兄妹で仲良く昼食だ。
何時も通り、マルドックさんのお好み焼き屋台と、その隣には孤児院の年長さん達が運営している、たこ焼きの屋台に加えて、新たに俺が提供したレシピを用いた屋台も追加された。
新たな屋台で売られているのは、うどんだ。
マルさんが始めたお好み焼き、そして生産ギルド特製鉄板による、たこ焼き、更に、うどんと粉物ばかりが集まった場所なので、俺が"コナモン"コーナーと呼んだら、それが、いつの間にか街の住人達にも広まってしまった。
関西では、"粉もん"と言うのが正しいらしいが、コナモンの方が熊本の緩キャラみたいだし、昔の怪獣の名前の様で可愛くて良いと思っている。
孤児院の子供らには、出汁の作り方は、既に、たこ焼きで教えてあったので、後は、うどんの麺打ちを教えるだけだった。
俺が大好きな、うどんの麺は、博多うどんのフワフワとした喉越しの良い麺だ。
秋田の稲庭うどんも喉越しが良く好きだし、名古屋の、きしめんも好きだ。
一般的に評判の高い、腰が強く歯ごたえを楽しむ硬いうどんは、あまり好きではない。
食品市場で、博多うどんのフワフワとした、うどんを再現すべく、小麦粉を吟味し選んだのだが100%の再現なんて無理だった。
それでも、喉越しの良い、うどんにはなったし、出汁に少しだけ魚醤を入れると、これが美味かった。
同じ出汁で、米粉を用いた麺も選べる様にしたので、こちらも女性陣には凄く好評だ。
タイで食べたクイティアオを思い出して再現してみたのだが、これも喉越しが良く実に美味いのだ。
そんな、中央広場の片隅に出来た"コナモン"屋台コーナーで、俺たちが談笑しながら昼食を取っていると、先日知り合った一人の女性が俺に声を掛けてきた。
昨日の後書きに応えて、評価ポイントを頂いた読者の皆様、有り難うございました。
後書きにて失礼いたしますが、お礼を申し上げます。




