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ASTACO

(召喚、ASTACO(アスタコ)!)


 俺は、無限収納から双腕作業機のASTACOを召喚して、直ぐさまコクピットへと乗り込みエンジンを始動する。

 ディーゼル・エンジンが、始動音も軽快に起動したのを確認した後、俺はポケットからスマートフォンを取り出し、ビデオ撮影モードに切り替えてから再び胸のポケットへ入れた。


 撮影用レンズは、自撮用の内側レンズでは無く、外側のメインカメラのレンズを外へ向けてポケットに入れたので、巨大スライムとの戦闘が記録できるはずだ。

 そして、ASTACOの右腕を操作するコントローラーを操作し、右腕側の大型の爪を大きく開き、そして、前方へ突き出した状態にしてからASTACOを前進させる。

 左右の履帯が回転し、ASTACOは、巨大スライムへ向かって前進を始めた。


 巨大スライムは、俺の乗車したASTACO目掛けて、巨体を上下左右に大きく伸ばしたり縮めたりしながら突進してきている。

 巨大スライムの内部へ取り込まれているナークさんとアンさんを包み込んだ防御結界は、未だ崩壊することなく維持されており、ナークさんが青く輝く両眼で俺の方を見ているのも確認出来た。

 二人は、未だ息苦しい様子には見えず、彼女達は未だ大丈夫そうだ。


 ASTACOから真っ直ぐ伸ばされた右腕の、大型な爪は巨大スライムの身体へと突き刺さる。

 爪は、開いた状態であったが、巨大スライムの身体の内部へと潜り込んだ。

 銃弾の様な高速な飛翔物体は、内部で直ぐに保持する様だが、速度が比較的遅い物体は、身体へ取り込もうとしているのか、すんなりと身体へ入って行った。


 しかし、ASTACOの鉄製の爪も、巨大スライムの内部へ入り込むと共に、みるみるオリーブドラブに塗装された表面が腐食されていく。

 ヤバイ、急いで操作しないと腕が爪もろとも、腐食どころか溶かされてしまう。

 俺は、開いていた大型の爪で、ナークさんが張っている防御結界の青白い球体をつかみ、巨大スライムの巨体から引き出そうとする。


 ASTACOの右腕に装備されている大型の爪で、上手くナークさんの張る青白い防御結界を掴めたので、俺は、直ぐにコクピット部分を右旋回させると共に、左右の履帯を逆転させてASTACOを後退させた。

 右腕に掴んだ防御結界の球体は、丁度右腕の大型の爪にすっぽりと収まっており、コクピットの回転と共に、巨大スライムの身体の外へと引き出せた。


 そのままASTACOを全速力で後退させ、右腕で掴んだ防御結界と共に、巨大スライムから急ぎ離れる。

 右腕が防御結界と共に身体から引き抜かれた事で、巨大スライムの身体から溶解性の体液が噴出してこぼれ落ちるが、直ぐに身体が表面を修復してしまう。

 折角捕食した獲物を身体の中から取り出された巨大スライムは、怒った様に巨大な身体を上下左右に大きく振るわせ、全速力で離脱するASTACOを追って来た。


 俺は、ASTACOの左腕に装備されている鋼鉄製のカッターを、巨大スライムへ向けて突き刺す。

 ずっぽりと、鋼鉄製のカッターは巨大スライムの身体へと刺さり込んだので、そのまま左腕を真っ直ぐ伸ばして、巨大スライムの中心――"(コア)"――目掛けて、より深く突き刺した。

 しかし、ASTACOのカッターが中心部へ近づくと、巨大スライムは、前進するのを止め、その場に停止する。


 巨大スライムめ、脳味噌が無い割には、馬鹿じゃ無い様だ。

 自分の弱点を心得ていて、自滅する様な行動は控えたのだろう。

 巨大スライムに刺さったASTACOの鋼鉄製カッターは、表面が急速に腐食していくが、鉄製の腕に比べると腐食の速度は遅い。

 今がチャンスだ。

 俺は、ASTACOの後退を止め、右腕に掴んだナークさんの防御結界を地面に離し、二人に向かって叫んだ。


「ナーク、アン、急いで走って退避だ!」

「……はい。さあ、アンさん急いで!」

「判ったよ!ありがとうナークさん……」


 ナークさんが防御結界を解くと、青白く光っていた球体の防御球体が消え、二人は、その場から全速力で走り離脱する。

 二人がASTACOから離れたのを確認した俺は、ASTACOを再び前進させ、コクピットを正面に向けてから右腕の大型の爪を閉じて、巨大スライムの身体へと再び突き刺した。


 コクピットを正面に向けたので、左腕の鋼鉄製カッターは巨大スライムの身体を引き裂き、再び身体の外へと出る。

 巨大スライムの引き裂かれた身体からは、溶解性の体液と思えるゼリー状のゲルが噴出して流れ出すが、直ぐに身体は修復されてしまう。

 俺は、もう一度、左腕の鋼鉄製カッターを巨大スライム目掛けて突き出した。


 ASTACOの両腕が突き刺さった巨大スライムは、ブヨブヨとした身体を激しく震わせ、その場から後退を始めた。

 俺は、「逃がすか!」と叫んでASTACOを前進させる。

 ASTACOの両腕は、ほぼ水平に伸びきっており、巨大スライムの身体へ刺さった状態なので、前進すると共により深く、そして中心部へと近づいて行った。


 ASTACOの両腕が巨大スライムの中心――"(コア)"――に近づくと、ASTACOの履帯が急激に空転を始め、地面の土を後方へと飛ばし始める。

 巨大スライムが自身の"核"を防御するために、体内のゲル状体液を硬化させ始めたのだ。

 それでも尚、巨大スライムは、ASTACOの両腕から逃げようと後退を止めない。


 俺は、両腕のコントローラーを操作して、鋼鉄製のカッターと大型の爪を開閉させる。

 巨大スライムの中で開閉するカッターと大きな爪は、巨大スライムのゲル状体液の中で開閉し、硬くなった体液を少しずつだが切り裂き、特に左腕の鋼鉄製カッターは、より中心部へと進み始める。

 相変わらず、左右の履帯は激しく空転しつつ地面を削り取りながらではあるが、確実にASTACOは巨大スライムへと徐々に近づいて行った。






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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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