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草原の救出戦

「アンさん、あれもスライムなのか!?」

「ジョー兄さん、あれはヤバイよ!直ぐに逃げるよ!」


 アンさんは、此方に向かって進んで来る巨大スライムを尻目に、脱兎の如く軽装甲機動車/LAV(ラヴ)へと走ってくる。

 同様に、アンさんの側に居たナークさんも、アンさんを追う様にして此方へ走り始めた。

 俺は、LAVのエンジンを始動させ、後部ドアを開けてアンさん、ナークさん、ロックさんが直ぐに乗車出来る様にし待ち受ける。


 ベルさんは、幸いにもLAVの後部スペースで荷物の整理をしていたので、そのまま後部荷物スペースから、後部座席へと移動してもらう。

 ロックさんは、アンさんやナークさんの居た場所から、かなり離れて居たのが幸いしLAV(ラヴ)の助手席へと飛び込んで来る。


 巨大なスライムは、その大きさに比例した速度で移動可能な様で、どんどんと逃げて来る二人との距離を詰めて来た。

 俺は、援護射撃をすべく、89式小銃を構え連射モードで巨大スライムへ狙いを定め発射する。

 ダダダダダダッ!、相手が巨大なので全弾が、巨大スライムの半透明をした白い身体へと命中。

 だが普通のスライムとは違い、"核"と思われる身体の中心へ命中しているにも関わらず、全くダメージを与えられていない。


 よく見てみると、普通サイズや大型のスライムでは、89式小銃から発射された弾丸は、全てスライムの身体を貫通したのだが、この巨大スライムは弾丸が全く貫通していない。

 全ての弾丸が、巨大スライムの身体の中で止まってしまっている様に見えた。

 しかも、"核"だろうと思われる中心の手前で、銃弾が急激に溶け出し身体の中に取り込まれている。

 もっと攻撃力の高い武器でないと、巨大スライムの"核"まで到達出来ないのだろうか。

 俺は、二人に向かって大声で叫ぶ。


「アン、ナーク、もっと早く走って!」

「うわー!、捉まるよ~!」

「……アンさん、あたしの側に!」


 ナークさんがアンさんに近づき、アンさんの身体を両腕で抱きしめた。

 そのまま二人は、草原へ転がる様にして倒れ込むと同時に、二人の身体を青白い光の球体が包み込む。

 ナークさんが、防御結界を張ってくれたのだ。

 ナークさんとアンさんが防御結界に包まれた直後、巨大スライムが二人の上に覆い被さる様にして、防御結界ごと自分の身体に取り込んでしまった。


「アン、ナーク……」


 巨大スライムの半透明の身体の中で、ナークさんの張った球形の防御結界が青白く光り続けている。

 そして、その球形防御結界の中で、抱き合う二人の姿も確認できた。

 どうやら、巨大スライムの溶解性体液も、ナークさんの防御結界は溶かす事が出来ない様だ。

 巨大スライムは、二人を身体に取り込んだ場所で、移動するのを止めてしまう。

 捕食が済んだので、対象を消化するつもりなのだろうか。

 俺たちの存在は、一切無視しているかの様だ。


 しかし、このまま持久戦に持ち込む事は出来ない。

 ナークさんの防御結界は、維持が可能な時間制限もあるし、恐らく防御結界内の酸素は、それ程長くは持たないだろう。

 早く二人を、巨大スライムの体内から救出しなければならないが、一体どうやって巨大スライムを倒せば良いのか俺には全く判らない。


 89式小銃の5.56mmNATO弾では、巨大スライムの"核"まで届かないので、より貫通力の高い12.7mm重機関銃M2を用いて、50口径のブローニング・マシン・ガン弾丸ならば、"核"まで届く可能性は高いだろう。

 しかも、ナークさんの防御結界は、銃弾を完璧に防ぐ事は立証済みだ。


 爆発系の武器の場合は、06式小銃擲弾(てきだん)だと、恐らく"核"までは到達できずに、身体の外か中に入ったとしても"核"までの距離が遠すぎて、"核"にダメージを与えられるかどうかも予想出来ない。

 しかし、110mm個人携帯対戦車弾――パンツァーファウスト3ことLAM(ラム)――であれば、ロケット推進力によって"核"まで到達可能かもしれないが、懸念事項としてナークさんの防御結界で、LAMの爆発に耐えられるかどうかが未検証だという事だ。


 此処の位置からだと、ナークさんが張っている防御結界が真正面なので、俺はロックさんへ89式小銃で、巨大スライムの注意を引きつける様に指示して、巨大スライムの側面へと迂回して回り込む。

 ロックさんが、スリーショット・バースト・モードで89式小銃をダダダッ!と発射するが、巨大スライムは、自分に命中するNATO弾など全く感じていない様子で、ブルブルと震えているだけだ。


 俺は、巨大スライムの側面へ回り込むと、無限収納から12.7mm重機関銃M2を召喚し、地面へ設置する。

 そして、地面へ腹ばいになり巨大スライムの中心――"(コア)"――目掛けて、重機関銃M2を発射した。

 バババババババッ!……と、豪快な発射音と共に音速の3倍の速度で、50口径のブローニング・マシン・ガン弾丸が、巨大スライム目掛けて火を噴き飛んで行く。


 目標となる標的が巨大なので、50BMG弾丸は、全弾が巨大スライムの身体へと命中した。

 しかし、巨大スライムは萎み始める事はなく、逆に今度は怒り狂った様に身体が大きく伸びたり縮んだりして、俺の方へと進んで来るのだった。

 俺は、更に重機関銃M2を巨大スライムへと発射し続けるが、全く怯む事なく巨大スライムは、俺に近づいて来る。

 そして、俺は、重機関銃M2の弾丸を撃ち尽くし、カチッ、カチッと空しく反応をしない引き金(トリガー)の音を聞いた。


 これは、ヤバイぞ。このままでは、俺も巨大スライムに取り込まれてしまう。

 そうなれば、ナークさんの防御結界に守られていない俺は、瞬く間に巨大スライムの体液によって溶かされてしまうだろう。

 どうする?パンツァーファウスト3の使用も頭を過ぎるが、これは最後の手段だ。

 その前に、まだ出来る事があるはずだ。

 重機関銃M2が効かないのならば、新たに装備追加された銃も効かないだろう。

 俺は、思案したあげく、もう一度あれ(・・)を召喚した。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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