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我が家

 商業ギルドのアントニオさんが斡旋してくれた物件は、3件の候補物件から俺が選ぶ形となった。

 アントニオさんを信用しているので、アントニオさんの勧める物件で構わないのだが、「住むのはジングージ様ですので、気に入った物件をお選び下さい」との事だ。

 確かに、不動産の物件は、自分の目で確かめるべきなのだろう。


 アントニオさんは、ギルドの仕事があるということで、商業ギルドの受付嬢の一人が、物件まで案内してくれると言う。

 ギルド所有の乗客馬車に乗って物件巡りを開始するのだが、何故か兎耳少女のベルさんが同行してくる。

 まぁ、家事関係には疎い俺なので、家事のプロであるベルさんが同行してくれるのは有り難い事だ。

 御者は、当然ながら馬耳少年のラック君なのは、言うまでもない。


 一件目の物件は、見るからに屋敷という豪華な佇まいで庭も広い。

 門構えからして、庶民の俺には、入り難い豪華さだ。

 ベルさん曰く、「メイドが最低3人は必要でしゅ」との事。

 屋敷は、3階建てで確かに広すぎる上、部屋数も多く管理や運用には骨が折れそうだ。


 二件目は、以前、宿屋だったという物件だ。

 この建物も3階建てで、部屋数は多いのだが、作りは質素で中々良い感じだ。

 ただし、玄関というかロビーが作られているので、ここが居間兼食堂となると、ちと落ち着かない感じはする。

 しかし、厨房は流石に元宿屋なので、広く使いやすそうだ。

 風呂も最初の物件よりも大きかったが、ベルさんが言うには「湯を運ぶのが大変でしゅ」との事。


 確かに、一人で入浴するには、大きすぎる湯船だった。

 基本的に、この異世界の風呂は、湯を別の場所で沸かし、それを湯船に運んでからの入浴だ。

 何れ、風呂釜を生産ギルドのトマスさんに依頼し、風呂の改革も実行せねばならないだろう。

 この物件の問題点は、庭が小さく馬車用の駐車スペースが少し離れた場所なので、ロックさんの指揮者ゴーレムを駐機させて置く場所が不便な事だ。


 そして、最後の物件に俺たちは来た。

 此処は、北の城壁を少し東へ回った場所で、北側には城壁が聳え立っている。

 北側の城壁なので、日当たりが悪くなるという事は無いのが幸いだ。

 珍しいのは、東側に流れる大河から運河が街の中へ引き込まれているのだが、その運河が物件の横側を流れている。


 建物は、二階建てで、大きさは大きくもなく小さくもない。

 庭は、手入れされておらず、雑草が伸びた空き地といった方が良い状況だ。

 しかし、広さは十分にあるので、これならロックさんの指揮者ゴーレムを駐機させるのにも十分な広さの上、馬車や車の駐車スペースも取れる。


 玄関を抜け建物の中へ入ってみると、こぢんまりとした質素な作りだが、大きめの書斎か執務室に加え、適度な広さの居間やダイニングに別れており、キッチンも十分な広さを持っていた。

 ベルさんが言うには、「ここならメイド一人でも大丈夫でしゅ」との事。

 俺としては、メイドを雇うつもりは毛頭なく自分たちで全てやろうと思っているのだが、家事を当番制にするなら、この助言は有効だ。


 二階への階段を上がってみると、個室が5部屋あった。

 各部屋の作りは、殆ど同じでベッドを入れても十分な広さだ。

 一番奥で南側の部屋だけが少し広い部屋で、恐らくは此処が主寝室だったのだろう。

 当面は、俺とロックさん、そしてナークリエンさんの3人で住むなら、これで十分だ。

 今後、同居人が増えても、後2人は収容出来る事になる。

 よし、此処にしよう、決定だ。


 俺は、案内してくれている商業ギルドの受付嬢に「此処にします」と伝えると、

 「承りました。修復や手直しを致しますので、3日間ほどお時間を下さい」と、応えてくれた。

 ベルさんは、何故かニコニコしているが、ベルさんの助言で俺が決めた事が嬉しかったのだろう。

 よし、これで3日後には、我が家へ引っ越しだ。


 俺たちは、商業ギルドに戻り、アントニオさんへ3番目の物件に決めた旨を伝える。

 「おお、やはり彼処ですか。流石、ジングージ様、お目が高いですな」と、アントニオさんは俺が選ぶだろうと予想していた様だった。

 良い物件を紹介してもらった礼を言い、俺は商業ギルドを後にして教会へと向かう。


 教会では、マーガレット司教へ引っ越し先の家が決まった旨を伝えると共に、ロックさんとナークリエンさんに冒険者ギルドへ同行してもらい、冒険者登録を済ませたいと伝えた。

 マーガレット司教も家が決まった事を喜んでくれ、二人の冒険者登録もよしなにと、お願いされる。

 そして俺は、ロックさんとナークリエンさんを連れ、冒険者ギルドへと向かう。


 冒険者ギルドでは、ギルドマスターのアルバートさん自らが対応してくれ、二人の冒険者登録は、(つつが)なく終わる……はずだったが、ここで良い意味でのイレギュラーな事態が起こる。

 今回の事件で、闇ギルドの奴隷商人達を捕らえ、そして未然に犯罪を防いだ功績によって、ロックさんは、いきなりJランクのレザー・ランカー登録となり、傭兵の軍曹を無力化して人質救出に協力した事で、ナークリエンさんもLランクのレザー・ランカー登録となった。


 そして俺だが、これまでのオーガ討伐、ワイバーン討伐、そして守護者ゴーレムからスベニの街を防衛した功績から、現在のFランクから一階級昇進のEランクへとランクアップとなった。

 レザー・ランカーと違い、メタル・ランカーの昇格には、実績と審査が厳しく査定されるので、Dランクへの昇格も検討されたのだが残念ながら、それは叶わなかった様だ。


 俺としては、元の世界から、この異世界へ転生した時点で、既に二階級特進を果たしているので、こんな短期間で二尉へ昇進出来るとは思ってもいなかったので、正直戸惑うのだが嬉しいのも事実だ。

 俺は、首に提げていた陸自の認識票をアルバートさんへ渡し、ランクアップの記録をしてもらう。

 このランクアップ記録は、ギルド長にしか操作が許されない魔道具で行われるらしい。


 ロックさんとナークリエンさんが、まさかのレザー・ランカー登録となったので、身分証明票の革素材を用意してなかったため、急遽素材を探し回る事になってしまった。

 取り敢えず、適当な素材の革で作成してもらって、後から上等な革か鱗に交換をする事にする。

 二人の身分証明票(仮)が出来るのをギルドの受付で待っていると、茶色の髪を靡かせた少女が受付へ飛び込んで来るなり俺に言った。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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― 新着の感想 ―
[一言] ドワーフにガチャポンぷを設計して販売すれば? 2階まで揚水してシャワーを作れるよ?木で2重タンクを 作り保温するゴムに硫黄の他に木炭を添加すると 強化できるよ?これでホースを作りシャワーを作…
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