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苦渋の市街戦

 半壊した守護者ゴーレムが、残った左目から特大の火炎弾を発射準備に入った事は、赤く輝く目とキーン……という甲高いチャージ音を発している事から、間違いはないだろう。

 守護者ゴーレムの発射する火炎弾の射程距離は、恐らく200m程だ。

 これは、交易船を火炎弾で燃やした際、船にわざわざ近づいた事からの予想なので実際には、もっと長いのかもしれない。


 俺は、KLX250に跨った状態だったので、直ぐさまパンツァーファウスト3こと、LAMの空発射筒を、その場に放棄し、KLX250をその場でスピン・ターンさせ、後方へと全速力で待避する。

 後ろを振り返ることなく、フルアクセルで限界まで加速していくと、後方から守護者ゴーレムが、火炎弾を発射した音が聞こえてきた。


 KLX250のバック・ミラーを確認してみると、特大の火炎弾は、俺目掛けて飛んで来ているのが確認できた。

 果たして逃げ切れるのか……。

 8m程の巨体である守護者ゴーレムから、100m以上離れている場所を狙っての発射。

 その発射角は、打ち下ろしとなっていたので、俺が高速で待避していなければ恐らくは直撃したであろう場所へと、特大の火炎弾が着弾した。


 着弾した特大火炎弾の炎は、直径が50m程はあろうかという、大きな爆炎となって燃え盛っている。

 俺の背中に、その熱風を感じはするが、炎が身を包むことは無かった。

 間一髪、逃げ切れたのだ。

 一瞬の判断を誤っていたら、俺は、地獄の炎に焼かれていたのだろう。

 背中で熱風を感じていたが、それを冷やすかの様に、背中に冷や汗が流れるのを感じた。


 直ぐ様KLX250を減速し、再び反転して守護者ゴーレムへと対峙する。

 そして、虎の子である最後のパンツァーファウスト3を無限収納から召喚し、半壊している守護者ゴーレムへと光学照準器のレンズを覗いて狙いを定めた。

 LAMの射程距離は、守護者ゴーレムの火炎弾よりも2倍以上も長いので、この場所からも問題なく届く。

 ただし、距離が長ければ命中精度は落ちるが、なにしろ相手は巨大だ。


 守護者ゴーレムは、未だに俺の方へ向いている。

 右肩が無くなっているとはいえ、身体もこちらを向いているので標的としては、狙いが定めやすい。

 俺は、LAMの弾頭プローブを引き延ばし、安全装置を解除した後、もう一度光学照準器で標的を確認し、そしてLAMのトリガーを引いた。


 右肩に担いだLAMからバシュッ!と弾頭の豪快な発射音がし、弾頭から安定翼が広がると共に、弾頭のロケットへ着火され、手負いの守護者ゴーレムへと一直線に飛行していく。

 そして今度は、守護者ゴーレムの胴体のど真ん中へと着弾し、ドッカァーン!と爆発音と共に、爆煙が吹き上がり、守護者ゴーレムの身体が木っ端微塵となった。


 胴体が瓦礫ととなって吹き飛び、その場へ手や足が崩れち半壊していた頭部も、何処かに吹き飛んで行く。

 「よしっ、やった!」俺は、思わず声に出してしまいながら、打ち終わった最後のLAMの空になった発射筒を無限収納へ収納し、直ぐさま南門へと偵察用オートバイ・KLX250で走り始める。

 途中で、先ほど放棄したLAMの空発射筒を回収し、無限収納へ収納。


 南門は、瓦礫と化した守護者ゴーレムと、打ち壊された扉の残骸で慎重に走行せざるを得なかったが、元々KLX250はオフロード・バイクなので多少の瓦礫や障害物は問題なく走破可能だ。

 慎重に南門を潜り抜けると、かなり距離は有るが遙か前方に、漆黒のゴーレムの姿を視認できた。


 南門の城壁上部の回廊から、警備兵達の歓声が聞こえてくる。


「凄い!流石、爆裂のジョー殿だ!」

「やった、守護者ゴーレムを粉砕してくれた!」

「ジングージ殿、後1体黒い奴ですぞ!」

「我々では、どうにもなりません……頑張ってください!」


 俺は、門の上を見上げて手を振ってからKLX250のアクセルを回し、漆黒のゴーレム目指して南大通りを中央へ向かって直進を開始した。

 しかし、既にパンツァーファウスト3は打ち尽くしてしまい、残弾数はゼロだ。

 返す返すも、今朝の試射が悔やまれる。

 もっとも、街中でのLAMの発射は、周辺への被害を考慮するば、どのみち使用出来ないだろう。

 となると、12.7mm重機関銃M2が、あの漆黒のゴーレムに効果があるかどうかだ。


 漆黒のゴーレムは、守護者ゴーレムよりも小柄だが、材質はどう見ても岩石には見えない。

 鉄並みの金属で厚みが戦車並みだとすれば、重機関銃M2では、撃破することは難しいだろう。

 ましてや、89式小銃では歯が立たないだろうから、06式小銃擲弾(てきだん)か……。

 しかし、これも周囲への爆風の影響が心配だ。


 漆黒のゴーレムまで距離が50m程まで近づいたところで、相手の詳細が視認できた。

 身長は6~7m程度で、体型は完全な人型だ。

 関節部分は守護者ゴーレム同様の球形ジョイントだが、頭部は首部分も球形ジョイントが存在している。

 そして、頭部には2本の黒い角が生えており、両眼は黄色く輝いていた。

 その姿は、まるで黒い闘牛の様にも見えた。


 漆黒のゴーレムは、停止して道端に止められていた荷馬車を押さえて、馬を繋いでいた部分を引きちぎっている最中だ。

 いったい漆黒のゴーレムは、何をしているのだろうか。

 しかも、あの荷馬車は、交易船から降ろされた荷馬車3台だ。

 荷馬車の前には、箱形の乗用馬車も止まっており、御者席には軍曹と呼ばれている傭兵が、何やら喚いており、その周辺には3台の荷馬車の御者をしていた冒険者3人が集まっている。


 それにしても、此処は、戦闘をするには場所が最悪だった。

 何故かと言えば、馬車が止められていたのは、教会の真正面なのだ。

 此処で戦闘になれば、教会への被害は免れないだろう。

 恐らく教会へは、スベニの市民達が少なからず避難しているだろうし、教会の裏手には孤児院もあるのだ。

 此処で爆発系の武器は、当然の事、重機関銃M2の使用も(はばか)られる。


(くそっ!一体どうやって奴を攻撃すれば良いんだ……)






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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

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