訓練
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たこ焼きのお披露目は、絶賛の内に終了した。
生産ギルドの全面的なバックアップを得て、テンダーおっさんの一番弟子であるトマスさんが作ってくれた、たこ焼き用鉄板の出来は最高だった。
また、食材市場で購入した蛸の乾物も、問題なくお湯で戻せば、十分にたこ焼きの具材となるし、出汁用の昆布や椎茸も十分に出汁が取れることが判ったのだ。
更に、蛸の乾物を戻す為に使用したお湯も、出汁として有用であり、これと戻した蛸、椎茸、昆布を使う。
そして、味の決め手となるナンプラーを加え、購入してきた精米済みの米によるタコ飯も、もの凄く好評だった。
特にアントニオさんが絶賛してくれた為、商業ギルドで、このレシピを販売する事が決まり、スベニの名物料理として広められる事にもなったのだ。
ただし、たこ焼きの方は当面、たこ焼き用の鉄板を一般販売する事はせず、孤児院の子供達による屋台専用とする提案を俺がして、これが受け入れられた。
孤児院を卒業しても、なかなか職に就けない子供たちも居るというのをマーガレット先生に聞いていたので、これの対策として、たこ焼き用屋台を孤児院の独占とする事で、少しでも仕事になるのではと思った次第だ。
すでに試験的ではあるが、中央広場でお好み焼き屋台を営んでいる、孤児院出身者のマルさんに協力を依頼して、マルさんの隣で間もなく卒業する孤児院の年長さん達が、お好み焼きの屋台を運用している。
販売は好調で、マルさんの指導もあり、順調な滑り出しと言って良いだろう。
今後も、孤児院向けの独占料理を追加で提案していく予定だ。
さて、俺はと言えば、この所はドワーフのテンダーおっさんの呼び出しもなく、自分の時間が持てる様になったので、新しい装備のチェックや練習を行っている。
あのワイバーン戦の翌日、無限収納に幾つもの項目が追加されていたのだ。
やはり、強力なモンスターを討伐するとランク(階級)が上がり、追加装備が召喚可能となる様だ。
実際、最初にオーガ三匹を討伐した時よりも、ワイバーン討伐後の方が、より多くの装備を召喚可能となったのだ。
装備に追加された武装は、かなり強力な装備だったので、これによりワイバーンよりも強いモンスターにも、かなり対応出来そうな気がする。
●自衛隊標準装備品
機関銃:12.7mm重機関銃M2(弾丸x110)
同弾丸一帯/110発(x5)
火砲・ロケット:110mm個人携帯対戦車弾(x5)
二輪車:偵察用オートバイ
車輌:軽装甲機動車
などが、初期装備に追加された新しい装備だ。
重機関銃M2と、対戦車ロケット砲のパンツァーファウスト3ことLAMが追加されたのは、嬉しい。
実際、空飛ぶモンスターだったワイバーンには、89式5.56mm小銃では、やはり非力過ぎた。
恐らく、12.7mm重機関銃M2であれば、あの硬い鱗も打ち抜けるだろうし、110mm個人携帯対戦車弾/LAMなら、命中すれば一撃で葬り去れると思う。
また、移動手段として、初めての四輪車となる、軽装甲機動車が追加されたのも嬉しい。
これで、夜間の移動もより安全になるし俺だけでなく、他の冒険者や警備兵も乗せられる。
この軽装甲機動車があれば、12.7mm重機関銃M2も装備可能なので、とても一人では運搬するのにも苦労する重さの重機関銃M2でも、軽装甲機動車に装備してしまえば問題もない。
更に、人命救助には欠かせない、災害救助支援装備にも、多くの装備や重機などが追加されており、こちらの方は攻撃用の武装よりも充実した装備となっていた。
ただし、俺は、重機の運用に関しては殆ど素人なので、この運用技術に慣れるために、訓練を行う必要があった。
もっとも、誰が教えてくれる訳でもないので、完全な独学となってしまう。
そこで俺は、一人で偵察用オートバイに乗り、西の街道を西へ進んで、迷いの森まで来ている。
俺の初戦となった、対オーガ戦闘を行った場所だ。
ここで、少し森の中に入ってしまえば、街道から見えなくなるので、訓練を行うのに最適な場所だと考え、ここまで来たのだが、移動にオートバイを用いたのは、軽装甲機動車だと目立つからに他ならない。
迷いの森に少し入ってから、多少なりとも木々が少ない場所を選び、110mm個人携帯対戦車弾/LAMの試射も行ってみる。
破壊力は、もの凄く、爆発音も相当なものだ。
これなら、ワイバーンにも有効な攻撃が行える。
問題は命中率だが、後は練習あるのみだろう。
迷いの森の様な密林では、有効な標的となる対象物がなく、これは他の場所での訓練が必要と思われた。
個人携帯対戦車弾/LAMを発射した方向は、もちろん女神様の神殿には間違っても当たらない方向にした。
LAMの射程距離400mを考慮すれば、問題はないと思われるのだが。
また、女神様の神殿の周囲は、魔法の結界が貼られているので、攻撃兵器は無効化されてしまうのかも知れないが、破壊力を考えれば念には念を入れてだ。
12.7mm重機関銃M2の試射も行ってみるが、こちらも破壊力は抜群だ。
かなり太めの樹木が、見事に粉砕されて倒れてしまう。
排出された空薬莢は、テンダーおっさんへの土産として、全て回収したのは言うまでもない。
もちろん、LAMの使用済み発射筒も無限収納へ収納した。
災害救助支援装備からは、特に重機の運用に重点を置いて訓練する。
ここで、奇妙な事に俺は気づいた。
初めて乗った重機ではあったが、頭の中に操縦方法が自然と流れ込んで来る感覚で、慣れない部分は別にしても、違和感なく操縦をする事が出来たのだ。
これは、個人携帯対戦車弾/LAMの試射の時も同様だった。
俺は、LAMの発射を一度も経験した事が無かったのだが、自然と発射準備を行ってしまった。
LAMの実物を見たことはあるが、一発発射するのに、小型乗用車が一台購入できる程ということから、そうそう訓練で試射できる代物ではない。
どうやら、無限収納に追加される装備に関しては、女神様の加護か、祝福による恩恵が機能し、扱った事の無い装備に関しても、基礎的な学習が自然と行われる様だ。
この異世界の言語に関しても、読み書きも含めて難なく出来る事と同様の事が、新しく追加された装備に関しても同様に働く事が確認できたのだ。




