表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/237

討伐隊北へ

「ワイバーンの襲撃だとぉ!お前の村は何処の開拓村だ?」

「北の開拓村だよ。街道の定期便馬車に乗せてもらって、さっきスベニに着いたばかりさ……ぐすん……」

「で、警備隊へはもう知らせたのか?」

「未だだよ……村長さんから冒険者ギルドへ行って、ギルドマスターへ報告しろって言われたんだ……」

「そうか、判った。誰か!、急いで北の開拓村がワイバーンの襲撃を受けていると、警備隊へ知らせてこい!」

「はい!」


 アルバートさんの指示を受け、冒険者ギルドの受付嬢が一人、玄関ロビーから走り去って行く。

 何なんだ、ワイバーンの襲撃って?

 どんなモンスターなのか、俺は、この手のファンタジー異世界の定番を良く知らない。

 こんな事なら異世界ファンタジー小説を、もっと読んでおくんだったよ。


「アルバートさん、ワイバーンって、何ですか?」

「ジョーは知らなかったか……すまん、迷い人だったな。ワイバーンってのはよぉ、飛行する小型のドラゴンだ。大型のドラゴンに比べちゃ、小せぇし比較的弱いがなぁ。それでもオーガより始末が悪りぃのは、飛ぶって事と鱗が鋼の様に硬てぇんだ」

「そうですか……それで人を襲うと?」

「あぁ、人を襲って食っちまう。で、一度でも人の味を覚えやがると、その場所へ必ず戻ってきて、また襲撃してくるんで厄介なんだ」


 アルバートさんの説明で、何となくワイバーンを想像できた。

 飛行するという事は、鳥類のモンスターかと思ったが、どうやら爬虫類のモンスターらしい。

 イメージ的には恐竜に近く、翼竜のプテラノドンに似ているのだろう。

 しかし、説明に出てきた大型のドラゴンって、この異世界には、ドラゴンまで生息しているのかよ。


「よし、此処にいるメタル・ランカーは全員、ワイバーンの討伐へ参加しろ。レザー・ランカーでも魔法を使える者は全員参加だ。いいなぁ!」

「儂も行ってやるぞい」

「ありがてぇ、テンダーさんの火炎弾なら、ワイバーンにも対抗できるぜぇ」

「ふん、ワイバーンが降りてこん限りは、儂の火炎弾も届かんわい」

「俺も行くぜ!ギルマス、剣が折れちまった。ギルドのを貸してくれ」

「構わんぞ、好きなのを持って行け」


 こんな事態になると判っていれば、もう少し手加減したのだけれど、今更ながら後の祭りだ。

 俺は、ゴライアスさんへ謝罪することにする。


「申し訳ありませんでした。自分の攻撃で……」

「お前が悪いんじゃねぇよ。俺が馬鹿だっただけさ」


 そう言うと、ゴライアスさんは、俺に右手を差し出してきた。

 俺も手を差し出して、彼の手を握り握手をする。凄い握力だった。

 ギルバートさん以上の握力だが、ゴライアスさんは俺に微塵も威圧的ではなく、寧ろ好意的な笑顔を見せた。

 この人、喧嘩早いけど遺恨は、残さない良い人みたいだ。


「商業ギルドとしても、協力させていただきますぞ。馬車は必要なだけ用意しましょう。それから、副会長を参加させます。ご存じのとおり、彼女は風魔法の使い手ですからな。お役にたつ事でしょう」

「おぉ、すまねぇなぁ、アントニオ会長。そうしてもらえると助かる」


 アントニオさんも、そう言って協力を申し出た。

 それにしても、エルフ美女のエルドラさん、風魔法の達人だったのか。

 やっぱり、エルフって凄いな。

 ドワーフのテンダーさんは、火魔法だったけど、凄い火炎弾だったし、風魔法って事は竜巻でも起こすのだろうか。

 だとすれば、飛行するモンスターには、有効だろう。


「で、兄貴よ、警備隊も出動するんだろうから、今から出るのか?」


 ギルバートさんが、アルバートさんへ尋ねると、アルバートさんは、首を横に振る。


「いや、ギル。もう日が沈んじまう。出動は明日の明朝、日の出と同時だ。警備隊も装備を備えるとなると、同じだろうよ」

「そうだな……ワイバーンも、余程の空腹でない限り、夜襲はしねぇだろうからな。判ったぜ」

「すいません。自分は判らないのですが、北の開拓村って、此処……スベニから、馬車や馬でどのくらいかかるのでしょうか?」

「馬車なら6時間くれぇかな。馬なら途中休ませねぇといけねぇが、2時間半ちょいだなぁ」

「そうですか、ならば自分がこれから先行して出発します」

「はぁ~?ジョー、何いいだすんだぁ。夜は馬じゃ走れねぇ」

「大丈夫です……これから、直ぐに出ます。村への道は、北への街道を進めば良いのですか?」


 スマートフォンのマップ表示とゴッド()ポジショニング()システム()で、何とかかなるだろうと俺は考えた。

 夜間でも走れる装備も、女神様から今朝方もらっている。

 俺は、アルバートさんへ、警備隊と冒険者の混成討伐隊が明日の夜明けの出発では、夜明けにワイバーンが村を襲えば間に合わない。

 ならば、俺だけでも先行して守備に入れば、少なくとも時間稼ぎにはなる。

 そう説得すると、渋々だが了承してくれた。


「なら、アタイを連れてっておくれよ。北の開拓村までなら道案内できるよ」


 そう声がした方向を向くと、冒険者達の人混みの中から、中学生くらいの女の子が現れた。

 15歳前後だろうか、栗色の長い髪を後ろで一本に束ねたポニーテールにしている可愛い少女だ。

 服装は、革製の胸当てをしているだけで、革鎧姿ではない。

 腰には、短い剣を下げており、背中には弓を背負っている。


「北の開拓村はアタイの生まれ故郷さ。人ごとじゃないよ!」

「アン、おめぇは未だウッド・ランカーだ。危ねぇから駄目だぁ」

「足手まといには、ならないよ。村まで道案内をするだけさ」

「……他に、北の開拓村出身者はいねぇのか?」


 ギルド・マスターの質問に冒険者からは、誰も答えがなかった。

 俺一人でも、十分行き着ける自信はある。

 ただし、女神様のアイテム頼りではあるが……。

 冒険者らしいが、まだ幼さも残っている少女を、危険な目に遭わせるのは、どうかと思う。

 丁重にお断りしたいところだが、アンとギルド・マスターに呼ばれた少女は、更に食い下がる。


「前に村をワイバーンが襲った時……アタイの幼なじみがワイバーンに攫われちまったんだよ!。また、村の誰かがワイバーンの餌になっちまうなんて、アタイは嫌だよ!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ