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目指せ!一騎当千 ~ぼっち自衛官の異世界奮戦記~  作者: 舳江爽快
第五.五章 帝国(序) 編
232/237

帝国より……

 CH-47JA チヌークの操縦席から、自由交易都市スベニの東側を流れる大河が見えてくる。

 スベニの東門に直結している港には、大型の帆船が二隻見えた。

 一隻は港湾都市イサドイベからの帆船。

 そしてもう一隻は純白の大型帆船で、マストにはガウシアン帝国の国旗が掲げられていた。

 その純白の船体は、イサドイベの帆船の二回りほども大きい。

 明らかに外洋を航行可能な船体だ。


「ナーク、港の荷役用の広場へ着陸してくれ」

「……了解。広場へ着陸する」

「アイスマン、こちらマーベリック。これよりチヌークは港へ着陸する。指揮者(コマンダー)ゴーレムは、そのまま船の上空にて待機してくれ。送れ」

『アイス了解。このまま上空にて監視態勢を続行します。送れ……ザッ』

「了解。何か有れば攻撃指示をするから、それまでは攻撃はするな。以上通信終了」


 ロックは俺の指示に従い少し高度を下げた状態で、ホバリング態勢を続行する。

 既に魔剣を右手に持ち、何かあれば直ぐに攻撃が行える態勢だ。

 飛行装置に搭乗しているミラも、レールガンを何時でも発射できる状態で待機する。

 指揮者ゴーレムと飛行装置の連携攻撃は強力だ。

 特にCH-47JA チヌークは攻撃力は皆無なので、ロック達に援護して貰う事が不可欠となる。


 ナークは、港の広場へCH-47JA チヌークをゆっくりと着陸させた。

 そして着陸と同時に後部のハッチを開く。

 後部ハッチが開くと同時に、サクラを筆頭に"九ノ一(くのいち)"達が直ぐさま外へ飛び出す。

 それに遅れをとらないように、アンとベルが後に続く。

 更にギルさん達"雛鳥(ひなどり)の巣"の三人も89式小銃を手にして走って行く。

 ギルさんの背中にはチェーンソーが背負ってあるのも見える。


「ナーク、マーガレット司教達とコロニの警護を頼む」

「……判った。任せて」

『ジングージ様、私に任せて置いて下さい。コロニ達には指一本振れさせません』

「フェン、頼んだよ」

『はい』


 ナークの防御魔法に加えて、神獣フェンリルに任せて置けばガウシアン帝国艦からの大砲による攻撃が有っても安心だ。

 俺も、チヌークの操縦席から港の広場へと降りて行く。

 すると直ぐに俺の元へ甲冑姿の女性警備兵が走り寄って来た。

 警備隊長のアマンダ隊長だ。


「ジングージ様、お呼び立てして申し訳ありませんでした」

「アマンダ隊長、遅くなりました。状況を教えて下さい」

「はい、先ずはイサドイベからの使者の方々とお話下さい」

「了解です。イサドイベからは何方が?」

「こちらへどうぞ」


 アマンダ隊長が港の警備隊宿舎の方へと歩いて行く。

 俺は彼女の後に続く。

 もちろん、ガウシアン帝国艦への注意は怠らない。

 既にロックが放った偵察者(スカウト)ゴーレムによって、純白のガウシアン帝国艦にも複数の大砲が装備されている事が報告されている。

 船体の側面にある砲撃用の扉が、何時開かれても対応できるように行動しているのだ。


 純白のガウシアン帝国艦は(いかり)を下ろした状態で岸壁に係留されている。

 そして、係留されている岸壁にはスベニの警備兵が大勢集結していた。

 そこへ"自衛隊(ジエータイ)"と"九ノ一"、"雛鳥の巣"の面々が駆け付ける。

 警備隊員の中には、マスケットを持った隊員も見えた。

 だがガウシアン帝国艦の甲板に見えるガウシアン帝国兵の中には、マスケットを構えている兵は見えない。

 この至近距離での銃撃戦となれば、大勢の死傷者が出るのは間違いないだろう。

 原始的な銃であるマスケットであっても、銃撃戦だけは避けなければならない。


 アマンダ隊長に先導され、俺は港にある警備隊の宿舎へと入る。

 そして宿舎に入ると、そこには俺の良く知る人物が出迎えてくれた。


「ジングージ卿、ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです」

「えっ、ローランさん?! どうして此処へ?」

「ジングージ様、お久しゅうございます」

「レティシア姫……。何故、姫がスベニへ?」

「はい、父、シムカスからの使者として参りました。ローランには、私の警護と船の艦長を頼みました」

「そう言う訳でございます。ジングージ卿にお会いできる機会を逃すなど、それがしには出来ませんからな。はははは……」

「それは、あのガウシアン帝国艦がスベニへ来た理由でしょうか?」

「そうでございます。あの船にはガウシアン帝国からの使者が乗っております。そして使者の方はジングージ様へお目通りしたいとの事なのです」

「ガウシアン帝国からの使者ですか。何故、自分に合いに来られたのでしょうか?」

「それは、使者の方から直接お聞きになられてください。今回の事は、父シムカス伯爵、そして城塞都市フェアウェイ大公の意向でもございます」

「フェアウェイ大公もですか? 一体、どんな事なのでしょうか?」


 その時、警備隊宿舎のドアが開く。

 そして息を切らせたエリザベス姫が飛び込んで来た。


「はっ、はっ……。ジングージ様、お帰りなさいませ。はぁはぁ……失礼しました。屋敷から急いで来たので……。誰か、水を下さい」

「エリザ……リズさん、一体、どうされたのですか? いや、水です。お飲み下さい」


 俺は腰につけている水筒を外してエリザベス姫へ渡す。

 俺からの水筒をエリザベス姫は両手で受け取る。

 直ぐ後ろに付いてきたメイドの一人がコップをエリザベス姫に渡すと、エリザベス姫はそのコップへ水筒から水を注ぎ、ごくごくと飲み干す。


「申し訳ございませんでした……。はしたない姿をお見せしましたわ」

「いや、ゆっくり飲んで下さい」

「もう大丈夫ですわ。父バンカーとフェアウェイ大公様から指示があったので急いで参りましたわ」

「えっ、バンカー公爵とフェアウェイ大公閣下からですか?」

「そうです。鳥人便にて先ほど文が参りました。今回のガウシアン帝国からの使者の対応は、全てジングージ様に対応を一任するとの事ですわ」

「ガウシアン帝国との対応を自分に任せると……」

「はい、それはシムカス伯爵も同様です。ただし、親族である私やレティシア姫が同席してと言う条件付きです」

「そうでございます。エリザベス姫、お久しぶりでございます」

「レティシア姫も、お元気そうで何よりですわ。イサドイベからの長旅、お疲れ様でございましたわ」

「またエリザベス姫にお会いでき、とても嬉しゅうございます」

「私もですわ、レティシア姫」


 盲目の姫君、レティシア姫にエリザベス姫は歩み寄り、そして二人の姫君は手を取り合った。

 歳の近い二人の姫君は、とても仲が良かった。

 二人は以前このスベニに滞在中、親睦を深め久々に再会を果たしたのだ。

 そんな二人の姫君の再会を中断するかのように、ハンディー・トランシーバーへ通信が入る。


『ジョー、聞こえるか? ギルだ。どうぞ……ザッ』

「ギルさん、聞こえます。どうぞ」

『ガウシアン帝国艦の乗降扉が開いて乗員が下船したぜ。どうぞ……ザッ』

「了解です。兵士は武装していますか? どうぞ」

『いいや、剣は下げているがマスケットは持っていねぇ。どうぞ……ザッ』

「了解です。ガウシアン帝国からの使者だと思いますので、警備隊宿舎まで案内してもらえますか? どうぞ」

『判った。それじゃ俺達が案内して行く。どうぞ……ザッ』

「お願いします。注意は怠らないで下さいね。よろしくです。どうぞ」

『ああ、任せておけ。以上だ……ザッ』


 ガウシアン帝国艦も動きを見せた。

 マスケットを持っていないと言う事は、戦闘を意識しては居ないという事だろう。

 とは言え、油断は出来ない。

 至近距離であれば剣による攻撃も可能なのだから。

 念の為に防衛体制は取っておくべきだろう。

 俺はハンディー・トランシーバーでナークへ連絡をする。


「ナーク、聞こえるか? どうぞ」

『……こちらナーク。どうぞ……ザッ』

「悪いが、そちらの防衛はフェンに任せて、警備隊宿舎まで来てくれないか? どうぞ」

『……了解。そちらへ行く。……ザッ』

「頼む。以上」


 ナークが来れば、二人の姫君にガウシアン帝国兵が危害を加える事は出来ない。

 念には念を入れておかないと、相手がガウシアン帝国なのだから油断大敵だ。

 そして少しすると警備隊宿舎へナークが入って来る。

 そして殆ど同時にアンやベルも宿舎へ入って来た。


「ジョー兄い、何だか凄い事になりそうだよ」

「何でだい?」

「ガウシアン帝国から降りてきた兵士が警護しているのは、女の人なのでしゅ」

「……使者は女性だったのか」


 どうやらガウシアン帝国からの使者というのは女性だったようだ。


「ジングージ様、私は既にガウシアン帝国の使者様とはお会いしております」

「レティシア姫はお会いしていたのですか。どんな方でしたか?」

「姿は……ローラン、貴方からお話してください」

「はっ、姫様。ジングージ卿、帝国からの使者はガウシアン帝国の第一皇女様です」

「第一皇女……。それってガウシアン帝国の姫様って事ですよね?」

「はい、そのとおりでございます。それがしも始めて拝見いたしましたが、美しい姫様でございます」

「……そうですか。いや、美しいとかそう言う事ではなく、目的とかは?」

「それは、ジングージ卿へ直接、お話したいとの事でございました。後、従者の一人は、ジングージ卿もご存じのリーマン・フーリエ艦長です」

「フーリエ艦長でしたか……無事にガウシアン帝国へ帰国したのですね。そうですか……」


 リーマン・フーリエ艦長は、イサドイベで捕虜となっていたが、その後解放されてガウシアン帝国へと帰還した。

 恐らく再びイサドイベ、そしてスベニへの航海を経験者であるフーリエ艦長が行ったのだろう。

 加えて、俺やイサドイベの警備隊との面識もあるから使者としては一石二鳥だ。

 そして、ガウシアン帝国からの使者達がギルさんたち"雛鳥の巣"の面々に案内され警備隊宿舎へと到着した。


「ジョー、ガウシアン帝国からの使者を連れてきたぜ」

「有り難うございます。ご案内してください」


 ギルさん達に案内され、ガウシアン帝国の使者団が、警備隊宿舎へと入って来る。

 使者団の先頭は、見知った顔のフーリエ艦長。


「ジングージ卿、ご無沙汰しております。その節は申し訳ございませんでした。改めてお詫び、そして生かして帰国させて頂いたお礼を申し上げます」

「フーリエ艦長、また会う事になるとは思っていませんでした」

「はっ、今回はガウシアン帝国とイサドイベ、スベニ、そしてタースとの間で不可侵条約を締結させていただきたく、その命を皇帝陛下より受け参りました。なにとぞ、宜しくお願いを致します」

「不可侵条約の締結ですか……。それは願っても無いことですが……成る程、それでイサドイベとタースの姫君を同席させるように依頼したのですか?」

「はい、本当に申し訳無く思いますが……。是非、ジングージ卿に受託いただきたく、皇帝陛下のお気持ちをご理解いただきたいと存じます」

「判りました。自分としては、不可侵条約の締結には、全く依存はありません。イサドイベのシムカス伯爵も同じ考えなのですよね? レティシア姫?」

「はい、ジングージ様。父からはガウシアン帝国からの申し出に異存は無いと承っております」

「フェアウェイ大公閣下も同様なのですか? リズ……エリザベス姫?」

「もちろんでございますわ、ジングージ様。不可侵条約の締結は、王国からも承諾を頂いたとフェアウェイ大公より聞いておりますわ」

「成る程それで、後はスベニの判断で良い訳ですね」

「ジョー、それは既にスベニも受託する事で決定されているぞ」


 警備隊の奥から、警備隊の大隊長ウィリアム大佐が現れてそう言う。

 その後ろには、商業ギルドのアントニオ会長、生産ギルドのテンダーのおっさんも居た。

 マーガレット司教はチヌークに乗ったままなので不在だが、緊急の事態だったのでギルドの会長達と警備隊の大隊長で決定したのだろう。


「そうですか、それは有り難い事です。フーリエ艦長、お聞きの通りです。イサドイベ、タース、そしてスベニはガウシアン帝国との不可侵条約に賛同して受託します」

「おお、有り難い……。姫様、帝国より遠くスベニまで来た甲斐がございましたぞ」


 フーリエ艦長が振り返りながらそう言うと、使者団の中央から一人の女性が進み出て来た。

 かなりの長身で、俺と同じくらいの身長が有りそうだ。

 肌はナークほどでは無いが、小麦色をしている。

 しかし、ナークと違い髪の色は黒では無く銀髪だ。

 顔には薄いベールをしており、眼は鮮やかな緑色をしている。

 女性は、俺の方へと歩み寄って来てから、顔にしていたベールを外し口を開く。


「勇者ジングージ様、お初にお目にかかります。妾はガウシアン帝国皇帝ガウスの娘、シエラ・ザード・ガウスと申します。十九歳と若輩ではございますが以後、末永くよしなにお願い申し上げます……旦那様」

「はあ、自分はジョー・ジングージです。初めまして……遠い国からようこそ。こちらこそ、以後、宜しくお願いをします……。いや、それより旦那様って、何なのですか?」

「父より命じられました。以後、ジョー様の伴侶としてお側へお仕えするようにと」

「「「「「はぁ?!」」」」」


 女性陣が一斉に声を上げる。

 いや、俺も一緒に同じ言葉を発していた。

 そしてエリザベス姫が声を荒げて言う。


「な、何を世迷い言を申しておるのですか、貴女は!」

「世迷い言? これは父ガウス皇帝の意思。自分の娘を敵対していた勇者様に差し出すのは、不可侵条約の証し。当然の事ですよ」

「な、な、何を……。そんな事は、私は許しません! ジングージ様の妻には、私がなるのです!」

「そうですか。しかし、そなたのような貧乳では、勇者様のお子がひもじい思いをしてしまいまよ」

「ひ、貧乳……」


 シエラ・ザード姫の放った言葉に、女性陣は一斉に自分の胸を見る。

 いや、アマンダ隊長とレティシア姫だけは別だ。

 確かに、シエラ・ザード姫の胸は凄い。

 その衣装も、大きな胸を誇示するように露出度が多い。

 ブラジャーだけの上半身に小さなチョッキを着ている。

 下半身は透けたハーレムパンツで、パンツが透けて見えておりとってもエロい格好だった。


 シエラ・ザード姫の指摘で、エリザベス姫はぷるぷると震え、その眼には涙が滲む。

 彼女の世話をするメイドがハンカチを差し出すとエリザベス姫はハンカチで涙を拭かず、ハンカチの端を咥えて、その怒りを表していた。

 はあ……、これは新しい試練なのだろうな。

 俺は、そんな思いを抱きながらも何も言えずに、ただただ女性陣の方を見る。

 アンとベルは、ああまたかと言う表情だ。

 ナークも呆れたような眼で俺を見ている。

 そしてエリザベス姫は怒りで顔を真っ赤にして、ハンカチを噛みながら俺を見つめている。


 そんな女性陣を全く意に介さず、シエラ・ザード姫は俺の方へと歩み寄って来た。

 そして、俺の腕へと自分の腕を絡ませ、その豊満な胸を俺の腕に押しつける。

 いや、それは柔らかくて……。


「ジョー様、ふつつか者ではございますが、末永くよしなにお願い申し上げます」






第六章 了






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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

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