新たなる隊員
「よーし、これから今日来ている者のランク書き替えを行うぞぉ。ジョーのジエータイからだぁ。みんな並んでくれぇ」
「はい、お願いします」
アルバートさんが、お馴染みの青い身分票表示板を机の上に置きながら何やら操作を始める。
通常の身分票表示だけなら身分票を置くだけで良いのだが、登録を行う場合には事前に操作が必要になると、以前アントニオさんに教えて貰った事がある。
「そんじゃ、ジョーからだ。身分票を出してくれぇ」
「はい」
「どうする? 今までの身分票に記録するかぁ? それとも教皇様から頂いたメダルにも記録するかぁ?」
「両方に登録は出来ますか?」
「ああ、できるぜ。普通はやらねぇが、ジョー達は特別だぁ」
「有り難うございます。それでは、お願いします」
首から外した認識票とスタリオン教皇から頂いた金のメダルをアルバートさんへ渡す。
アルバートさんは慣れた手つきで身分票表示板を操作する。
すると身分票表示版の上に置かれた二枚の自衛隊認識票と金メダルが青い光に包まれた。
「これで完了だぁ。それにしても金の聖騎士のメダルは初めて見るが凄いなぁ」
「そうなんですか?」
「当たりめぇだぁ。金のメダルは王族方や教皇様しか持ってねぇんだぞぉ。誰でも見られるもんじゃねぇからよぉ」
「はあ……」
「全くジョーは欲がねぇからなぁ。まぁ、それがお前の良い所だけどなぁ。そんじゃ、次だぁ」
アルバートさんから登録の終わった認識票と金メダルを受け取り再び首に掛ける。
ちなみに、身分票は二枚一組、認識票も二枚一組だが、スタリオン教皇からいただいた金メダルや銀メダルは一枚しか無い。
これにも理由があるらしいが詳しくは聞かなかった。
俺の次に登録するのは、パーティー"自衛隊"のもう一人のメタル・ランカー、サクラだ。
彼女は現在のランクがEランクなので、2ランクアップでCランクとなり今日から少佐殿だ。
サクラも頂いた銀メダルへの記録を行ってもらい、元々の銀貨と合わせて三枚を首へ掛けている。
続いてロックが並んでおり、更にアン、ベル、、ナーク、ミラの順だ。
ロックは現在レザー・ランカーのHランクなので4ランクアップだとメタル・ランカーになるのだ。
ただし、レザー・ランカーの2ランクアップはメタルランカーの1ランクアップ相当になるので、Fランクの少尉となる。
アン、ベル、、ナーク、ミラの四人は現在がレザー・ランカーのJランク。
それが4ランクアップでレザー・ランカーの最上位Gランクとなるのだ。
軍の階級で言えば下士官の最上位で准尉になる。
そして、パーティー"自衛隊"の最後の登録は新加入のコロニだ。
俺は再び自分の認識票を首から外してアルバートさんへ渡す。
アルバートさんが商業ギルドから委託された木札と、俺の認識票を表示板の上に置いてパーティー登録を行う。
コロニは嬉しそうに、その操作を机の上に顔だけ覗かせて見ている。
黒い尻尾が激しく左右に振られているので、凄く喜んでいるのが良く判るのが微笑ましい。
そしてコロニは、自らの首に掛けていたメダルをアルバートさんへ渡す。
「なんだ? えっ? 聖騎士の銅メダルだって?」
「教皇さまからコロニもらった」
コロニに変わってパサラがそう言う。
さらに俺からも説明をしておく事にする。
「それは、スタリオン教皇から特別にコロニが頂いた銅メダルです。特別に作って頂いたようなので、ご存じ無くて当然ですよ、アルバートさん」
「そ、そうだったのかぁ……。いやぁ、初めて見たから驚いたぜ。よし、コロニ。ちゃんとこの銅メダルにも登録しておいてやるからなぁ」
コロンは何度も微笑みながら頷いている。
スタリオン教皇から、この銅メダルを頂いた時と同様にとっても嬉しいのだ。
ところで、コロニの銅メダルには、どんな称号が記録されているのだろうか。
スタリオン教皇やマーガレット司教は笑っていただけで結局、俺には教えてくれなかったのだ。
「よし、よし……それじゃ銅メダルにも登録だぁ……。はあ? がははははは! こりゃ最高だぜ」
「どうしたんですか? はっ! もしや、コロニの称号ですか?」
「そうだ、ジョー。こりゃ、最高だぜ」
「どんな称号だったのですか? 教えて下さい」
「自分で見てみなぁ。納得の称号だからぁ」
「はい。失礼します……。ぷっ! あははは……確かにそうですね、これは……」
コロニの銅メダルに記録されていた称号は、なんと"勇者の愛娘"だった。
……思わず笑ってしまったが、俺は未だ未婚なのだが、既に子持ちとなった訳だ。
一瞬、身元が身分票表示で直ぐに判明してしまうので悪用されはしないかという不安が過ぎった。
しかし、身分票表示板は厳しく管理されているので、あまり心配しなくてもよいだろう。
むしろ、俺の関係者である事を誇示しておいた方が、むしろ安全だとアルバートさんやギルさんが言うので、そのとおりだと思った。
まあ、スタリオン教皇も同様の考えでコロニに、この聖騎士の銅メダルを与えて下さったのだろう。
ちなみに、コロニのランクはウッド・ランカーのNランクだ。
冒険者ギルドへのニュービー登録は、本来は十二歳からなので登録は商業ギルドとなっている。
パーティー"自衛隊"の登録が終わり、次はサクラ以外のパーティ"九ノ一"の面々の登録だが、今日は半数しか来ていない。
全員の登録が終わるのは、夜勤の勤務シフトが一巡するまで待つ必要があるだろう。
"九ノ一"達はレザー・ランカーでも元々ランクが比較的高かった。
そのために、4ランクアップによってメタルランカーへ昇格する者も居た。
Gランクだったユキとイズミは、Eランクへそれぞれアップしメタル・ランカーへ昇格。
ウメ、ツバメ、マユ、ホタル、ヒグラシ、ツキ、ハヤブサ、ヒタキはHランクだったのでロックと同じメタル・ランカーのFランクへ昇格だ。
唯一、Iランクだったモモは残念ながらメタル・ランカーへの昇格とはならず、Gランクへの昇格に留まった。
彼女はパーティー"九ノ一"の最年少、十四歳なので、それでもGランクは並外れているのだが。
パーティー"自衛隊"と"九ノ一"の登録が終わると、最後はパーティー"雛鳥の巣"の三人だ。
最初はギルさんが登録する。
「おめぇも、やっとBランクだなぁ」
「あぁ、兄貴。やっとだな……ははは」
そんな仲の良い兄弟のやりとりが聞こえてくる。
ギルさんも、当然ながらスタリオン教皇から頂いた聖騎士の銀メダルへもランク登録を書き込んでもらっていた。
続いて、ガレル君とハンナさんが登録を行っている。
ガレル君はHランクだったので、2ランクアップでメタル・ランカーのFランクへと上がった。
本当は3ランクアップが必要だったのだが、アルバートさんの一存で上げたようだ。
ハンナさんは、IランクだったのそのままGランクへと2ランク昇格。
パーティー"雛鳥の巣"の三人の登録が終わったので、この場に居る全員の登録が完了した。
後は仕事中の”九ノ一"達の登録を順次、非番の際に行うだけだ。
と、ギルさんが俺に近づいて来て言う。
「ジョー、折り入って頼みがある」
「なんでしょうか?」
「俺をパーティー・ジエータイへ入れてくれ」
「えぇー? ギルさんをですか?」
「そうだ。今まではジョーより俺のランクが上だったから、入りたくても入れなかった。だが、今日からはランキングが逆転したから問題なく俺も加入できる。そうだよな兄貴?」
「そうだ、ギル。ジョー、俺からも頼む。ギルを入れてやってくれ。そうすればガレルもハンナもお前達と一緒に冒険できるからよぉ」
成る程、パーティー加入にはそう言うランクによる制限もあったのか。
更にギルさんは今回のスタンピードの制圧の際、役に立てなかった事が悔しかったとも言う。
ギルさん達"雛鳥の巣"の三人とは、俺がこの異世界に来て初めて会って以来、殆どの冒険を一緒に経験してきている。
そして、ギルさんは俺にとっての信頼できる兄貴だ。
ガレル君とハンナさんも俺の弟、妹のようで彼らも俺を慕ってくれている。
こんな強力なメンバーの加入を断る理由は皆無だった。
「ギルさん、水臭いですよ。こちらの方から是非、加入をお願いします」
「おお、有りがてぇぜ、ジョー。ガレル、ハンナ良いな?」
「「もちろんだよリーダー」」
「ジョー兄貴、宜しく!」
「ジョー兄さん、よろしくねぇ~」
「こちらこそ、宜しく。ビシバシ鍛えるから、そのつもりでね」
「望む所だよ、ジョー兄貴」
「お手柔らかに~」
「ふははは……頼むぜ、ジョー」
ギルさんはアルバートさんへ再び身分票を渡し、俺も認識票を渡してパーティーへの加入登録を行う。
こうして、パーティー"自衛隊"には"九ノ一"に続いて"雛鳥の巣"の三人が、新たなメンバーとして加わる事になったのだった。




