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冒険者ギルド

本日二話目です。


 俺は、余計な知識までも口にしてしまった事を悔やんだが、既に後の祭りだ。

 ドワーフのテンダーさんは、俺の顔を疑惑の目で見つめている。

 他の三人は、訳が判らないのだろう、俺とテンダーさんの顔を交互に見ていた。

 その時、厨房のドアが開けられ可愛い声が聞こえる。


「お仕事中、申し訳ありましぇん。アントニオ様とジングージ様に、お客様でしゅ」

「ベル、構いませんよ。何方ですかな?」

「はい、冒険者のハンナ様でしゅ」

「ハンナ殿ですか、何用でしょうな?……構いません、こちらへお通しなさい」

「はい、アントニオ様」


 兎耳少女ベルさんの登場で、なんとか記憶喪失のミスを煙に巻けそうだ。ナイスだベルさん。

 そして、ハンナさんもタイミング良く訪問してくれた。

 しかし、アントニオさんに用事というのなら判るが、俺にも用事があるとは、一体どんな用事なのだろうか。

 少しして、冒険者のハンナさんが厨房へ入ってくる。


「アントニオさん、それとジョーの兄さん~、悪いけどリーダーが冒険者ギルドまで来てくれって~」

「ほお、ギルバート殿からですか。どのような用件か、ハンナさんはご存じかな?」

「良く判らないんだけどね。なんだかギルド・マスターと阿呆なCランク冒険者が喧嘩しちゃってさ~。そんで、リーダーがアントニオさんとジョー兄さんを呼んで来いってさ~」

「なるほど、もめ事ですか……判りました。参りましょう。宜しいですかなジングージ様?」

「はい、勿論、構いません。自分もご一緒します」

「全く、何をやっておるのじゃ、アルバートの馬鹿者が……儂も一緒に行ってやるぞい」

「ありがとう~、生産ギルド長まで来てくれるんだ~。じゃあ、一緒に行きましょう~」


 俺は、厨房を出る前にテンダーさんの弟子トマスさんへ、今日はここまでなので出来れば空き缶を持ち帰って、輪切りではなく縦方向で真っ二つに割ってみて欲しいと依頼をした。

 元の世界であれば、様々な金属を切り裂くカッターがあるが、この異世界では、どのような工具があるか知らないので、一応お願いだけはしてみる。


「そうすれば、筒と蓋の接合部分が判るでしょうから。缶詰の筒部分と蓋は溶接してないのですよ」

「判りました、やっておきます。……ジョーさん」


 俺たちは、ハンナさんに先導されて商業ギルドを後にし、中央広場のあるロータリーを時計回りに進み、半周した所で別の道を入る。

 15分ほど進むと商業ギルドによく似た建物があり、そこへハンナさんに連れられて、建物の正面玄関らしき扉を潜った。

 どうやら、此処が冒険者ギルドらしい。


 冒険者ギルドに入ると、そこは商業ギルドと似たような受付カウンターが多数あり、受付には受付嬢達が並んで居た。

 しかし、彼女達は俺たちに気がつくこともなく、冒険者ギルドの受付ロビーの奥を凝視していたのだった。

 そこには、大勢の冒険者で人垣が出来ており、何やらわめき声も聞こえてくる。


「リーダー!、アントニオさんとジョー兄さん、連れてきたよ~。後、生産ギルド長も来たよ~」

「おう、ハンナご苦労だったぜ。アントニオさん、ジョー、急に呼び出してすまねえな。テンダーさんまで付いてきたのかよ」

「ふん、余計なお世話じゃ。儂の勝手じゃろうが」

「いや、有り難いぜテンダーさん。ギルド長が揃えば、あの鉄壁(・・)も納得するだろうぜ。皆こっちへ来てくれ」


 ギルバートさんがそう言うと、冒険者達が作っていた人垣が、まるでモーゼのエジプト脱出時の海の様に割れる。

 人垣の奥では、大柄の冒険者らしき人物が二人、大声を上げて言い合っていた。

 一人は、ギルバートさんによく似た風情の男性で、相対する男性は、更に大男の筋骨隆々とした、まるでゴリラの様な男性だった。


「兄貴、商業ギルドのアントニオさんと、喧嘩の元になったジョーが来たぜ。あぁ、ついでに生産ギルド長も来たぜ」

「ついでは余計じゃ!で、何のもめ事じゃい、アルバート?」

「あぁ、来てくれたか。実はな、この阿呆……ゴライアスが、一人でオーガを三匹も殺せるもんかと、食ってかかって来おってなぁ。埒が明かねぇんで、当事者に聞くのが一番ってことで、呼び出しさせてもらったって訳さ。すまねぇなぁアントニオさん、テンダーさんにまで来てもらっちまってよぉ」

「左様でしたか。なるほど確かにその場に居た者でないと、にわかには信じられんでしょうな。ご無沙汰しておりますな、ゴライアス殿。しかし、アルバート殿やギルバート殿の言うことは真実ですぞ」

「アントニオさんまで、俺を誑かすのか!そんな、ほら話を信じられるか!ギルド長三人で俺をコケにするのかよ!」


 どうやら、喧嘩の原因は、俺らしかった。

 オーガ一匹を仕留めるのにも、普通の魔術師ならば4~5人の火炎魔法使いが必要だと、ギルバートさんが言っていたのを思い出す。

 それを、一人で三匹のオーガを片付けたなんて話し、ランクの高い冒険者なら信じられないのは、当然の事だろう。

 それにしても、アルバートさんって冒険者ギルドのマスターで、ギルバートさんは、兄貴と呼んでいた。

 二人は兄弟だったのか……。確かに似ている。


「まぁ、落ち着けよ、ゴライアス。で、そっちがジョー・ジングージだな。俺はギルバートの兄で、冒険者ギルドのマスターをしているアルバートだ。すまんなぁ、わざわざ呼び出しちまってよぉ」

「はい、自分がジョー・ジングージです。ギルバートさんには、お世話になりました」


 俺は、冒険者ギルドのマスター、アルバートさんの差し出した手を握り返して握手をする。

 それを見ていたゴライアスさんは、怒りが全く収まっていない模様で、真っ赤な顔ををして俺を睨みつけると、大きな声で、こう言った。


「貴様が、一人でオーガ三匹を仕留めた等と大嘘をほざいている野郎か!このCランク冒険者、鉄壁のゴライアス様でさえ、一匹のオーガを仕留める事が出来ないのに、貴様のごとき若造に出来るはずが無い!貴様、俺様と勝負しろ!」






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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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