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サンダー・ドラゴン

 俺は、直ぐに11式短距離地対空誘導弾の射撃管制装置-搭載車両へ走って行き、レーダー・スクリーンの表示を確認した。

 ディスプレイに映し出されている反応からは、かなり巨大な飛行物体が真北から飛行して来ているのが判る。

 電波の反射から、飛行物体の大凡の大きさも把握できるのだが、この反応はジャンボ旅客機並みの大きさは優に有るだろう。

 このレーダー反応が、果たして雷竜(サンダー・ドラゴン)なのか、はたまた別の飛行物体なのかまでは、レーダー反応の表示だけでは判別が出来ない。

 しかし、ケサラやパサラの危険が近づいていると言う警告は、明らかに敵意ある者が接近している事は間違いないのだが、この飛行物体が危険な存在かどうかは判別不能だ。

 とその時、未だ頭に被っていた飛行装置のヘルメットから、声が聞こえた。


『神宮司 丈よ。雷竜(サンダー・ドラゴン)が接近している。我はセイレーンを眠りから起こし迎撃態勢を取らせる。お前達も直ちに迎撃行動を開始せよ』

『人工頭脳か。雷竜は、真北から接近してくる巨大な飛行物体か?』

『そうだ。お前達が都市城壁内側の領域へ侵入する場合は、装着している兜を外すな。それは、セイレーンの歌声対策機能を合わせ持っている』

『了解だ。歌声対策のヘルメットを装着していない場合は、俺達も影響を受けてしまうのか?』

『お前は、神の加護を持っているので、恐らく大丈夫だろう。魔族の娘も同様だ。しかし、指揮者(コマンダー)ゴーレムの操縦を行う兄妹は、間違いなく影響を受ける』

『判った。忠告を感謝する』

『健闘を期待している。以上だ』


 悩んでいたセイレーンの歌声による精神攻撃対策が、思わぬ形で手に入った。

 しかも、"女神様の加護"によって、俺の場合はセイレーンの歌声をキャンセル出来る様だし、ナークも謎の神様の加護が有るので、同じだと言う。

 飛行装置用の飛行用ヘルメットは、ロックやミラとの連絡用途にも欠かせないので、これは非常に助かる。

 俺は、直ちに襲来してきたサンダー・ドラゴンの迎撃体勢を整えた。


「召喚! AH-64D アパッチ・ロングボウ!」

「ナーク、直ちにアパッチ・ロングボウへ搭乗して、エンジンを始動してくれ。飛行装置のヘルメットは、そのまま外すな」

「……了解。発進準備をする」

「ロック、ミラ、二人は指揮者ゴーレムへ搭乗してくれ。レールガンの弾倉(マガジン)は、今の弾倉を外して、100発の弾倉に変えてくれ。鋼鉄製の弾倉と神鉄製の弾倉、一個ずつだ。ヘルメットは、絶対に脱ぐなよ」

「了解です。ミラ、また乗ってくれ」

「うん、お兄ちゃん。私、頑張るから!」


 ナークは、召喚したAH-64D アパッチ・ロングボウの後部座席、即ちメイン・パイロットの操縦席へ乗り込み、エンジンを始動した。

 そして直ぐに、キーンと言うタービン・ジェット・エンジンの回転音が聞こえ始める

 ロックとミラも、降りたばかりだったが、再び指揮者ゴーレムへと乗り込んで行く。

 俺は、回収してきたレールガン用の弾倉を、全て無限収納(インベントリー)から取り出して地面に置いた。


「アン、ベル。サンダー・ドラゴンの襲来だ! 直ちに16式機動戦闘車へ搭乗して、迎撃準備だ。ドラゴンは、真北から真っ直ぐ古代遺跡都市を目指して高速で接近してくる。」

「判ったよ、ジョー兄い。ベルちゃん、行くよ!」

「うん、アンちゃん。私も頑張りましゅ!」

「サクラさん、行きなり実戦だけど、センチュリオン戦車へ搭乗してくれ。搭乗員の人選は任せる。16式機動戦闘車の搭乗員の人選も任せて良いか?」

「はい、主様。お任せ下さいまし!」


 俺は、再び11式短距離地対空誘導弾の射撃管制装置に装備されているレーダー・スクリーンの表示を見る。

 サンダー・ドラゴンの飛行速度は、音速を超えると想像していたのだが意外と遅い様で、古代遺跡都市までの距離は30Km程の距離が未だある。

 それでもサンダー・ドラゴンの飛行速度は、時速500Km以上はあるから、あっと言う間に古代遺跡都市へ飛来してしまうだろう。

 俺は、ハンディー・トランシーバーのマイクを濁り、PTTプッシュ・ツー・トークボタンを押して通話を行った。


『ローラン隊長、聞こえますか? ジョーです。……どうぞ』

『おお、ジングージ卿。良く聞こえますぞ。えっと、どうぞ……ザッ』

『至急、古代遺跡都市から、全員避難をする様に指示してください。雷竜が接近しています! どうぞ』

『なんですと! いや、畏まりました。直ちに、シラリア会長へも伝えて、入場者の避難誘導を開始いたしますぞ。どうぞ……ザッ』

『了解です。急いで下さい。時間が有りません。セイレーン達も起きだして雷竜から古代遺跡都市を守るために活動を開始しました。どうぞ』

『な、なんですと。セイレーンが昼間なのに……判り申した。それがしも、直ちに行動いたしますぞ! どうぞ……ザッ』

『お願いします。以上、通信終了』


 よし、これで迎撃体勢と、避難の連絡は済んだ。

 古代遺跡都市へ近づく前に、此処は時間稼ぎも含めて、11式短距離地対空誘導弾を試して見るしか無い。

 俺は、発射装置を操作して、飛行物体へ照準を合わせるために、サンダー・ドラゴンへロックオン操作を行う。

 直ぐに、発射装置はターゲットへのロックオンが完了したステータスを示す。

 躊躇(ちゅうちょ)している時間は、全く無いので俺は、直ちに地対空ミサイルの発射ボタンを押した。


「11式短距離地対空誘導弾、1番発射!」


 11式短距離地対空誘導弾の誘導弾発射装置-搭載車両のミサイル・ランチャーから、一発の地対空ミサイルが発射され、大空へ舞い上がって行く。


「続けて、4番を発射!」


 誘導弾発射装置のランチャーから、二発目の地対空ミサイルが、再び発射される。

 一発目をサンダー・ドラゴンが回避した際、二発目の回避高度が間に合わなければと言う考えから、あえて時差攻撃を行う。

 レーダー・スクリーンには、発射された地対空ミサイル二発が、一直線にサンダー・ドラゴンの反応に向かって飛行して行く輝点が映し出されている。

 地対空ミサイルで、サンダー・ドラゴンを撃墜出来れば、それに超した事は無いし、古代遺跡都市への襲撃を諦めて撤退してくれても良いのだ。


 俺は、じっと、レーダー・スクリーンのディスプレイを見つめ続けた。

 そして、一発目の地対空ミサイルが、ターゲットのサンダー・ドラゴンへ到達した。

 しかし、サンダー・ドラゴンと思われる巨大な飛行物体は、全く速度を落とす事なく何事も無かった様に飛行を続けている。

 くそっ、全くダメージを受けていないのか。

 直ぐに、二発目の地対空ミサイルもターゲットのサンダー・ドラゴンへ命中する。


 すると、今度はターゲットの飛行速度が、更に高速へ変わってしまった。

 しかも、急速に高度を降下させている。

 ひょっとしたら、翼を損傷したのかもしれない。

 淡い期待を抱きながら、俺は直ぐに第二次防衛行動を行う決断をした。

 11式短距離地対空誘導弾の残弾は、残り二発だがサンダー・ドラゴンに対して有効な攻撃なのかが判断出来ない以上、これ以上の地対空ミサイル攻撃は行わずに、ミサイルを温存して置いた方が良いと判断したのだ。


「全員、雷竜の襲来に備えろ。16式機動戦闘車やセンチュリオンに搭乗しない者は、96式装輪装甲車で待機だ。コロニちゃんとパサラもな」

「「「「「はい! 主様」」」」」


 コロニちゃんは、何度も頷いているし、パサラも「わかったー」と言っている。

 合わせて、96式装輪装甲車の中には、対戦車ロケット砲のパンツァーファウスト3を追加で召喚して置く。

 89式小銃や、06式小銃擲弾(てきだん)では、ワイバーン相手なら十分な攻撃力を持っているが、相手がドラゴンでは殆ど効果は見込めないだろう。

 余程の至近距離で、相手の弱点である目などを狙えば、多少は効果があるだろうが、やはり破壊力の有る火器の方が効果的だ。

 しかし、至近距離での破壊力がある火器の仕様は、自らの危険も伴ってしまうので、使用には十分注意する必要がある。


 俺は、既にナークがエンジンを始動し、十分な暖機運転が終わっているAH-64D アパッチ・ロングボウのガンナー用の前席へと乗り込み、AGM-114 ヘルファイア・ミサイルを召喚する。

 今回の出撃では、破壊力を重視して、ハイドラ70を19発装備しているM261ロケット弾ポッドは、出番無しだ。

 AH-64Dの両スタブウィングに装着した、AGM-114 ヘルファイア・ミサイルは合計で16発。

 M230機関砲、チェーンガンでは、恐らくサンダー・ドラゴンの目を狙わない限り、有効な攻撃とはならないだろうし、至近距離まで接近しないと効果は望めないので、ヘルファイア・ミサイルだけが頼りだ。


「AH-64D アパッチ・ロングボウ、発進!」

「……離陸する」

『指揮者ゴーレムも離陸します』

『ジングージ様、電磁砲(レールガン)の弾倉は、お兄ちゃんへ神鉄製弾丸。私の翼の電磁砲へ鋼鉄製を装備しました』

『ロック、ミラ、了解した。これより、AH-64Dのロングボウ・レーダーを起動する。C4Iシステムを通じて、情報を共有してくれ』

『了解しました』


 さあ、AH-64D アパッチ・ロングボウと飛行装置を装着した指揮者ゴーレムによる、たった二機だけの編隊だが、サンダー・ドラゴンとの空中戦の開始だ。







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舳江爽快

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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

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