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対策会議

 古代遺跡都市を後にした俺達は、カタンの町まで戻り警備隊宿舎のローラン隊長を訪ねた。

 同時に、冒険者ギルドへ使いを出して、ギルド・マスターのシラリアさんを呼んで来てもらう様に頼む。

 使いには、"九ノ一"のウメさんに行って貰う事にすると、コロニちゃんも行くと言うので、一緒に行って貰う事にする。

 もちろん、コロニちゃんの契約妖精パサラも一緒だ。

 今日の探索では、あまりコロニちゃんにガイドの仕事をやって貰えなかったので、仕事がしたかったのだろう。

 幼いとは言え、ちゃんと仕事をしようとする心構えが嬉しい。


「ジングージ卿、今日は古代遺跡都市の探索には、行かれなかったのですかな?」

「ローラン隊長、お忙しい所に失礼します。探索は朝から行っていたのですが、緊急事態が発生したので、戻って来た次第です」

「緊急事態ですと? それは、どの様な事でしょうか?」

「はい、今、冒険者ギルドへシラリアさんに来てもらう様に使いを出しましたので、シラリアさんがいらっしゃったら、お話させて頂きます」

「そうですか、ジングージ卿が緊急事態と仰るのであれば、それは緊急案件なのでしょう。では、会議室の方へ参りましょう」

「はい、恐れ入りますが、宜しくお願いします」

「おい、冒険者ギルドのシラリア殿が参ったら、会議室までお連れしろ」

「はっ!」

「それでは、皆様参りましょう」


 俺達は、ローランさんの案内で、警備隊宿舎の会議室まで行く。

 会議室と行っても、それ程大きな部屋では無く、大型のテーブルが一つだけ置かれており、その周りに椅子が用意されているだけだ。

 全員が座ると、椅子も足らなくなる数しか無かったのだが、壁際にはベンチ型の椅子も設置されていたので、サクラさん以外の"九ノ一"には、そこへ座って貰う。

 俺達が椅子に腰掛けると、女性の警備兵が、お茶を運んで来てくれた。

 ローランさんが「どうぞ、喉を潤してくだされ」と勧めてくれたでの、有り難く頂くことにする。


 俺達が、お茶を頂いていると、会議室にシラリアさんが入室して来た。

 その後を、ウメさんとコロニちゃんが着いてくる。

 もちろん、パサラはコロニちゃんの頭の上に、ちゃっかりと座っていた。

 ピンと立った黒い狼耳の間に、純白の妖精がちょこんと座っている姿は、なかなか絵になっている。


「ジングージ殿、一体何が起こったのでしょうか?」

「シラリアさん、お忙しい所を、お呼びだてして申し訳ありません。実は、古代遺跡都市で大変な事を知ってしまったので、その報告と対策をお話したくて、お二人にご相談したかったのです」

「「大変な事とは?」」

「その前に、シラリアさんに確認して置きたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」

「私にですか? 何でしょうか?」

「コロニちゃんの父親、ケミンさんの事です。古代遺跡都市でケミンさんをエリーンさんが発見した当日、或いは前日に激しい落雷が、古代遺跡都市に落ちませんでしたか?」

「ああ、はっきり覚えております。深夜の事でしたが突然、激しい風が吹き荒れて、何度も古代遺跡都市へ落雷しました。この辺りでは落雷は珍しので、翌朝にエリーン達が調べに行きケミンを発見したのです」

「やはり、そうでしたか。その暴風と落雷は、雷竜(サンダー・ドラゴン)の仕業です」

「「何ですと!!」」


 俺は、生命体複写魔法陣の事と雷竜の事、そしてセイレーンの事を二人に話した。

 人工頭脳の事は、取り敢えず伏せて置く事にしたが、それを二人が追求して来る様な事は無かったので、問題は無いだろう。

 そして、雷竜の来襲する周期が12年周期で有る事も伝えると、シラリアさんは、納得した様に頷く。


「確かに……母や祖母から、12年おきに激しい落雷と強い風が吹くので、その時には古代遺跡都市に近づいてはならないと教えられました」

「そうですか、そして今年が、前回の雷竜の来襲から数えて、12年目なのです」

「ジングージ殿の仰る通りです。私も、すっかり忘れておりましたが、あの落雷と強い風が、まさかドラゴンの来襲とは……」

「前回は、夜間だった様ですが、それ以前も夜間だったのでしょうか?」

「いえ、母から効いた話では、昼間、雨も降っていないのに、とても強い風が吹いて来て、落雷があったとか。古代遺跡にだけ落ちるので、探索者や冒険者は全員が避難したとか。そうだ、思い出しました! 昼間なのに、何故かセイレーン達が飛び回ったので、緊急避難をしたのだそうです」

「やはり、そうでしたか。となると、雷竜の警戒は、夜だけと言う訳にも行きませんね」

「しかし、ドラゴンとは……、これまで、誰も古代遺跡都市でドラゴンを目撃したと言う話しを聞いた事が無いのですが、それはどう言う事なのでしょう?」

「判りません。姿を隠す(すべ)を持っているのかもしれません。となると、更に厄介な相手ですね」

「それがし、そんな姿を消す魔法などと言うものは聞いた事がございませんぞ」

「私も姿を隠す魔法とは、初耳です」

「有りますよ。サクラさん、頼む」

「はい、主様」


 サクラさんは、返事をすると直ぐに幻術を発動した。

 椅子に座って居たサクラさんの姿が一瞬で、俺達の目の前から見えなくなる。

 そして、テーブルの反対側へ座っていたローランさんとシラリアさんの間で、その姿を現した。


「なんと! この様な魔法をサクラ殿がお使いになるとは……」

「サクラ殿、貴女は獣人族なのに、魔法をお使いになるのですか?」

「いいえ、これは魔法では無く幻術でございます。私めと同じ術を、ドラゴンが使えても決して不思議ではございませぬ」

「幻術……。実際に消える訳では無く、消えている様に見える術ですか?」

「左様でございます」


 サクラさんは、今度は狐耳と尻尾だけを消して、人族の姿となり自分の席へと戻って行く。


「私には見えていたのです」

「わたしもみえる」


 ケサラとパサラの妖精コンビが、そう言った。


「なるほど、ケサラとパサラには、サクラさんの幻術が効かないのか」

「ジングージ殿、先ほどから気になっていたのですが、その妖精達は?」

「ああ、昨夜シラリアさんが帰った後、この妖精達と仲良くなりましてね。自分とコロニちゃんが、契約したのですよ」

「なんと! 妖精と契約を……。コロニまでもですか?」

「はい、なんか、好かれちゃった様です。はははは・・・」

「ジングージ卿、シラリア殿、妖精と言うのは、何なのでしょうか?」

「あっ、ローラン隊長には見えませんか。ケサラ、実体化してくれ」

「はいです」

「なんと! これが妖精ですか。それがし、初めて見ましたぞ!」


 少し間を置き、パサラも実体化する。

 コロニちゃんが念話で、パサラへ実体化する様に伝えたのだろう。

 しかし、これで雷竜が姿を消していても、サクラさんと同じ幻術であれば、妖精達の視力を借りれば、何とか攻撃が出来そうだ。

 加えて、ケサラとパサラや妖精族の持つ危険察知能力で、雷竜の接近も予測できるだろう。

 全く別の方法で姿を消している場合も考えられるが、透明になる魔法は無いみたいなので、妖精達と同じ様に見えないのであれば、"女神様の祝福"を持っていれば、俺達にも見えるかもしれない。

 俺は、ローラン隊長とシラリアさんへ、雷竜の来襲に備えての警備体制や避難態勢などを、お願いした。

 二人とも快く、その準備を行ってくれると約束してくれたので、少なくともカタンの町への被害は最小限で済みそうだ。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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