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謎の魔法陣

 全く予期しなかった妖精達との遭遇、更に妖精との契約というハプニングも有ったが、有意義な一日が終わる。

 オークの討伐なども有ったが、特に危険な事に遭遇した訳でも無かったので、良い一日だったと言えるだろう。

 問題は、地下空間の探索において、セイレーンとの戦闘が発生した場合、どうやってセイレーンの鳴き声による攻撃を防ぎ、そして反撃をするかだ。

 昼間の内に、巣穴を先制攻撃してしまうと言う少々荒っぽいやり方は、やはりシラリアさんからも「考えさせて下さい」と、簡単には了承を得られなかった。

 魔物の生態バランスが崩れるてしまう懸念もそうだし、セイレーン達はカタンの町を襲う事が無いという事から、安易に先制攻撃も出来ないのは、俺にも良く判る。

 取り敢えずは、地下空間で遭遇した場合には、躊躇無く攻撃をする事だけは伝えて、その場合はセイレーンへの攻撃も容認して貰った。


 セイレーン対策は、結論が出ないまま全員の意見なども出尽くしたので、今夜は此処までとして就寝する事にする。

 俺とロックは、男性用のテントへ行き、早々にベッドへ潜り込もうとすると、俺の肩にケサラが止まって言う。


「ジョーさま、わたしは何処で休めばよいのですか?」

「ああ、一緒のベッドで寝ると、俺が寝返りをして潰してしまう危険性があるから、何処か別の所の方が良いだろうね。女性陣のテントへ行って寝る方が良いかも」

「それでは、パサラと一緒に休ませて貰うのです」

「うん、それが良いね。コロニちゃんと一緒のベッドも、寝返りで潰される危険が有りそうだから、適当な場所で寝て欲しい。……例えば、コロニちゃんが脱いだエプロンのポケットの中とか」

「それは良い案なのです。それでは、そうさせて頂くのです。お休みなさいです」

「はい、お休みなさい。また明日ね」

「ぉ休みなさぃ」

「はいです。ロックさまも、お休みなさいです」


 挨拶を済ますと、ケサラはコロニちゃんとパサラが居る女性用の寝室用テントへと飛んでいった。

 小さな妖精と言えど、一応は女性なので一緒のベッドで寝ると言うのは抵抗があるし、本当に寝返りをうって、潰してしまうのが怖かった。

 子供の頃に、子犬と一緒に寝た事があるのだが、夜中に子犬の悲鳴に近い「キャンッ!」という鳴き声で目が覚め、身体の下で子犬が藻掻いて居たのを思い出したのだ。

 まあ、実体化を解いてから寝てくれれば、物理的に潰れてしまう事も無いと思うのだが、妖精の睡眠時の生態も全く俺は知らないので、その辺りもケサラから良く聞いて置く必要があるだろう。


 ■ ■ ■ ■ ■


 翌朝、心地よい目覚めでベッドから抜け出て、身支度を調えてからテントの外へ出る。

 既に、日は昇っており早起きの"九ノ一"達やベルが、朝食の準備をしており、その中に混じってコロニちゃんも、手伝いをしていた。

 そして、コロニちゃんの周囲を、ケサラとパサラが飛び回っており、なんだかとても良い雰囲気だ。

 俺は、水タンクの側まで行き、冷たい水で顔を洗い歯を磨く。

 さて、今日の古代遺跡都市の探索は、何処を探索してみようか。


 ロックは、俺よりも早起きなので、既に身支度も調えて、妹のミラと話しをしていた。

 以前、ロックから聞いた話では、指揮者(コマンダー)ゴーレムを発見した場所は、地下空間だったのだが、その地下空間には他に何も無かったと言う、

 なので、そこの探索は後回しにして、今日はコロニちゃんの亡くなった母親、エリーンさんの残してくれた地図にあった、別の印の場所を探索してみるか。

 幸いにも、その印のある場所は、セイレーン達の巣がある古代遺跡都市の大通りからも大分離れているので、地下空間の探索を行う場合でも、セイレーンと遭遇する可能性は低いだろう。


 朝食を取りながら、俺は今日の探索の目標などを皆に話す。

 皆からは、特に異論は無く、俺の提案が受け入れられた。

 探索メンバーは、昨日のメンバーに加えてアンと"九ノ一"達も半数のメンバーが参加する事になる。

 残りの"九ノ一"達は、射撃の練習を宿営地に残り行う事になった。

 "九ノ一"から探索へ参加するメンバーは、サクラさん、ウメさん、マユさん、ヒグラシさん、ハヤブサさん、そしてヒタキさんと、全員が獣人族だ。

 それは、未知の危険や周囲の感知する五感に優れているので、それをサクラさんが重視したと言う。


 むろん、体力なども獣人の方が優れているのだが、人族と違い魔法が使えないというデメリットもあるのだが、俺達"自衛隊(ジエータイ)"の火器による攻撃力を考慮するならば、サクラさんの考えは正しいだろうと俺も思う。

 食事が終わり、少しの休憩をしてから、探索組と居残り組に別れて行動を開始する。

 俺達は、停車してある96式装輪装甲車へと乗り込む。

 全員が乗り込んでも、余裕がある後部スペースには、マユさんが持ち込んだ重機関銃M2が、置かれている。

 本当に、マユさんは一人で重機関銃M2を軽々と持ち運ぶのには、正直驚かされたのだが、本人はとても気に入っているので、問題は無い。


 96式装輪装甲車で宿営地を出発し、そのままカタンの町を出て古代遺跡都市の南門まで走る。

 南門を警護している警備兵達は、既に96式装輪装甲車にも慣れた様で、操縦席から顔を出したまま運転する俺を見て、敬礼をしてから「ジングージ様、おはようございます。今日も、お気を付けて」と声を掛けてくれた。

 入場のチェックなども無く、既に俺達は顔パスとなっている様で、俺も「ご苦労様です」と言って敬礼をし、一時停止だけした96式装輪装甲車を再び発進させて、古代遺跡都市の中へと走って行く。

 舗装された道路には、既に探索者のパーティや、観光客をガイドする冒険者達が歩いているが、96式装輪装甲車のエンジン音に驚き、道を空けてくれる。


 エリーンさんの地図から写した印の場所は、守護者(ガーディアン)ゴーレム軍団が置かれて居た場所の中央に有る大穴池を挟んだ反対側で、方角で言うと東北東となる。

 大通りから側道へ入り、目的の場所まで何度か右折と左折を繰り返し走り続けると、目的の場所へと到着した。

 印の場所は、他の区画とは異なり、建物が一切建っていない空き地の様な空間なのだが、此処も綺麗に舗装された地面だ。

 そして、その舗装された表面には、何やら幾何学的な巨大な図形が描かれていた。

 何かの儀式を行う場所なのか、いや、古代文明人は魔法がベースとは言え、技術力の高い文明を持った民族だったので、儀式などオカルト的な事を行ったとは思えない。


 俺は、ポケットからスマートフォンを取り出し、マップ表示に切り換えてから、この地点をズームアップしてみる。

 すると、描かれている巨大な図形の全容が見えた。

 上空からしか図形の全容が見えないとは、まるでナスカの地上絵の様な図形だ。

 俺の知る類似の図形では、これは魔法陣と言われる図形に似ている気がする。

 何かの魔法を発動するために描かれる、ファンタジー物語で使われる図形アイテムだ。

 古代人達の技術ベースが、魔結晶により魔法なのだから、魔法陣が使われていたとしても不思議な事では無い。

 俺達は、96式装輪装甲車から下車して、描かれている魔法陣を調査してみる事にした。


 魔法陣は巨大で、その大きさは野球場のグラウンドほども有る。

 舗装された面を少しだけ溝を掘り、そこに何か別の黒い物質で埋めて、凹凸が無い様に綺麗に磨き込んである様に見えた。

 図形は、何重にも円形が描かれ、その円の内部に全く読めない文字なのか、アイコンなのか判らないが、多数の印が描かれている。

 取り敢えず、円の中心まで歩いて行ってみる事にし、俺達は巨大な魔法陣の中へと入って行く。

 俺は、ケサラに「危険は感じるかい?」と聞くと、「危険は無いです」と答えてくれる。

 同様に、コロニちゃんの周りを飛んでいるパサラも、「あんぜん」と言っているので、注意しながら、巨大な魔法陣の中心部へ向かって、全員でゆっくりと進んで行くのだった。







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連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

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