表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/237

レストラン

「さて、そろそろ昼時ですな。昼食に致しましょうか……朝食が保存食だったので、少し美味しい昼食を頂きましょう。ジングージ様は、お嫌いな食べ物はございませんか?」

「はい、好き嫌いをするなと教育されておりましたので」

「おお、それは良いことですな。私めは好き嫌いが多くありましてな、今でも怒られます。はははは……それでは、参りましょう。副会長も同行ください」

「はい、お供いたします」

「おっと、ベル。昼飯前に悪いが、伝言を頼みます」

「はい」


 アントニオさんは、兎耳少女ベルさんの耳元へ口を寄せて、俺に聞こえない程の小さな声で、なにやらベルさんへ伝えている。

 ベルさんのピンク色をした長い兎耳が、ピクピクと動いているのが可愛い。

 ベルさんは、伝言を聞き終わると「畏まりましゅた」と頭を下げてから、ドアへ向かう。

 アントニオさんは、「頼みましたよ」と言ってから、俺の方へ向き「では、ジングージ様、出かけましょう」と言って、ベルさんの後を追うようにしてドアへ向かう。


 俺もアントニオさんに続いてドアから廊下へでたが、既にベルさんの姿は見えなくなっていた。

 俺の後からは、エルフ美女のエルドラさんが後を付いてくる。

 階段を一階まで降りて、商業ギルドのホール表玄関を出ると、そこは此処へ来る時に見えた、周りに円形ロータリーのある、大きな広場の道路だった。


 大きな広場は、朝方に見たときよりも、より大勢の人々で埋め尽くされている。

 恐らく昼時ということで、屋台などが狙いなのだろう。

 女性比率の高い、この異世界でも昼飯時ともなれば、やはり男性の姿も多く見られる。

 俺としては、美味しい昼食にも惹かれるが、屋台の食事というのにも興味津々だ。


 防衛大学校在学中に夏期休暇を利用して、タイ王国や台湾へ旅行したことがあるのだが、安価な屋台の食事がとても美味かった。

 また、どちらの国も屋台を利用する一般庶民の暖かさや親切が、今でも忘れられない。

 異国の文化を簡単に知るには、屋台の食事に限ると、俺は今でも思っている。

 このスベニの街で、屋台を楽しむ機会は、まだ有るだろうから今回はパスしよう。


 アントニオさんに連れられ、ロータリーの道路を反時計回りに1/4周ほど歩いていくと、何やらレストランの様な雰囲気をした店に到着した。

 いかにも高級そうな店で、入り口にはピシっとした服を着込んだドア・ボーイが居り、アントニオさんの姿を確認すると、「いらっしゃいませ!アントニオ様」と言ってドアを開けてくれる。


 アントニオさんがドアを抜けて店内に入るのに続いて、俺とエルドラさんも店内に足を踏み入れる。

 俺たち三人がレストランの店内に入ると、ウェイトレスの少女が直ぐに近づいてきてから、頭を深くさげて言った。


「いらっしゃいませ、アントニオ様」

「支配人は居おられますかな?」

「はい、ただ今、呼んで参りますので少々お待ち下さい」


 そう返事をするとウェイトレスの少女は、レストランの奥へ早足で歩いていく。

 ウェイトレスの少女が店の奥へ姿を消すと、入れ替わりに執事服かタキシードの様な服を、ピシッと着込んだ女性が足早にこちらへ向かってきた。

 所謂(いわゆる)、男装の麗人と言うのが相応しい女性で、まるで宝塚の男役みたいだが、髪は後ろでポニーテールにしている。


「これは、これは、アントニオ会長とエルドラ副会長、いらっしゃいませ」

「支配人、ご無沙汰ですな。予約しなかったのですが、奥の部屋は使えますか?」

「はい、アントニオ会長、ご用意できます。ささ、どうぞこちらへ」


 支配人と呼ばれた女性は、俺たちを奥へと案内する。

 アントニオさんは、彼女に付いていくので、俺もそれに続く。

 レストランの内部はテーブル席が並んでおり、どれも食事をする客で埋まっていた。

 客層は、やはり上流階級の様で服装も町中を歩いている市民とは、少し違っている雰囲気だ。

 もちろん、客は女性比率が高かったが、男性の客もそれなりにいる。


 テーブル席を眺めながら、支配人に連れられてレストランの奥まで行き着くと、支配人はドアを開き「どうぞ」と言い頭を下げ、手で我々を部屋の中へと誘導した。

 アントニオさん、俺、エルドラさんの順で入室すると、部屋の奥は、ガラス製の大きな窓があり、部屋の中を明るく照らしている。

 窓の手前には、6人掛けのテーブルが設置されており、既に皿やフォークとナイフもセットされた状態だ。


 窓の外は、庭園になっており、中央には池がある。

 池の周りには、花が咲き誇っており、綺麗に手入れされた木々も美しい。

 こんな庭園付きのレストランなんて、元の世界でも来たことはなかった。

 死ぬ前に、一度で良いから高級料亭に行ってみたかったが、それは結局叶わなかった。

 死んで第二の人生が始まったばかりなのに、高級レストラン、しかもVIPルームを体験できるとは。

 これも、女神様に感謝せねばならないのだろう。


 支配人が、椅子を引いてアントニオさんを案内する。

 いつの間にか、ウェイトレスも入室してきており「どうぞ」と言いながら、椅子を引いて俺を着席させた。

 支配人は、アントニオさんに続いてエルドラさんにも、同じ様に椅子を引いて案内する。

 テーブルを挟んで、アントニオさん、エルドラさんの順に着席し、対面する俺はもちろん一人で着席だ。


「支配人、お客様は遠い国から来られたので、スベニの街の名物料理などを、ご用意して頂けますかな」

「畏まりました、アントニオ会長。お飲み物は如何なさいましょうか?」

「そうですな、ジングージ様。酒の方は、(たしな)みになられるのでしょうか?」

「はい、何でも頂きます」

「そうですか、それでは西のワインを、お願いしましょう」

「承りました、アントニオ会長。それでは皆様、少々お待ち下さい」


 支配人とウエイトレスは、我々に向かって丁寧にお辞儀をし、ドアを静かに開けてVIPルームから退出しようとする。

 その時、部屋の外で別のウエイトレスが支配人に走り寄ってきて、なにやら小声で支配人に告げると、支配人だけが再び入室してきて、アントニオさんへ近づきこう言った。


「アントニオ会長、生産ギルドのテンダー・ギルド長が、お越しになりました。こちらへ、ご案内しても宜しいでしょうか?」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 好き嫌いをするなと教育されたことは覚えてるのか・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ