表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/237

オークの巣

 兵馬俑の様な守護者ゴーレムの駐機場から、10分ほど歩いて管制塔の様な建物の元へとたどり着くと、そこは異様な雰囲気が漂っていた。

 いや、雰囲気と言うよりは、強烈な異臭が漂っている空間だ。

 建物の入り口らしき場所は、扉が略奪されてしまっており、中の様子が表からも見える。

 中には、ピンク色の肌をしている豚の様な姿をした魔獣が多数、蠢いている。

 あれは、豚の魔獣オークの大群だ。


 オークの姿を、この異世界で初めて見たのは、"迷いの森"の中だったが、その猪八戒の様な姿は、何とも不気味だったのを今でも鮮明に覚えている。

 直立して歩く豚なのだが、足には豚の蹄があるが手は人間の手と同じで、棍棒などを武器として扱う。

 大きさは、人間よりも一回りほど大きいが、皆が太っているので丸っこく見えるため、やはり直立して歩く豚と言う表現が合っている。


 しかし、性格は豚よりも猪に近く、かなり凶暴な上、知能が低くコミュニケーションは一切行えない点は、ゴブリンやオーガと同じだ。

 人族や獣人に対しては、餌としての認識しか無いので、見つけると必ず襲ってくるため、こちらも躊躇せずにオークを発見したら先ず攻撃する。

 オーガほど強く無く、皮膚も薄く防御能力は低いので89式5.56mm小銃で急所を狙えば、殆ど一撃で倒せる相手だ。

 但し、弱いからと言って油断していれば、群を作って居る上、数が多いので返り討ちになる可能性も有り、警戒は決して怠れ無い。


「ナーク、ミラとコロニを守れ!」

「……了解。二人共、あたしの側へ来て」

「はい!」


 ナークの言葉に直ぐ反応して、ミラが駆け寄る。

 コロニちゃんも頷いて、ナークの側へ走って行き手を繋ぐ。


「ロック、ベル、小銃の安全装置を3点制限点射(3ショット・バースト)にしておけ」

「了解」

「了解でしゅ」


 俺とロック、ベルが89式小銃をスリー・ショット・バーストにセットしてオークの群へと狙いを定め構えると同時に、オーク側も俺達に気がついた様だ。


「「「「「ブヒッ!、ブヒー!」」」」」


 オークが一斉に豚と同じ鳴き声を叫び、俺達目掛けて棍棒を手にして襲いかかって来た。


「撃てっ!」


 一斉に俺達の手にした89式小銃がダダダッ!と発射音を発してて火を噴く。

 既に、対オークやゴブリンの戦闘訓練は、"迷いの森"で何度も行っていたので、ロックとベルもオークの急所を的確に打ち抜いて行く。


「「「「「ブヒー……」」」」」


 俺達へ猛進してきたオーク達は、断末魔の叫び声を上げて、次々と倒れて行くが、その倒れた仲間のオークを踏み越えて、更にオーク達が俺達へと向かって来る。

 ロックの89式小銃がマガジンの弾丸を撃ち尽くしてしまい、マガジンの交換を行っている。

 これだけ数が多いと、一個のマガジンの弾丸、30発では倒しきれない。

 スリー・ショット・バーストでは、10回トリガーを引けばマガジンの弾丸を撃ち尽くしてしまうのだ。

 俺も、ロックがマガジンを交換し終わったのを見て、新しいマガジンと交換した。

 ベルも同様に、弾丸を撃ち尽くしてマガジンを交換している。


 俺達の後方では、ナークがミラとコロニちゃんを傍らに寄せ、89式小銃をオークへ向けてはいるが、弾丸は発射していない。

 流れ弾が、俺達へ当たるかもしれないので、万が一オークが俺達を回り込んで襲って来た場合に備えているだけだ。

 ナークの完全防御魔法であれば、オークに襲われる事は無いのだが、油断は禁物だ。

 ミラは、護身用の9mm拳銃を両手で持ち、同じように警戒をしている。

 こう言った一連の動作も、普段からの訓練の成果だ。


 コロニちゃんは、ナークの腰に両手を回して、しっかりと抱きついているが、怯えている様には見えない。

 オークとの戦闘も、恐らく母親と共に古代遺跡都市を探索した際に、経験している筈だからだろう。

 あの位の歳の子供なら、泣き叫んでも決して可笑しくは無いのだが、ガイドを自称するだけの事はある。

 俺達が、3個目のマガジンを撃ち尽くすと、ようやくオークの群は沈黙した。

 オークの死体からは、ピンク色の血液が流れ出しており、異臭と混じり合って更に生臭くなって来た。

 寧ろ、立ちこめる硝煙の臭いの方が、異臭よりも遙かに心地よく感じる程だ。


 アンが居れば、もう少し早く決着を付けられただろうが、たまにはアン抜きの俺達だけで戦闘も、良い訓練になる。

 最近は、アンの射撃技術抜きでは、俺達のパーティーも成り立たなくなっているのを痛感していたのだ。

 もしも、古代遺跡都市内に済む魔物や魔獣がゴブリンやオークだけでは無く、オーガまで居るとなれば、アンを探索メンバーから外すなど考えられ無い。

 アンの愛銃となったアンチ・マテリアル・ライフル、バレットM82A3であれば、強固な皮膚を持つオーガでさえも、アンの一撃で倒せるのだから。


 俺達は、オークの死体を注意しながら避けて、管制塔らしき建物の中へと入って行く。

 内部は、完全にオークの巣となっており、寝床らしき干し草などが散乱している。

 異臭が凄いので、俺は気休めだろうが首に巻いているスカーフで鼻を覆うマスク代わりにした。

 ロックやベル、ナークとミラも同じ様にスカーフで鼻を覆っている。

 コロニちゃんは、小さな手で鼻をつまんでおり、ウメさんやヒタキさんが言うには、狼人族と犬人族は、獣人族の中でも嗅覚が特に優れていると言うので、黒狼族のコロニちゃんにとっては、この異臭は耐え難いのだろう。


 オークの巣となっている一階の奥には、上階へと続く階段が見えているので、俺達は足早に階段へと向かう。

 建物の二階も、オークの巣となっている様で、此処にも干し草などが散乱している。

 そして、獣か人かは不明だが食い散らかされた骨が多数散乱していた。

 これは、早めに退散しないと気分が悪くなってしまいそうだ。

 散乱している骨の中に頭蓋骨らしき骨があり、そこには小さな角が生えていた。

 恐らく、これらの骨は、オークに狩られたゴブリンのなれの果てなのだろう。


 二階の奥には、更に上へと続く階段があり、俺達は上階を目指して駆け足で階段を昇って行く。

 三階へ上がると、この階もオーク達の巣だったが、この階には先ほどまでの様な階段は無く、部屋の中心にある太い円柱に、螺旋階段の様な形で更に上に上がれる様になっていた。

 天井には、円柱を中心にした円形の穴があり、更に上の階が有るのは確かだ。

 此処まで来て引き返すのも(しゃく)なので、その螺旋階段を昇って行く事にする。


 三階の天井から上は、円形の筒型になっており四階では無かったが、そのまま上へと昇って行く。

 やがて、上から明るい光が漏れてきて、最上階へと昇って来られた様だ。

 此処まで、階数に換算すれば七階分くらいは有るだろうか。

 しかし、途中階に入れる様な穴や扉は無かったので、何かしらの設備が隠されている可能性は有る。

 俺達は、最上階へと上がると、そこの窓だった四角い穴からは、古代遺跡都市の全貌が見渡せた。


 しかし、最上階には何も無く、オークの巣にもなって居ない様で、干し草なども散らかっていない。

 こうなると、この最上階までの途中階へ潜り込みたくなったが、どうやって入るのか全く見当もつかない状況だ。

 俺は、床を89式小銃のストック部分で、片っ端から叩き始める。

 空洞か、隠し扉になっているならば、叩いた音が変化する筈だ。

 だが残念ながら、その様な音の変化は全くなく、乾いた石を叩く音しか聞こえて来なかった。


 やはり、全てが運び去られてしまった管制塔は、今では単なる高いだけの塔だった様だ。

 とその時、ロックが円柱を触ると、何やら稼働音が聞こえ始める。


「ロック、何かしたの?」

「ぃぃぇ、僕は柱を手で触っただけです」

「"女神様の祝福"の力か……」

「僕も多分そぅだと思ぃます」


 稼働音が大きくなるにつれて、円柱が割れ始めて観音開きで内部が見えてきた。

 円柱の内部は空洞だった様だが、それは上部だけで下部は内部も石だ。

 開いた隠し扉から円柱の内部を覗くと、内部には金属製の梯子が設置されていた。

 隠し扉で隠されていたので、盗掘を免れたのだろう。

 上からは、明るい光が差し込んでいるので、恐らく屋上へと続く梯子の様だ。

 俺達は、ロックによって開かれた扉を潜り、屋上へと続く梯子を昇って行く事にした。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

連載中:『異世界屋台 ~精霊軒繁盛記~』

作者X(旧ツイッター):Twitter_logo_blue.png?nrkioy) @heesokai

  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] 本当に徐々M-64式を使えると308ウインチェスター弾の 7.62mmNATO弾が使えて魔獣戦が有利に戦えるのに! この弾丸だとアンなら800mの狙撃が出来るよ? スコープ付きの64式狙撃銃…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ