難民救援
フェアウェイ大公の居城で、遅い昼食を頂いた俺達"自衛隊"の面々と、サクラさん率いる"九ノ一"部隊は、未だ日が沈むまで時間が十分に有るため、城塞都市タースから街の外へ避難している人々の救援に向かう事にした。
未だ、タースの街では傭兵ギルドの残党狩りと、闇ギルドの関連施設を鎮圧するため、フェアウェイ大公軍とバンカー公爵軍による合同部隊が、街を捜査中なので、避難民を帰宅させるのは危険だ。
「済まぬな、ジングージ殿」
「いえ、大公閣下。これは自分達の任務です」
「そう言ってくれると、余も有り難い。頼むぞ」
「はい、フェアウェイ大公閣下」
俺達は、フェアウェイ大公や奥方様方、そしてバンカー家の奥方様方にも挨拶をし、フェアウェイ大公の居城を後にする。
城門の跳ね橋を渡り、城の外へ止めてある16式機動戦闘車と、指揮者ゴーレムまで歩いて行く。
しかし、"九ノ一"部隊の人数を考慮すると、別の車輌を無限収納から召喚せねばならない。
また、荷車を引いて行くとなると走行速度が遅すぎる。
今回は避難民を支援するので、ロックが指揮者ゴーレムを操縦して同行する必要も無いので、此処へ駐機して置けば問題は無いだろう。
日付が変わっていれば、もう1輛の96式装輪装甲車を召喚できるのだが、未だ日付が変わっていないので、それは出来ない。
まあ10人程の人員が、短時間だけ移動出来れば良いので、この際は運送力重視で選ぶ事にする。
。俺は"女神様の加護"を発動して、装備の中から車輌フォルダーを選択して目的の車輌を召喚した。
俺が召喚したのは高機動車だ。これならば大人なら10人は搭乗できる。
少し狭いが、荷車よりはずっとましだと思う。
"九ノ一"部隊のメンバーは、皆が少女で身体も成長しきっていないので、少し窮屈だろうが我慢してもらう。
高機動車の運転は、何度か訓練で運転の練習をしたロックに頼む事にする。
助手席には、サクラさんに乗ってもらい、ミラには16式機動戦闘車へ搭乗してもらう事にした。
ナークの操縦する16式機動戦闘車へ俺も搭乗し、既に戦闘スペースへ搭乗しているアン、ベル、ミラと共に、出発だ。
俺達の後ろからは、ロックが運転し、後部へは"九ノ一"部隊の総勢12名が乗っている高機動車が付いてくる。
久々の運転だったからか、車長専用のハッチから身を乗り出してロックを見てみると、かなり緊張している様子だ。
指揮者ゴーレムは、思考や音声によって半自律で動くので、車輌の運転や操縦に比べると嘘の様に楽なのだから、緊張するのも仕方が無い。
タースの北東門を出て、俺達は東の街道を難民が避難キャンプを行っている地点へと急ぐ。
タースの北東城門は、俺達が破壊してしまったが、既にフェアウェイ大公軍、或いはバンカー公爵軍の兵士が、城門警備を行っていた。
本来ならば、門を潜るには身分票の掲示とチェックが必要なのだが、今回はフェアウェイ大公より、お墨付きの証しを頂いたので、これを掲示してパスする。
東の街道を暫く走行して行くと、大勢の避難民が街道脇の平原へ荷車や馬車を寄せて居た。
スベニへ向かった商人達は、既に此処には居らず、街道を東へ向かったのだろう。
俺達も16式機動戦闘車を街道の脇へ寄せ停止する。
後からはロックの運転していた高機動車が、同様に街道から少し外れて停車した。
俺達の車輌を見て大勢の難民達が、2輛の元へと集まって来る。
「皆さん、タースの街での反乱は鎮圧されました」
「「「「「おおおおぉぉぉ~!」」」」」
俺の言葉に、大勢の難民達が歓声を上げた。
疲労していた顔にも笑顔が戻る。
小さな子供は「おうち帰れるの?」と母親へ尋ね、母が「そうよ、帰れるわよ」と優しそうに子供の頭を撫でた。
「しかし、未だ傭兵ギルドの残党や闇ギルドの残党狩りが、フェアウェイ大公軍とバンカー公爵軍によって行われています。これからタースへ戻るのは危険です。今夜は不自由でしょうが、此処で野営し、明日以降の帰宅をお勧めします」
「ジエータイの方々、ご無事でなによりでした」
「貴方は、我々がタースへ向かう際に、お話をしてくれた方でしたね」
「はい、タースの反乱が、これほど早く鎮圧されたとは……お礼申し上げます」
「いいえ、未だ完全鎮圧には至っておりませんので、安心は出来ません。今晩は、不自由でしょうが、此処で野営をお願いしに参りました」
「はい、もちろん身に危険があるなら、安全な此処で野営致しますとも。わざわざ知らせに来て頂き、ありがとうございます」
「はい。タースの民を守るのも我々"自衛隊"の任務です。これから、野営用の天幕や食事の用意を致しますので、場所を空けてください」
「なんと、野営用の天幕や食事までも…本当にありがとうございます」
「「「「「ありがとうございます!」」」」」
避難民達は、全員が俺達に頭を下げて礼を口々に言う。
恐らく、野営用のテントなどは準備して脱出して来た民は居ないだろう。
食料だって、必要最低限の干し肉や乾燥した硬いパンだけだろう、それだって、全員が所持しているかどうか疑問だ。
俺達は、手分けして食事の準備と宿泊用のテントを設営する事にした。
俺は無限収納の装備から、災害救助だけではなく部隊の作戦行動でも使用される、野外炊具1号(22改)を召喚する。
何故か、災害救助に関する装備は、一つだけではなく(x5)と5個まで召喚可能となっていたので、野外炊具1号(22改)は5輛の全数を召喚した。
これで、ご飯が炊ける。
精米した米は、スベニの食料市場で大量に購入してあり、劣化を防ぐために無限収納へ入れてあるので、これを取り出した。
水は、1t水タンクトレーラを野外炊具1号(22改)と同じく5台召喚した。
これで、飲料水や炊事用の水も賄える。
既に避難民の持ってきた水は枯渇しており、大勢の避難民が水タンクトレーラに集まり、その場で喉を潤している。
野菜や肉は、フェアウェイ大公の居城を出る際、フェアウェイ大公より備蓄してある野菜や肉の提供を受けたので、これを無限収納に格納して来ている。
これで、スープも作れる。
どうせならば、味噌があれば身体の温まる豚汁が作れたのだが、残念ながら無限収納にも味噌や醤油は無かった。
避難民達の宿泊用テントは、大型の業務用天幕を召喚した。
一個のテントで14~15名は宿泊可能なのだが、こちらは(x25)と無限収納のリストでは表示されていて、25個しか召喚は出来なかった。
小型の宿営用天幕も25個が召喚できたので、これも追加する。
こちらは、一個のテントで6名が宿泊できるので、なんとか詰めて貰えば難民全員が宿泊できるだろう。
俺達"自衛隊"のメンバーは、訓練時に何度か野営を行い、テントの組み立てなども経験していたのだが、"九ノ一"のメンバーとミラは全くテントや野外炊飯器の扱いは知らない。
俺達"自衛隊"は、テント張りと夕食作りを分担して、"九ノ一"のメンバーとチームを臨時に組んで、それぞれの作業を行う事にする。
もちろん、避難民達も率先して、俺達のテントを張る作業を手伝ったのは言うまでもない。
そして、日が沈む少し前までには、夕食の支度とテントの設営をなんとか終えることが出来たのだ。




