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『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第2章 『船幽霊(もうれんやっさ)』 ~香奈の章~
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『船幽霊(もうれんやっさ)』 ~香奈の章~ 其の一

こんこんこんっ


インターホンの無い『霧島華音』

ドアには、営業中とある。

お店だから、別にノックしなくてもいいのでは?とも思ったんだけど、何となく癖になっている。

中から、「はーい」と花子さんの声が聞こえたので、私は扉を開ける。


きぃぃぃぃぃぃ


っと、少し軋む扉を開け中に入る。


「いらっしゃい、香奈ちゃん」


「こんにちは、花子さん」


『壺』の件以来、結構顔を出すようになった。

まあ、遊びに来るだけなので・・・


「ん?また、ひやかしか?」


「あ、あはははー」


と、華音さんには冗談交じりに言われる。


「でも、華音様ったら、「そろそろ、香奈が来るころだから『さのや』買ってきて」っとか言うんですよ?」


「ちょ、花子、そ、それは内しょ・・・」


なんて、何時もの様に他愛もない話をしていると、


きぃぃぃぃぃぃ


と、扉が開いて、男の人が入ってきた。

50歳・・・位かなぁ?


「あら、漁協の組合長さんじゃないですか。」


どうやら、二人の知り合いみたいだった。


「か、華音様っ知恵をお貸しくださいっ」


「なんだ?藪から棒に・・・」


「はい、実は・・・」


組合長さんの話によると・・・

先日、釣りに出た船が沈没した。

乗っていた釣り人は、『もうれんやっさ』とか『いなが貸せ』とか言う

『白い大きな手』に船を沈められたと言っている。


「・・・『船幽霊もうれんやっさ』じゃないか。」


もうれんやっさ??

何だろう?

また、私の時みたいな『悪魔』か何かかな?


「ええ、それは私も承知です。」

「それで、底を抜いたひしゃくを貸すのも知っています。」


「それならば、沈められる事もあるまいて。」


「いえ、それが・・・」

「ひしゃくが足りないのです。」


「ひしゃくが足りない?」


「沢山の『白い大きな手』が出るそうです。」


「・・・ふむ」

「あ〜すまない、香奈。」


「あ、うん、今日は帰るね。」


華音さんに仕事が入ったみたい。

邪魔になっちゃうので、私は『霧島華音』を後にする。

でも、行って直ぐだったから、大分時間があるなぁ?

あ、でも、香織ちゃんの所に双子達が来る筈だから、合流しよう。

私は、急いで寮に帰った。


寮に帰ると玄関で香織ちゃんに会った。


「あ、香織ちゃん。」


「ん?・・・おかえりなさい、香奈。」


「ただいま。」

「ってあれ?何処か出かけるの?」


「あ・・・うん、ちょっと実家まで。」


香織ちゃんの実家って結構遠くだった・・・気がする。


「ちょっと、確認しなきゃいけない事が出来ちゃってね。」

「今日は、ちょっと遅くなっちゃいそう。」

「寮長に何か言われたら、適当にごまかしておいて?」


「あ、うん。それは良いんだけど、知真ちゃんと葉和ちゃんが来るって言ってたよ?」


「あ、そうだったわ・・・」

「ごめんっそっちも上手く言っておいて?」

「私もメール入れとくから。」


「わかった。いってらっしゃい。」


「うん、いってきます。」


・・・

・・・

・・・


「って事があったの。」


「うん、メール来てたよ。」


「何でも、急用だと書いてありました。」


香織ちゃんが出かけてしばらくすると、双子達がやって来た。

私は、「当初の予定とは違うけど、私の部屋に来ない?」と誘った。

どうやら、メールを見た双子達は、私の所に遊び行く事にしたらしい。


「そういや、もっかな〜」

「『霧島華音』に行くんじゃなかったの?」


「ああ、うん。行ったんだけど、直ぐに華音さんに仕事が入っちゃって・・・」

「お邪魔しちゃ悪いから、帰ってきたの。」


「そうでしたか。」

「でも、そのおかげで今まで謎だった『香奈さんの部屋』が明らかになりましたね。」


「いや、謎って・・・」


「そうだねー」

「もっかなと言えば、文学少女ってイメージだったけど・・・」

「・・・案外、本が少ないね。」


「と言うより、物が少ないです。」


「あはは、そうかも・・・」


私の部屋には物が少ない。

あるのは、備え付けの机にTVを兼ねているパソコン。

パソコンの脇には、少量の文庫本。

私物と言ったら、あとは衣類位なものなのである。


「もっかなーゲーム機無いの?ゲーム機。」


「無いよ?」


「じゃあ、どうやって暇つぶすの!?」


「えっと、パソコンでTVみたり、後は勉強するか、小説を読むとかかなぁ?」


「物凄く健全です。」


「え?そうなの??」


「ええ、姉さんなんて、毎日深夜までゲームやっていますよ。」


「・・・葉和ちゃん、自分の事を棚に上げてる。」


ゲームかぁ・・・多分、小学生の時以来やってないんじゃないかな?と思う。

スマートホンを持っていれば、アプリ?でゲームが出来るみたいだけど、

私は生憎、普通の携帯電話だ。

「ガラケーでもできるじゃん!!」って言われたけど、よくやり方が分からない。


「しょうがないな〜」

「今度、私のゲーム機を一つプレゼントしよう!」

「ドリームスタッフって言う、名機だよ!!」


「・・・姉さん、普通にいらないの押し付けただけですよね?」


「何を言うっ!!」

「私のゲーム人生はここから始まったと言っても過言ではないよ!!」


「ありがとう。」

「でも、本当にいいの?」


「良いも何も、使ってないもん。」

「あ。」


「ボロが出ましたね。」

「って言うか、TVありませんよね?この部屋。」

「そもそも、そのパソコンでゲームできますよ?」


「え?そうなの?」


「じゃあ、今日はもっかなにゲームの楽しさを叩き込んでやろう!」


「お、お手柔らかに・・・」


こうして、楽しい時間は過ぎて行った。

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