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『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第7章 『花の城の音姫』 ~海魔の章~
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『花の城の音姫』 ~海魔の章~ 其の七

(さて、狐。どないする?)


「どないも何も・・・片っ端から行くしかないじゃろ?」


華音様の気配・・・瘴気の残滓は、『霧島華音』を中心に学校や商店街、近くの寺など至る所にある。

華音様の瘴気より生み出された黒猫かどうかは行って見んと分からん。


(なら、近場からまわろか。)


「うむ。」


うちらは、学校から回る事にする。

校舎裏が一番濃いかね。


「クラーケン。夜魅やみじゃ。」


学校の裏側、うちらがさっきも通った近くに、夜魅やみがいる。

まあ、俗に言う尖兵の夜魅やみや、狐が炎の一撃で屠る。


(なんや、予想通りの展開になってそうやね。)


「ああ、恐らく夜魅やみは黒猫を探している。」


黒猫がおらん様になれば、華音様は『この世』におられんようになる。

そうすれば、敵さんにとって有利になる事間違い無しやね。

まあ、敵さんにもう大物がおらんと思うから、雑魚片付けるだけの簡単なお仕事や。


その後も、商店街、寺、漁港なんかで、夜魅やみを屠った。


翌日。


「先ずは、昨日の成果じゃが・・・まあ、見つからなかったのじゃ。」


集まった面子に、昨日の成果を報告する。縄張りと思われる場所が複数ある点。そして夜魅やみが黒猫を狙っているらしい事。

まあ、大した脅威は無いと思うが、うちと狐のどちらかが居るに越した事はない。

香奈、狐、赤い方の組とうち、香織?、青い方の組に分かれて探す事になった。


(さて、あちらさん達は、花子の所に寄って学校を探すようやね。)


「クラーケンさん。私達はどうしましょう?」


(そうやね。商店街は回るトコ多いから、先に漁港をまわろか?)


「おっけ。じゃあ、行きましょう。」


・・・

・・・

・・・


漁港につくと、見覚えがある人間が目に入った。

うちは声を掛ける。


(この間はおおきに。)


「ああ、この間の姉ちゃんか。無事にたどり着けたのか?」


(ええ。お蔭様で。華音様にも無事に会えましたわ)


「華音様・・・??」


(ああ、こっちの話や。それはそうと・・・こんくらいで・・・黒い猫見んかった?)


うちは手振りで大きさを伝える。


「なんだ?今度は女子高生が揃って、猫探しかぁ?」


(あら、うちも女子高生にいれてもろうてええの?)


「なんだ、違うのかい?」


「・・・って!、クラー・・・いえ、組合長さん?猫の方は?」


「おおっとすまんな。わからんな。黒い猫なんて幾らでもいるからな。」


「では、猫の集まりそうな場所はご存知ですか?」


「ああ・・・それなら・・・」


漁港から、近くにある加工工場の方に移動する。

加工工場には、おこぼれを狙う猫や鳥が集まる場所があるらしい。


(どない?)


うちは、近くまで行かずに、香織に話しかける。


「んーいないみたいだわ。」


実はうち、鳥、苦手なんよ。まあ・・・猫も得意やないけど。


「じゃあ、次はあっちの工場ですね。」


それから、幾つかの工場を見て回ったが黒猫は見つからへんかった。


(次は、寺の方や)


ココロード?っていうのん?・・・この商店街の近くに寺がある。

ここも、猫の縄張りと思われる一つ。


「・・・そうですか、ありがとうございました。」


青い方が住職に聞いた。結果は分からない。

まあ・・・うちが見れば分かるけど、普通の人には黒い猫って言われただけじゃ分からんよね。

なんにしても、寺の方も手分けして隅々まで探す。


「見つからないわね。」


「そうですね。」


こん子ら・・・うちや香奈の言ってる事が良く分かって無いにも関わらず、文句ひとつ言わずに手伝っとるなぁ?

それに・・・狐の事も忘れてるんとちゃうの?

うちは疑問に思ったことを口にする。


(ところで、あんたら・・・狐・・・ん〜桜井千重?の事は思い出したん?)


「いいえ。なにかもやが掛かった様に・・・思い出せませんわ。」


「それは、華音さんの事も同様ね。」


(なら、なんで手伝ってるん?訳も分からんとちゃうの?)


「そうね。正直訳分からないわよ。でも・・・香奈の、友達の為だからね。」


「はいっ友達が困っているのです。助けるのは当然でしょう?」


(あんたら・・・ええ子やね。)


・・・

・・・

・・・


お昼になって、一度皆集まる事になった。


「首尾はどう?って聞くまでも無いわね。」


「うん、香織ちゃん達も・・・みたいね。」


「なんにしてもさ〜お昼ご飯食べようよぉ〜私、お腹すいちゃったよぉ〜」


「姉さん、空気読んでください。」


「私、『一心』がいい!!」


「・・・お昼からカツカレーですか・・・姉さん・・・」


何か、よー分からんけど、『一心』と言うお店に行く事になった。

中は・・・ちょっと狭いわ。6人は座れんね。

結局さっきと同じ組み合わせで、4人掛けのテーブルについた。


「クラーケンさん。何にします?」


(何・・・言うても、何が何だか分からんわ。)


「此処に来たら、カツカレー一択よ!」


(・・・そうなんか?)


「まあ、一番有名なのはカツカレーですね。」


(なら、それでええわ。)


注文して、暫くすると店が混んでくる。まあ、お昼時ってヤツやからね。

うちらの席にも、相席で男が座った。

見ると、隣の香奈達の方にも、相席になるようや。


「・・・君は確か、華音様の関係者の子じゃなかったかな??」


「え!?」


華音様の事を覚えている!?

隣の席の会話が聞こえる。香奈の所に相席した男・・・何者!?

・・・男の気配が変わる。

この気配・・・花子なんかに近い。


「お主、何者じゃ。」


狐が問いただす。うちも男を睨みつける。


「そういう君も何者だい?・・・あと、向こうのテーブルのお姉さんもかな。」


うちの視線に気が付いた男はうちらに逆に問う。


「ま、待ってください。お兄さん・・・夜魅やみ・・・では無いですよね?」


険悪な雰囲気に、香奈が割り込む。

男は自分の事を話し始めた。


「華音様に言わせると、夜魅やみになりかけていたらしいけどね。」

「俺は、佐藤二郎。あ〜正確には体は佐藤一郎だ。今、華音様の事を知っていそうな人を見かけたら表に出てきた。」

「・・・守護霊だ。」


守護霊・・・ああ、成程『この世のモノ』じゃないんね。

どうりで、花子と似たような気配がする訳や。

それで、華音様と親交があって、香奈を見かけて話しかけた・・・と。

香奈は二郎に、経緯を説明する。


「そうか、おれが入院している間にそんな事があったのか。」


二郎も香奈達に自分の事を話した。

なんや、うちと同じか。華音様に恩があるんやね。


「それで・・・黒い猫を見ませんでしたか?」


「黒い猫?」

「ああ、あの時の黒猫か。そうか、この運命線では生存しているんだな。」


「運命線??」


「あーいや、すまない。此方の事だ。」

「その猫なら見た事がある。たまにココロードでも見かけたな。」

「例えば・・・坂本に行く途中の空き地があるだろう?あそこにもよく居たぞ。」


「ココロードかぁ・・・皆、ココロードは探した?」


「いや、あの辺りは元々の姫の残滓が強くて後回しにしていたのじゃ。」


(そうやね。捜索範囲も広ろうなるからねぇ?)


「じゃあ、午後からは『ココロード』を中心に探そう。」


「本当は俺も手伝いたいんだが・・・一郎の体だからね。あまり長く表に出ると、一郎が混乱する。」


「いえ、ありがとう御座います。二郎さん。」


その後、カツカレーを綺麗に間食したうちらは、そのままココロードに向かう。

ここでも、二手に分かれ捜索したけど・・・やっぱり見つからん。

すると、香織のすまほに連絡がある。


「うん・・・うん・・・見つかったの?分かった、そっちに行くわ」

「どうやら、見つかったみたいだわ。」


(結局何処に居たん?)


「それがね・・・華音さんが大好きな食べ物屋に居たんだって・・・」


「え!?」


(はぁ・・・華音様・・・どんだけ、食いしん坊なん?)


うちらは合流し『桜』へと向かった。

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