『花の城の音姫』 ~海魔の章~ 其の三
地上についたうちは、異変を感じた。
・・・華音様の気配がない!?
華音様は、うちら海魔・・・精霊や、夜魅等の『この世のモノ』じゃないモノ達にとって、存在そのものが脅威になりうる程のチカラの持ち主や。
当然そのチカラの全てが押さえきれる筈もない。海中なら兎も角。こと、地上でその気配すら感じん言う事は、ただ事ではない。
華音様より託されている『鍵』。これは、今この時の為なんやね。
うちは、急ぎ『桜』に向かう事にする。
「ク、クラーケンさん」
はぁ、はぁと息を切らしながら、話しかけてきた少女は・・・
・・・ああ。
(おや・・・確か、華音様と一緒におった娘やねぇ?)
そう、華音様の友達つー娘やね。
うちの事を探していた様子。つー事は、当然華音様の気配がないって事に関係する事や。
「は、はい、香奈です。」
(そうか、香奈な。よろしゅうに。)
(で、香奈。あんたの用事は華音様の事やね?)
「な、何で分かったんですか?」
(分かるよ。)
(・・・華音様の気配がない。)
「はい、その事で・・・聞きたい事。そしてお願いしたい事があります。」
(分かった。とりあえず、歩きながら聞こか。)
うちが言うと、香奈は、すまほ?で他の娘を呼び出した。
みんな、華音様の友達なんかね。
合流した後、うちらは『桜』に向かって歩き出し、その間に何があったのか詳しく聞いた。
(そか、華音様の存在が無かった事に改変された・・・と、せやけど、華音様は何処かにおる。)
(そういう事やね?)
「はい。花子さんに『桜』の近くにある『祠』にいけと言われました。」
「ただ・・・その『祠』を開けるのにチカラがある人を探していまして・・・」
(なるほどね。華音様は其処までみこしていたんやね。)
「それってどういう・・・」
そか、華音様が”本当”に用事があるのは、きっと香奈や。
確かにこん娘、”普通”やない。『この世のモノ』が改変された世界で、改変前の事を覚えている筈が無い。
果たして香奈は、『この世のモノ』なのか、『この世のモノ』じゃないのか・・・正直、うちから見てどっちとも言えん。
まあ、それも・・・華音様の元に行けば分かる。
(今向かってる場所・・・わからん?)
「あ、もしかして・・・『桜』!?」
(そうよ。うちはね。華音様から『祠』の『鍵』を託されておったんよ。)
(それはきっと・・・香奈を連れて行く為だったんやね。)
(ほな、いこか? 華音様の元へ。)
「はいっ!」
うちらは『桜』へと向かう。




