『花の城の音姫』 ~海魔の章~ 其の二
海流同士がぶつかり、打ち消し合う。
正直、淡水生物?と舐めてかかっていたけど、案外やりおる。
(はーこれは埒があかないな。イカの姉さんに怨みは無いが、大技をいかせてもらう。)
言って河童は、間合いを広げる。
確か河童は・・・妖術が使えるんやったね。
間合いを取ったとはつまり、そういう事。
ならば此方も本気をださなあかんね。
あの子、この姿を可愛らしいって言ってくれたんよね。でも・・・その姿にこだわっていちゃあ勝てるものも勝てん。
うちは、”本当の姿”をさらけ出す決意をする。
(イカの姉さんも本気を出すんだな?)
(そうやね。まあ、うちの本気の・・・いや、片鱗くらいわみせたるわ。)
(よく言う!だが、俺の方が早かったようだな!!)
(蛟!!)
河童が両の手を掲げると、大蛇が現れとぐろを巻く。
蛟。確か、水に通じる有毒の竜の事。河の神とも言われるやつやね。
河童が手を振り下ろすと、蛟が真っ直ぐうちへと放たれた。
本物の蛟を召喚した訳やなく、模して放つ必殺技って所か。
って、悠長に解説してる場合違う。
間に合うん!?
河童の放った蛟はうちに直撃をした。
巻き上げられた砂で視界が無くなる。
先程の海流とは比べ物にならない威力を持っていたようやね。
(流石の姉さんもこれでお終いだろ?)
河童は勝利を確信している様やけど・・・
(はー痛いやんか、腕が・・・いや、足が1本痺れてしもたわ。)
間一髪、うちは本当の姿へと戻っている。
そう、海魔『クラーケン』たる本当の姿、すなわち・・・巨大なイカの姿や。
(な、蛟を喰らって無傷だと!?)
(あー知らんの? クラーケンってイカの姿してるけど、竜なんやで?)
(片鱗いうたろ?竜の鱗はそんな簡単には抜けんで?)
(そして・・・)
うちは10本の足でそれぞれ海流を起こす。
(一つ一つはさっきとほとんど変わらんが、10本あったらどうやろうね?)
(メイルシュトローム!!)
(な、そんな・・・)
うちの巻き起こした海流は渦潮となり、河童を呑みこむ。
・・・
・・・
・・・
辺りが静けさを取り戻すと、そこにはもう、河童の気配はなかった。
それにしても、困ったもんやね。この姿になると戻るのが大変やのに・・・人型やないとあの『符』がつかえへん。
うちのメイルシュトロームで、『楔』が壊せてたら・・・なんも問題なかったのやけど、ほんと華音様は・・・
暫くして、人型に戻ったうちは、『符』使い、最後の『楔』を破壊した。




