『花の城の音姫』 ~海魔の章~ 序
世の中には、不思議な事はごまんとある。
『この世のモノ』からしてみれば、うちら海魔も『不思議』なものやろ?
うちらにしてみれば、『この世のモノ』だって不思議なんよ??
その中でも一番『不思議』なんは・・・前に見た、”あの少女”なんよね。
「すまないが、もう一つ頼まれてくれないか?」
『楔』の事を華音様にご報告に行ったうちに、華音様はもう一つと頼み事をしてきた。
うちらの一族は、華音様に多大なるご恩がある。
(はい〜華音様のご命令ならば・・・ですよ?)と、うちは内容も聞かずに引き受ける。
例え無理難題を突き付けられ、うちという存在が無くなるとしても、華音様のご命令には従う。
うちにはその位の覚悟はある。
うちの覚悟をくみ取ったのか、華音様は数枚の『符』を取り出した。
以前、『楔』を壊して貰った時に使っていた『符』のようやね。
「御札を使って、4つの『楔』を破壊して、もう一度此処に戻って来てほしい。」
受け取り、確認してみるとやはり以前使った物と同じようや。
此れならば、うちでも『楔』の破壊が出来る。
「それと、此れも渡しておく。」
(これは?)
・・・渡された物は、『鍵』の様に見える。
「『鍵』だ。其処に『祠』があるだろう?もし、此処に帰って来て『私』が居なかったら、この『鍵』で『祠』を開け中に入ってくれ。」
「其処に・・・『私』がいる。」
やはり、見た目通りの『鍵』のようやけど・・・
(華音様。華音様が居なかったらとは・・・?)
「言葉通りの意味だ。此処に居なかったら、『祠』の中に居る。」
(わかりましたぁ〜華音様の命、必ずや果たしてみせますぅ)
うちはその言葉に・・・それ以上の覚悟を感じた。
そう、華音様をもってしても、相当の覚悟がいる何か・・・があるという事や。
ならばうちは・・・
・・・必ず、『楔』を破壊してきます。
うちは『桜』の元を後にする。
『桜』は、妖しくも美しく咲きほこっていた。




