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『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第6章 『千重の桜』 ~妖狐の章~
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『千重の桜』 ~妖狐の章~ 其の四

「しかし、姫よ。結界を張るとは、千重さんの結界だけじゃ『祠』は守れんという事か?」


「いや、これは誘いだ。」

「今居るような、雑魚じゃ結界は破れんが、やつらが入れんような大きな結界を張れば、大物が出ざるを得まい。」

「それに・・・」


「香奈達も安全になるだろうからな」と姫は言う。

やはり、姫にとって香奈という少女は余程に大切なんじゃな。

儂と姫、其れと花子という姫の属神は、『桜』の元に居る。

儂が戻ったのは、一週間と少し前。本当は尾が9本になるまで修行を続けたかったが、状況はそうもいかない様で切り上げて帰ってきたのだ。

帰った儂は、社を訪れたがそこに姫の姿は無い。もしや、あの時のように・・・と急いで『祠』に向かったのだが・・・

・・・そこに『祠』から、今の姫が花子と一緒に出てきて・・・


「む、狐か。お帰り。」


っと、アッサリと言ったのだ。

大体、あの『祠』の扉は開けてはいけないと自分で言っていたのに、あっさりと開くようになっている。

聞けば、里に家が在って、花子のチカラで其処と繋いだ。そうだ。

封印は!?と聞けば、扉の奥、もう少し深い所にある。っと、元々そうだった様だ。

色々とツッコミ所が多すぎて、勢いで質問をぶつけすぎて、此処で我に返る。


「ただいま。姫。」


と漸く一言。

姫は「お帰り、狐。」と先程と同様に”子”を取り、一人前の狐として、そして、あの頃の様な笑顔で迎えてくれた。


「狐。お前に頼みがある。」


桃井香奈と言う少女を守って欲しい。意味が良く分からなかった。自分では無く、桃井香奈と言う少女を守れと言う姫。

その少女は、自分自身よりも大切なのか?少女に対する嫉妬心が生まれる。しかし姫の言う事。何かあるのだろう。

儂は、少女の学校・・・姫の学校らしいのだが、其処に転校生として入学する事となった。

まあ、その後は・・・色々とあったが、あの少女が”普通”では無いという事は分かった。

そして、結界を張る準備が出来たから・・・と『桜』の元に戻ったのだ。


「誘い・・・か。」


「先ず結界は2段構えとする。一つはてうし全体。此れは、雑魚が入れなければよい。」

「もう一つは、『桜』周辺。大物以外入れん様にし、ここに誘い出す。」


「それは、危険な賭けじゃないか?」


「うむ、だが、時間が無い。」

「海魔に調べさせていたのだが、海底に『楔』が4本確認された。」


その『楔』のチカラを使い『常世とこよ』を『現世うつしよ』に引っ張り上げる。

そうしたら、確実に『現世うつしよ』は終わる。

姫のチカラを利用すれば、4本でも可能だろう。しかし、それが無ければその倍は要るだろう。との姫の見解だ。

だから、あえて姫のチカラを餌にして、大物を誘い出し、その痕跡からさらに元凶を探る。

姫のチカラを使わなくても、ほおっておいたら、何れ成し遂げられてしまうのだ。


「姫、儂は何をすればいいのじゃ?」


「狐は、花子と共に、てうし全体を包む結界を頼む。」

「私は、千重と共に『桜』周辺に結界を張る。」


千重さん・・・そういえば、『桜』はもうすぐ満開。

千重さんは眠りから覚めるのだ。


「分かった。行くぞ、花子。」


「え、ちょっと・・・ここちゃんが仕切るのぉ??」


儂は山を駆け下りる。


「待ってくださいよぉぉぉぉ」


後ろから花子の声が聞こえる。「待って」と言いながらも案外ついてこれている。

さらに後ろで・・・


「頼んだのじゃ。愛しい子狐。」


姫の声が聞こえた気がした。


その夜、眩しい光がてうし市を包み込んだ。

儂と花子、姫と千重さんの張った結界は、弱き夜魅やみを祓い、全ての準備が整ったのだ。

その光は一瞬の事。直ぐに夜は静寂を取り戻したのだった。

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