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『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第6章 『千重の桜』 ~妖狐の章~
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『千重の桜』 ~妖狐の章~ 其の二

初夏も過ぎた頃。その日は何時もと様子が違った。

何時も社に居る姫が今日はいない。

如何したんだろう?と思いつつも、『桜』さんの元へと向かう。

途中の『祠』に差し掛かると、見た事の無い女性が立っていた。美しく長い黒髪に、此れはおそらく巫女装束というモノだと思う。

その美しい女性は、僕を見かけると話しかけてきた。


「子狐さん。今日より暫くの間、此処には近づいてはなりません。」


「怖いお化けがでますよ。」と優しい口調だったが、その眼差しは真剣そのもの。

僕は、本能で危険を感じた。『桜』さんは・・・姫は大丈夫なのだろうか?

僕は、巫女装束の女性に聞いてみる。「『桜』さんと姫は、大丈夫なのですか?」と。


「私も『音』も大丈夫です。」

「ただ、この場所自体が暫くの間危険になるのです。」


「暫くとは、何時ぐらいまででしょうか?」


僕は尋ねる。


「そうですね・・・1週間ののち、下の社に『音』が居たならば、もう大丈夫です。」

「ただし、居なかった場合は・・・」


「もう、ここには近づかないでください。」そういって、僕に帰るように促した。

僕も本能で危険を感じていたからか、帰る事にした。

そこで気が付いた。


”私も『音』も”


もしかして、貴女が『桜』さん!?

僕は、振り向くと・・・巫女装束の女性・・・『桜』さんは、にこりとほほ笑むとその姿は陽炎のように消えた。



それから、1週間が過ぎた。

僕は、二人の事を心配するも、『桜』さんの元へ行く事が出来なかった。

『桜』さんの言っていた1週間。僕は、1週間ぶりの山道を登る。暫くすると、社が見えてくる。そこに・・・

・・・姫の姿は無い。

姫が居なかった場合は・・・


「もう、ここには近づかないでください。」


『桜』さんの言葉がよぎる。でも、でも・・・

・・・それでいいんだろうか?

僕は『桜』さんの事を・・・姫の事を・・・

意を決して、社の裏手に回る。『桜』さんの所まで通じる階段。僕は階段を上る。

きっと上では、何時もと変わらない姫がいて、巫女の姿をした『桜』さんがいる。そう・・・信じて。


グォォォォォォォォォォォォォォ


獣の様な泣き声が聞こえた。

階段を上がり、『祠』の前にたどり着いた僕は・・・


バケモノを見た。


真っ黒い獣の様な姿をしたソレは、辺りに瘴気をまき散らし、今まさに『祠』から出ようとしている。

その前には・・・『桜』さん。

『桜』さんは、そのバケモノを『祠』に戻そうとしている様に見える。


「何故・・・来たのです?」

「『音』が居なかったら、近づくなと言った筈です。」


「で、でも・・・僕は、二人が心配で・・・」


グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ


再び獣が吠える。

その声に体のいう事を聞かない。ガタガタと震え、体は急に冷めていく。


死。


僕は、その声に『死』を感じ取った。


「私が抑え込めているうちに、早く逃げなさい!」


「で、で・・・」


でも、体が動かない。

動けっ動けと命令を出すが、足が、体が反応しないのだ。

そのうちに・・・バケモノと目が合った気がした。


「子狐・・・逃げるの・・・じゃ・・・」


そのバケモノは、姫の声を発した。


「え、ひ、姫・・・!?」


「力が弱まった!?」

「子狐さんっ今のうちに・・・早く!!」


僕は、動かぬ体を倒し、転がるように階段を下りた。

ある程度距離があいたからなのか、社の辺りまで来ると足が動いた。

僕は、逃げるように山道を駆け下りた。

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