表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第5章 『学校の七不思議』 ~華音の章~
25/45

『学校の七不思議』 ~華音の章~ 其の二

夜。

私は学校の前で、香奈達を待つ。

最初に来たのは双子。次に香織。遅れて香奈も到着する。


「皆、集まったようだな。」


「さぁ〜〜て、何処から行こう??」


「うむ、其れなのだが・・・」


双子の赤い方の問いに私は答える。

此処が重要だ。

正解は3つある。

特に『桜』は危険を伴う・・・可能性がある。

これを避けさせ、且つ他の所の3つを正解と思わせる・・・もしくは、『桜』が正解だが、確認には行かない。と言う流れを作るようにしなければならない。


「先ずは、体育館、音楽室、衣装室と特別教室棟を回った後、旧校舎に向かうのが効率がよかろう。」

「正し、『桜』に行く事は許可出来ない。」


「何で?」


「何でも何も、山道を登らなければ『桜』には行けない。」

「暗闇で山道を歩いて、怪我でもされたら問題だ。」


「ま、理にはかなっているわね。」

「それに、『桜』以外を行くのならば、『桜』に行ったのと変わらないわ。」


「それで、本当かどうか分かるしね。」と香織。


「むむむ・・・確かに『桜』まで行けないかも?」

「でも、華音さんが外したって事は、それは正解じゃないって事だよね?」


「そうですね。」


と、双子達も納得したよう。

香奈はと言うと、難しい顔をしていたが、結局は私の提案通りとなった。


「こういうのってドキドキするわね。」


こうして、肝試しは始まる。



--------体育館--------



・誰もいない体育館でボールの音がする。


夜の校庭は、シーンと静まり返っている。

私達は、渡廊下を歩いた先の体育館に向かう。

普段出入りしている扉は、夜なので当然閉まっている。

私達は、体育館の隅にある扉から中に入る。

入った場所は体育倉庫で、そこを通過して舞台袖を通り中へ入る事が出来る。


「夜の体育館って怖いですね・・・」


「わ、私は、へ、平気だし・・・」


とても平気そうに見えない。

さて、少し驚かしてやる事としようか。

・・・一応、名目上は肝試しって事らしいからな。

私は一人、体育倉庫に戻ると、バスケットボールを2つ取ってくる。


「先ずは、体育館でボールの音だったな。」


「う、うん。」

「私の聞いた話だと、遅くまで部活で残った帰りに扉が閉まってて、真っ暗な体育館からボールの音が・・・」


ターン・・・タンタンタン・・・


私はバスケットボールを一つ床に落とす。


「ひょわわわわわわわ〜〜〜〜〜〜」「きゃ」「・・・」


双子の赤い方の声の方がびっくりした。

青い方はすっかり固まっている。


タン、タン、タン


今度は、ドリブルをする。


「とまあ、こんな感じにだな・・・」

「ここは構造上、戸締りをしたら体育倉庫を通って表に出なければならない。」

「多分、戸締りをした先生が、倉庫の中のボールを落としたんだ。」

「体育館の音はよく響くからな。」


「華音さ〜〜〜んっほんとぉぉぉぉぉに怖かったよぉぉぉぉ」


「・・・」


「ほんと、人が悪いわ。」


「ん?だってこれ肝試しなんだろう?」

「脅かす役がいないとな♪」


まあ、香奈は私が体育倉庫に戻ったのに気が付いていたようだがな。


「じゃあ、これは違う!」

「次行こう、次!」


「・・・」


立ち直った双子の赤い方に急かされ、次の場所・・・音楽室へと向かう。

・・・双子の青い方は、まだ固まっていた。


カチリ。


扉に鍵を掛け、体育館を後にする。


ターン・・・タンタンタン・・・・


・・・

・・・

・・・



--------音楽室--------



・音楽室の肖像画の目が動く。


渡り廊下を戻り、特別教室棟へと入る。

夜の校内は、窓から入る月明かりに照らされ別の世界にも思える。

音楽室は3階。階段を上り、音楽室の前に立つ。

鍵を開け、中に入る。

音楽室の壁には、音楽家の肖像画がズラリと並んでいる。

暗闇に浮かび上がる肖像画は、それだけで恐怖を与える事だろう。


「よ、夜に見る肖像画ってすごく怖いんですけど・・・」


「・・・」


「そうね、カナリ怖い。」


パチリ


「ひょうわっ」「っと」「・・・」「あ。」


私は音楽室の電気を付ける。


「も、もう華音さん、ビックリしたよ!」


こくこく


双子の青い方はまだ復活していない。


「此れならば、怖くないだろう?」

「人は視覚情報を断たれると”不安”になる。」

「ある種の恐怖を感じたり・・・まあ、気分の良いものではないな。」

「そういった時に、今動いた気がしたっとか思ったんだろう。」


疑心暗鬼。

疑いの心を持っていると、いもしない暗闇の亡霊が目に浮かんでくる。


「えっと、つまり気のせい?」


そう、殆どは気のせいなのだ。


「つ、次に行きましょう、まだ2つ目ですし・・・」


漸く復活の兆しが見られる青い方に促され、次の場所・・・衣装室へと向かう。


パチリ


電気を消す。


そう、殆どは気のせいなのだ。



--------衣装室--------



・衣装室の大鏡に姿が映らない。



音楽室の近くにある衣装室。

被服室の準備室と兼用の部屋で、演劇部が部活で使う衣装なんかが収められている。

一般生徒は入る機会はほとんど無い。入るのは演劇部の生徒・・・もしくは文化祭の時期に劇をやるクラスくらいだろう。

鍵を開け、中に入る。


パチリ


直ぐに電気を点ける。

流石に皆も2度目はビックリしなかったようだ。


「結構、衣装ってあるのね。」


「昔はうちの演劇部、結構有名だったんだぞ?」


「あ、そうなんだ?」


「初めて聞きました。」


「これが、その大鏡だろう。」


布が被った大きな鏡。

衣装をあわせる時に使う全身が映る鏡だ。


「えっと・・・布とっちゃっていいですか?」


「構わんよ。」


香奈は鏡にかけられた布を取る。

それを見た、双子達と香織が鏡を覗き込む。


「ま、まあ、映らなかったら鏡じゃないもんね。」


当然、3人の姿が映ったようだ。


「鏡と言うものは、何かしらのチカラがあると考えられてきたんだ。」

「ありのままの姿を映す・・・それが真実を映すとなり、姿が見えない物が映ったり、または死んでいるものは映らない等の話が出来たと言われている」

「そういう話から、姿が映らないって『七不思議』が出来たんじゃないかと思う。」


「へーそういうものなんだ〜」


「勉強になります。」


「なんか、華音さんの怪談講座みたいになってきたわね。」

「じゃあ、次に行きましょうか。」


「香奈、布を掛けておいてくれ。」


香奈は大鏡に布を掛け、衣装室を出る。


見えないものが映ったり、死んだ人は映らない。

そんな鏡の話は、ごまんとある。

そして、その多くは・・・普通の鏡。問題があるのは、映り込む”モノ”の方にある。

世の中に『不思議』な事は結構ある。

そんな『不思議』が鏡の前に現れる事も・・・


「ほら、香奈行くわよ。」


「あ、うん・・・」


そして・・・次の場所、旧校舎のトイレへ向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ