『学校の七不思議』 ~華音の章~ 其の一
「肝試し〜?」
香奈達が夜の学校で七不思議の検証と称した肝試しをしたいと言い出した。
こちらとしては、親御さんから生徒を預かる身でもある。当然、夜の学校で・・・などと言うのは許可出来る物ではない。
それに・・・
「へぇ〜肝試しですかぁ? 楽しそうじゃないですか!」
「ねぇ華音様〜いいじゃないですか〜」
事態をあまり理解していないのか、花子は能天気に言う。
「こちらとしては、親御さんから君達を預かっている身だ。」
「何かあったら申し訳が立たない。」
私は、理事長としての立場的な話をする。
まあ、香奈は兎も角、双子達はこのくらいで納得するとは思えないが。
「え〜いいじゃん!ちょっとだけ、ほんのり?」
やはりと言うか・・・双子の赤い方は、食い下がって来る。
正直な所、許可しなかったとしても、双子達は夜の学校に入るだろう。
其れならば、
「まあ、条件付きで許可しよう。」
条件付きで許可した方がマシだ。
意外そうな顔をする香奈。
「香奈。」
「あの双子、許可しなかったら勝手に入るぞ?」
「其れならば条件・・・つまり私が引率して、目の届く所に居てもらった方が幾らかマシだ。」
条件とは、私が引率する事。
少なくとも、私の目が届く範囲ならば、危険も少ないだろう。
『桜』にさえ、近づかなければ。
「ありがとう、華音さん。」
香奈はにこりと微笑む。
その笑顔に私はどきりとさせられた。
「と、ところで、この『七不思議』だが・・・誰が調べたんだ?」
私は、はぐらかす様にもう一点、気になっていた事について尋ねる。
「私と姉さんです。」
「そそそ、苦労したんだよ〜〜」
「ふむ、そうか・・・」
「何か気になる事でも?」
「いや、割と正確だなと思ったんだ。」
「正確?」「正確??」「正確???」「正確!!」
そう、『正確』・・・本当の七不思議がそこに含まれていたのだ。
「普通は適当なのが殆どで、本当の『七不思議』なんて入っていても一つ位だな。」
「これは、三つ正解だ。」
三つ正解。全部ではない。
「なんだ3つか〜」
「全部合ってないと・・・」
「華音さん。どれが正解なんですか?」
双子達は、全部正解ではない事を気にしているよう。
だが、そもそも七不思議などと言うが、”七つあるとは限らない”また”七つ以上ある”事例だってある。
何故七不思議などと言うのか?それは単純に他も七つとしているから合わせているだけだ。
全ての学校が七つ。ということ自体がおかしいのだ。
そして、『霧華高等学校』の七不思議は前者。七つ無い。
双子達が言っている七不思議は・・・
1、トイレの花子さん。
2、誰もいない体育館でボールの音がする。
3、音楽室の肖像画の目が動く。
4、衣装室の大鏡に姿が映らない。
5、階段が増える。
6、開かずの教室がある。
7、咲かない筈の『桜』が夜に花が咲く。
この中の三つは本当。
そしてそれは、私と花子の秘密にも関わる事・・・
「ね、ねぇ・・・やっぱりやめない?」
香奈は三つが本当。と言う事実に不安を覚えたようだ。
私だって、出来れば・・・まだ・・・
・・・いや、そろそろ知って貰わないといけない時期なのかもしれない。
私は、花子に目配せをする。
最初こそ、能天気にしていた花子だが、私の意を汲み取ってくれたようだ。
「大丈夫です。香奈ちゃん」
「華音様は、危険だと思ったら許可しませんよ。」
「それに・・・私も後で合流しますから。」
花子は決意してくれたよう。
ならば私も、覚悟を決めなくてはならない。
「大丈夫だ。」
「それに・・・そろそろ知っておいて欲しい事もある。」
「・・・友達として。」
夜の学校で肝試しと称した七不思議検証・・・それは、私と花子が皆に受け入れられるのか?
そんな覚悟のいるものとなった。




