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『霧島華音・転』 ~『不思議』の『何でも屋』~  作者: hermina
第1章 『願いが叶う壺』 ~花子の章~
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『願いが叶う壺』 ~花子の章~

ドドドーン


バスケットボール程の大きさの火球が、私のすぐ横で炸裂し、轟音を上げた。


「ちょちょちょ、華音様〜何とかして下さいよぉ〜」


「・・・情けない声を出すな、花子。」

「暫く時間を稼げと言っただろう?」


「もう、無理っ絶対無理ですぅぅぅうぅ?」


そもそも私は、攻撃系のチカラを持ち合わせていないのだ。

まあ、移動系なら、チョット自信あるけどね〜

ちなみに此処は、『霧島華音』の店内。

あそこの一見『小学生くらいのゴスロリ風な女の子』は華音様。

私の恩人で、私がお仕えしている方。

そんで今、火球を投げてきたのが・・・


「あれ、絶対グレーターデーモンですって!!」


某有名ダンジョンRPGのソレでは無く『壺の悪魔』


「良かったじゃないか、仲間を呼ばせれば、いい経験値稼ぎになる。」


「むちゃくちゃ言わないでくださ・・・」


私は、全裸のが強い忍者じゃないですぅ!って言おうと思った矢先・・・


ドーン


またも火球が炸裂。


「あぶなーーー」

「って言うか、結界狭すぎじゃありません?」


「エコロジー」


「この際、エコは気にしないでください!!」


『霧島華音』は、廃業したスーパーマーケットの建物の一部を改築したので、中は割と広い。

今戦ってる此処も、元はフロアだった部分になる。

とは言え、フロア全てが結界の中と言う訳ではない。

いくら私でも、そのうちに被弾してしまうかもしれない。


「あーもう無理〜」

「無理ですぅぅうぅぅ〜」


扉を使えば、私のチカラで外には出れるんだけど・・・

反撃できない以上、その隙もない。


「そもそも私、攻撃系もってないんですからぁぁぁぁぁ」


まあ、チカラを使って、外に逃げたら・・・すんごく怒られると思う。


ドドドーン


さて、どうしてこうなった。

それは、一時間程前の事である。


『ココロード』

この閑静な商店街にある『霧島華音きりしまかのん』、『不思議』を扱う『何でも屋』。

元々スーパーマーケットだった所を一部改築し使っているので、中は広いが使っているのは、事務所があった部分だ。

そして、今日も閑古鳥が鳴いていた。


きぃぃぃぃぃ


少し軋む扉を開け、ひとりの少女が入ってきた。

多分、1週間ぶり・・・の来客だと思う。


「・・・店主の霧島華音さんでしょうか?」


入ってきた少女は、私に話しかける。

私は、またこのパターンかぁ・・・と思いながらも、華音様の方に向き直る。


「い、いえー、華音様はこの方です・・・」


私は、奥の机にいる華音様を紹介する。


「へ?」


あーうん。

そういう、リアクションだよね?


「はぁ・・・もう、そういうリアクションは見飽きている。」

「で、ご用件は?」


「すみません・・・この『壺』を『処分』してください。」


少女・・・客の名は、『桃井香奈ももいかな』さん、女子高校生で17歳。

あ、でも『壺』だったら、市の処分場で引き取ってもらえるんじゃ?と思い・・・


「あ、それでしたら、ゴミの処分場に行かれた方が・・・」


「馬鹿かお前は・・・」

「”『処分』しようとしたが、出来なかった”から此処に来た。」


ですよねーーー

はい、すみませんでした。

と心の中で反省。


「はい・・・捨てても何時の間にか部屋にあるんです・・・」


「詳しく話を聞こう。」


言うと、華音様は席を薦める。

香奈さんは、薦められたソファーに座ると、ぽつり・・・ぽつりと話し始めた。


「はい、実はこの『壺』は『願いを叶える壺』なんです。」


「願いを叶える!?」

「って、なんでそんなものを捨てるんです??」


「黙れ馬鹿。」

「続きを頼む。」


・・・私、ドMじゃないですよ?

結構、グサッとくるんですから・・・

そんな私を後目に、香奈さんは話を続ける。


「実はこの『壺』の持ち主は叔父なんです。」

「叔父はこの『壺』を手に入れて以来、幸運に恵まれたらしいです。」

「宝くじが当たったり、仕事も大成功したそうです。」

「しかし、先週亡くなりました。」

「事故・・・だったそうですが、葬儀の後『遺言』らしきものを見つけたんです。」

「内容はこうです。」


私はもうすぐ死ぬかもしれない。

私が死んだ後、『壺』を『処分』して欲しい。

あれは、『願いを叶える壺』なんかじゃない。

最初は幸運に恵まれるかもしれない。

しかしそれは『罠』だ。

その後、どんな恐ろしいことが起こるかわからない。

どうか『壺』を『処分』して欲しい。

決して、『壺』に願いを言わないように・・・


「その『遺言』を知っているものは?」


「・・・私だけです。」

「『壺』は絵画のモデルにすると言って、私が貰いました。」

「その後、『処分』しようとすると、戻ってきてしまうんです。」


「『壺』の『契約者』が君に移ったようだな。」

「願いは?」


「それが・・・」

「勝手に・・・勝手に願いを叶えるんです!!」

「ちょっと、いいなぁとか口に出しちゃった事とか全部です!」


「・・・ふむ、分かった。」

「失礼、少々『壺』を見せてもらおう。」


古ぼけた、黄土色の『壺』

多少のひびはあるが、しっかりしている様に見える。

そして・・・規則性のある『謎の紋様』

何より、良くないチカラを感じる。

それは、華音様も感じているようだ。


「結論を言おう。」

「その『壺』は『悪魔』だ。」


「願いが叶った分の魂が奪われる。」

「願いが大きい程、奪われる魂も多い。」

「つまり・・・最悪は死ぬと言う事だ。」


「わ、私・・・死ぬんですか?」


そう言うと、香奈さんは真っ青になって震えている。


「大丈夫、方法はある。」

「その『壺』を誰かにあげる事だ。」

「そうすれば、叶った願いの分だけしか魂は奪われない。」

「ささいな願いであれば、問題は無いだろう。」


「で、でも、その『壺』を貰った人は・・・?」


「『壺』の秘密を知らなければ死ぬ。」

「しかし、教えたならば貰ってはくれないだろう。」


「そ、そんな・・・」

「だったら、私はどうしたら・・・」


店内が静まりかえる。


「か、華音様・・助けてあげましょうよ?」


助ける方法があれば、華音様はきっと助けてくれる。

私がそうだった様に・・・


「香奈・・・だったな。」

「『遺言』の事を他の親族に内緒にし、理由をつけて『壺』を持ち帰った。」

「それは、願いがあったからだ。」

「少しくらいなら・・・と思い、願いを言った。」

「だが、危機感を感じ『処分』しようとした・・・違うか?」


「・・・はい、その通りです。」

「私には悩みがありました。」

「・・・友達が居なかったんです。」

「それで、『壺』にお願いをして・・・」


「それは、本当の友達じゃないと思います。」


私も友達は少なかった。

でも、友達ってそういうものじゃない・・・と思う。


「その通りだ。」

「香奈自身も、それは分かっただろう。」


「はい・・・」


「ふむ。」


華音様は、ぽんと手を叩き・・・


「『霧島華音うち』で買い取ろう。」

「そうだな、お代はこの『壺』の鑑定料と同額いただこう。」


「鑑定額と買い取り額が一緒ってどこのボッタクル商店ですか!!」


某有名ダンジョンRPGのお店は鑑定額で買い取るのだ。

つまり・・・必要ないものはタダで持って行かれる。

正にボッタクル商店なのだ。


「それでは、華音さんが・・・」


「『壺』の『処分』の方法は心得ている。」

「だが、買い取ると君の魂を奪いに来るだろう。」


香奈さんは少し考えて・・・


「・・・わかりました。」

「よろしくお願いします。」


と答えた。


「って、私のツッコミはスルーですか!!」


ツッコミをスルーするのはマナー違反だと思います。


「花子。」


「は、はいっ華音様!」


「お茶入れてきて。」


やっぱり、スルーでした・・・OTZ


・・・

・・・

・・・


「これで、この『壺』の所有権は移った。」


「では、香奈さんが・・・」


「まだ大丈夫。」

「『霧島華音ここ』にいる限りは。」


そうか、此処にいれば良くないモノは、チカラが出し切れない。

此処は”そういう”場所なのだ。

さらに、私も華音様も居る前では、魂を奪う事も出来ない・・・だろう。


「花子」

「結界を張る、フロアに出ろ。」


「はいっ華音様」


「香奈は、結界の外で待て」


「はい?」


キョトンとする香奈を後目に華音達はフロア・・・

・・・元スーパーマーケットの売り場だった部屋に向う。


「結界」


『魔術』

どんな物も多かれ少なかれ持つ『魔力』と言うモノを媒体にを起こす『不思議』なチカラ。


「では、願いを叶えて貰う。」


「へ?華音様??何を言って・・・」


「『壺』よ」

「この世から不幸を無くせ。」


ぴき・・ぴきぴきぴき・・・


「この手のモノは、願いが叶えられないと、本性を現す。」


「『此の手』の『壺』は良くある。」


曰く、


3つの願いを叶える『壺』。

願いを叶えた後、買った値段より安い値段で売らないといけない『壺』。

等々・・・

共通するのは、『最終的に命を奪われる。』のである。


「本性を現し、具現化した所を『処分』する。」


あ、なんかやばそうな感じ。


「それってつまり・・・」

「バトルって事ですかぁぁぁぁぁぁぁ??」


ぴきぴきぴきぴき・・・ぱりん。


『壺』が割れて、中から『悪魔』が現れる。


「話が違いますよぉぉぉおぉ」


・・・

・・・

・・・


そして、現在。


「華音様ぁ?まだですかぁ?」


多分、バトルが始まってから1〜2分しか経って無いと思うけど、避けるだけじゃそろそろ限界。

華音様〜早くしてくださいよ〜〜〜


「花子」


「はいっ華音様っ」


私は『壺の悪魔』から距離をとる。


熱閃爆炎メガブレイズ


華音様が放ったのは、数ミリの熱線。

それが『壺の悪魔』に触れると、轟炎になる。


「華音様、此方です!」


「うむ。」


私は扉へと案内する。

私のチカラ・・・それは扉があれば”どこにでも移動できる”というもの。

その直後、全てを焼き尽くすかの炎が、結界内に巻き起こる。


「え・・華音さん! 大丈夫ですか!!」


香奈さんは驚き身を乗り出す。


「あ?大丈夫ですよぉ」

「結界がありますから?」


私と華音様は、事務所のトイレの扉から出て、香奈さんの後ろに立っていた。


「え? 花子・・・さん?」

「いったい何処から・・・」


「何処って、そこのトイレから出てきたんですけど?」

「まあ、これで解決ですねぇ?華音様?」


「うむ。」


「え、えええ?」


炎が収まると、其処に『壺の悪魔』の姿はなかった。

そして、割れた『壺』がひとつ・・・残っていた。

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