『黒歴史ノート』 ~花子の章~ 其の六
『ベータ大侵攻作戦』開始まであと5分。
「総員、配置についたな?」
「我の方はおっけーじゃ。」「『幻影』部隊、配置完了だ。」「『深海』、準備良し。」「・・・・」
「『白狼』、何か言え!!」
「『漆黒』、準備完了だ。」
5ヶ所の迎撃ポイントのうち、本隊以外は『神羅』、『幻影』、『深海』、『白狼』を中心にそれぞれのギルドメンバー達が配置に着く。
私は、華音様、香奈ちゃん、直哉さん、香織ちゃん、と共に本隊の迎撃にあたる。
「って言うか、風属性の魔法・・・案外便利ね。」
「これがあれば、すぐに凍夜兄さん(直哉)と合流できたのに・・・」
離れた場所のフレンドと会話する風属性の魔法『ウインドチャット』。
風属性には、補助的な魔法も多いが、私も華音様も・・・どうやら、香織ちゃんも使えない様。
「ギルマスの必須スキルじゃぞ?」
「兄と”イチャラブ”プレイばかりしておるから・・・」
「し、してないって!!」
『神羅』と香織ちゃんは、雑談している模様。
それにしても・・・
「まったく、緊張感がありませんねぇ〜」
「あ、華音様、お茶です。」
私は、質量を無視して収納できる謎の袋から、テーブルにイス、さらにティーセットを取り出し紅茶を入れる。
「うむ、頂こう。」
「花子さん達も緊張感ないからーーー」
香奈ちゃんの全力のツッコミが炸裂した。
『ベータ大侵攻作戦』開始・・・ステージ1・・・スタート。
「皆の健闘を祈る。」
「「「「了解ッ!!」」」」
この『ベータ大侵攻作戦』は、5つのステージに分かれている。
それぞれのステージで侵攻してくる『ベータ』を殲滅させるというものだ。
そして、最終ステージには、各所ボスが出現する。
メインとなる『ベータ本隊』の所には、『ベータ指揮官』が現れ、
それを含む各所全ボスの撃破ができればクリア・・・らしい。
だって、誰もクリアしたことが無いんですから・・・
「『ベータ』確認・・・近接タイプ20です!」
「まずは小手調べって訳か・・・」
「俺と香奈、花子さんは、前衛・・・香織、華音さんアタック宜しく!」
直哉さんの声で私は、前線に駆け出す。
本来4人までパーティーが組めるのだが、今は5人の為、私と華音様と香奈ちゃんの組と直哉さんと香織ちゃんの組、3:2でパーティーを編成している。
ここで問題になるのが、HPの管理。2パーティーになっている為にパーティー間ではHPの目視が出来ない。
「全員のHPが目視が出来ない状況なので、華音様と、香織さんはHPの管理の情報共有をお願いしますね〜」
「言われんでも、分かっておる。」
「彼の者たちの動きを封じよ!『シャドウバインド』」
華音様の得意な闇属性魔法。その中でも数少ない補助系魔法。
無数の影が、『ベータ』の動きを封じる。
「燃やし尽くせ紅蓮の業火・・・『クリムゾン』!!」
そこに香織ちゃんの火属性魔法が炸裂。
中心程威力の高くなる魔法である『クリムゾン』。しかし外周部分は、何体かの『ベータ』が残った。
「雷光一線・・・『スラント』!」
「雷槍一線・・・『スライド』!」
私はそのうち、右側の『ベータ』に出の早いスキルを叩き込む。
逆サイドの『ベータ』は直哉さんの『スライド』の対となる大剣スキル『スラント』で一掃される。
「この、『烈光』の技の冴え・・・見たか!」
私は、『グングニル』をヒュンヒュンっと回し、ポーズを決める。
き、決まった・・・私、めちゃくちゃかっこいいわ・・・
実は、この動作も『演武』といって、槍のスキルで次の攻撃の攻撃力及び効果範囲を上げるだけどね。
「花子さんっかっこいいです!!」
「っと、来ますっ近接20に遠距離タイプ10・・・」
ヒュンヒュンヒュン・・・
遠距離タイプ『ベータ』のレーザー攻撃が降り注ぐ。
「通しませんっ!『ゾーンシールド』!!」
香奈ちゃんは盾スキルで、全ての攻撃を防ぐ。
・・・香奈ちゃん、相当の盾使いだねぇ♪
ならばこちらも・・・
「必殺の一撃を受けよっ! 『スライド・エンド』!!」
先程の『スライド』をさらに高威力、広範囲にしたスキルを放つ。
「やるな!『烈光』!!」
「こちらも行くぞ・・・『ハイ・スラント』!!」
直哉さんは、またも対となる大剣のスキルを発動する。
直哉さん、わかってるわ〜♪
うんうん、凄くかっこよく決まった♪
「なんか、前の方が楽しそうだな。」
ごめんなさーい、すんごく楽しいでーす♪
「お兄ちゃんの浮気者ーーーーッ『ヴォルケーノ』!!」
巻き起こるマグマの渦が遠距離タイプを焼き尽くす。
ちょっ香織ちゃんっ危ないって!
「・・・妹よ・・・浮気者って表現に疑問を感じるのだが・・・」
「気にしたら負けっ!」
「ブラコン・・・」「ブラコンだよね?」「ブラコンだな。」
ここにきて、香織ちゃんのブラコン説が浮上。
普段の香織ちゃんは、どちらかと言うと”お姉さんキャラ”だから、ギャップが可愛い。
(エマージェンシー・・・エマージェンシー)
そんな事を考えていたら、ステージボスの登場。
「なんだ、『サイクロベータ』じゃない。」
「復活怪人は、雑魚なのよっ『クリムゾン・ノヴァ』」
「うむ、『エクリプス』」
「だよなぁ・・・『シャイニング・エッジ』」
出現するや否や、スキル、魔法を叩き込まれる『サイクロベータ』
うん、ちょっと『サイクロベータ』は今更感があったよね。
(ステージ1・・・クリア。)
(10分のインターバル後、ステージ2を開始します。)
あっさりと、ボスを撃退。
「・・・ところで、復活怪人ってなんですか?」
まあ確かに・・・復活怪人何て言っても、分からないよねぇ・・・
ちょっと年齢がバレる・・・
・・・
・・・
一人取り残される香奈ちゃんに対し、あはははは〜と、乾いた笑いしか出来なかった。




