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馬車の中で

カイラーグ公国へは、馬車の旅で約二週間にも及ぶらしい。

ジェイドくんは「すぐ着く」と言っていたけど、二週間の距離がすぐ着く範囲なのかと…私はこの世界の広さを垣間見た気がした。


大きな大きな馬車の座席部分はふわっふわのソファで、両側に二人が楽に座れるスペースがあった。

私達の乗っている馬車は二匹の馬が引いていて、どちらも案外早いスピードで街路を駆け抜けているが、驚く事に全然揺れないし乗り心地がもの凄く良かった。

多分これが、昨日ジェイドくんの言っていた魔法の力なんだろうと当たりを付ける。


そして大きな二つの窓の片方…私側の窓から覗くのはまだ街で、赤いレンガ造りの家がどんどん後ろに流れて行っている。


「…楽しいか?コユキ。」


そんな私を見て、面白そうに笑っているジェイドくんに頷いて「楽しいよ」と笑って伝えると、ジェイドくんもちらりと窓の向こうに広がっている市街地を見た。


「もうそろそろ街を抜けて、森に入るぞ。

あそこは木ばっかりで、何も見るものは無いと思うけど…。」


「そうなの?じゃあ、森には行ったら前を向いておこう。」


「ん。そうしときな。」


そう言うと満足そうに笑った。

…そうこう言っている間に街の端に来たみたいで、窓の外にはちらほらと大きな木が見え隠れしていた。

街道から森に入ると、少しだけ暗くなる。


「そう言えば…カイラーグって港町なんだよね?」


「まあ…近いけど少し違うな。

実際には馬で半日行った所だ。」


私は首を傾げる。

港町なのに…馬で半日行かないといけないの?


「あー…うん、コユキの言いたい事すごく良く分かるよ。

って言うかカイラーグに来た事の無い人は大体首を傾げると思う。

…カイラーグは田舎町や国の中でも最大級の領地を持っていて、他の国とかから孤立しているんだ。

それに他国の大公爵だった身分の人がその領地を仕切ってるんだから、国の内情は最初こそボロボロだったよ。」


笑いながら言っているジェイドくんに、私は目を丸くする。

…そんな所の王子様なんだよね、ジェイドくん。


ぱちりと目を一度閉じると、そこにはにやにや笑顔のジェイドくんが居て、私が首を傾げた瞬間に隣の席へと移動して来た。


「詳しく聞きたいだろ?」


「うん。…でも、別に隣に来なくても…。」


馬車の座席は広い、けど…一応一人用の座席に二人が座るとさすがに狭い。

肩と肩がぶつかる距離に居るジェイドくんは、それが分かっててやっているのだからかなりたちが悪い。


僅かに上昇した体温に気付いているジェイドくんは、にっこり笑って話しを続けてくれた。

……上機嫌だ。


「でも開国…五十年かな?つい最近五十周年式典やったから。

五十年の間に色々な事に対してバランスが取れたんだ。

初めこそバラバラだったみんなの意識を、親父が聞き入れて統率した。

そんで近隣の国や街の人達と協力して、カイラーグと言う異種異民族を受け入れる大きな国を作ったんだ。

…ま、異種異民族を受け入れる考えを取り入れたのは、ばちゃんの意見が通った訳だけど。」


「…エチカさん?」


「そうだよ。ばあちゃんはユキノさんと出会って異世界の存在を強く感じたらしい。

俺達の居た街のあの家を拠点に、様々な方法でユキノさん達の世界に干渉しようとしていた。

…自分の生涯の全てを賭けてでも、ユキノさんと会いたかったんじゃないかな。」


ふと影を指したジェイドくんが心配になって、ふと顔を覗き込むと。

ふっと息を吐き出して私の背中に腕を回した。

…ジェイドくんの腕が背中にあると言う事は、なぜか私は抱きしめられていると言う事で…。

さっきようやくおさまった赤みが戻って来て、私は身を震わせた。


「でも…ばあちゃんの奇跡は続いてた。

俺が、コユキさんに会えたから。」


「…………」


言われて思う。

それは…私だってそうだ。

おばあちゃんの言っていた事が絶対に怒っていると思っていた。

親や親せきはそんなことない、あり得ない、ボケてるんだと言っていたけど…。

私はずっとエチカさんの事を考えて、私も会ってみたいと思っていた。

それに…色の無いこんな世界から出してくれたのは、実はおばあちゃんなんじゃないかと思っている。


おばあちゃんが亡くなって、私はこの世界に来るまで無機質に生きていた。

毎日が同じサイクルで回っているだけの日常。

おばあちゃんは、私をその世界から出してくれたんだ。


「…私も、ジェイドくんに会えた。」


「うん。」


「私も、ずっとおばあちゃんのお話しが本当だと思ってたから。」


エチカさんに、会いたい。会ってみたいと思っていた。

そしたら、ジェイドくんに会えた。

伝え聞いた綺麗な銀の髪と赤い瞳を持つ、エチカさんのお孫さん。


「だから私、ジェイドくんに会えて…本当に良かった。」


コユキは微笑んで、自分からもジェイドの背中に手を回した。




更新停滞気味ですみませんでしたァアアアア!!!!!(土下座)


ああ、いつの間にかもうこんなに…

と、言う訳でカイラーグ出発一日目ですね。

コユキちゃんは例の如くマーイさんお手製のフリルとリボンに浸食されている布=ワンピースを着ている訳ですね、はい。

挿絵で今度書いてみようかな…等とが作中です笑


次回はまだ馬車の中、いや…途中の街でのお話です!!

待ってました、ライバル!!編ですよ~笑


さあ、ジェイド、ひりひりしろ。


それでは次回をお楽しみに!

Ruru.echikaでした!!

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