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魔法の存在


いきなりですが。

この世界には、『魔法』…と言う不思議な現象が起こるそうです。

本やゲームなどでお馴染みのあの『魔法』が。


そして私は現在、その『魔法』を目の前で見せてもらっています。


「………すごい…。」


きっとこれを感嘆のため息と言うのでしょう。

床から二十センチ程浮いた所で、コップに入っていたジュースを浮かべているのを見ていると。

それはまるで宇宙飛行士が宇宙ステーションでして居た光景みたいだ。


「くち開けてみな?」


笑顔で言われて、首を傾げながらも少しだけ口を開く。

すると近付いて来るオレンジ色の液体が入って来て、眉をしかめる。


「んっ、」


ごくりと喉を鳴らせば、それはやっぱりさっきコップに注いでもらったオレンジジュースで…。

私は尊敬のまなざしでジェイドさんを見上げた。


「…ジェイドさん、すごいです…。」


「ま、生まれ持った物もあるけど…この魔法は理を理解していれば結構多方向に伸ばせるからな。」


そう言って、ジェイドさんは指を鳴らす。

パチンと指が鳴ると同時に、私の身体がふわりと持ち上がる。


びっくりして目をつむると、ジェイドさんの優しい手が降って来て頭を撫でられた。


「大丈夫、怖くないから。ホラ、目開けてみな。」


そろりと目を開けると、そこにはなぜか穏やかな表情のジェイドさんが目の前に居て、違う意味で驚いた。


「俺が抑えてるから、絶対落ちねえよ。」


「は、はい…。」


もはや『お姫様だっこ』の形になってしまったが、浮いているおかげでジェイドさんに負担が掛かるワケでもなさそうなので、少し落ち着いて辺りを見回した。


「…これって、どうやって浮いてるんですか?」


「重力魔法の応用だから、言わば俺達に掛かっている重力を軽くしてるって事。

あとは…そうだな、いくつかの魔法を併用してるけど、そこまで難しい事をしてる訳じゃないよ。」


「…いいなぁ。」


「……人には一応、生まれた時からある程度の魔力は備わってるんだけど、コユキさんはこっちの生まれじゃないからかな…あんまり魔力を感じない。」


言ってジェイドさんに手を取られて、首を傾げる。


「ああ…人の手に魔力は集まってるんだ。

…手、ちっさいなコユキさん。」


「そりゃ…男の人には負けますけど…。」


論点がずれているのをお構いなしに突っ込むと「コユキさんも小さいもんな」と笑われてしまった。


…しかし、そうだったのか。

と言う事はエチカさんにも魔法を使える力が宿っていたと言う事だ。

でも…私はおばあちゃんにそんな事一度も聞いた事無かったな…。


「…実は魔法は、8年前まで使用禁止されてたんだよ。」


「え?どうしてですか?こんなに素敵なのに…。」


魔法を解いて、コユキを椅子に降ろしてやりながら、ジェイドさんは「どうしてだろうな」と悲しそうに笑った。


「…ま、取り敢えず今現在は魔法の使用も認められて、公にでは無くても魔法を使う人達は増えたよ。

明日呼んだ馬車も、馬や座席なんかも魔法で強化されてたりするから、結構快適な旅になると思うけど。」


「………カイラーグまでって、2週間くらいでしたっけ?」


「そうだよ。」


笑って答えたその顔に、さっきまでの悲しそうな感じは無かった。

…ジェイドさんは、エチカさんのお孫さんで…私が知ってる事ってあまりないんだよね。


綺麗な銀の髪も、赤い瞳も。

私は初めて見た。

そしてもの凄く整った容姿、物腰の上品さ。

初めて受けた、こんな女の子扱いに、私は初めは戸惑った。

だけど笑顔のジェイドさんを見て、怖がらなくてもいいんだ。

警戒しなくてもいいんだって思えた。


もちろん、エチカさんのお孫さんだからって言う部分もあるけど、なによりも一生懸命で誠実なジェイドさんの態度を見て、私はジェイドさんに甘えても良いんだって思えた。


知りたいと思うのは、私の我儘だけど…ジェイドさんは、どう思うのかな。


「…コユキさん?」


不思議そうに目を丸くして首を傾げるジェイドさんに、私は意を決して問い掛ける。


「ジェイドさん、あのね?」


「なんだ?」


やっぱり穏やかに微笑みかけてくれるのが嬉しくて、私はつい…素直に言葉を落としてしまった。


「…だいすき。」


「………………」


『………………』


………あれ?


言おうとした言葉じゃなくて、私は首を傾げる。

…今私、なんて言った?


「…あ、あの…ジェイドさ」


「…コユキ。」


「はい。」


目の前に居るジェイドさんの表情が見えなくて、私は呼ばれたそのまま、視線をジェイドさんへと向けた。


「お願いだから…これ以上可愛い事言うな。」


言われてふと視線をずらすと、真っ赤に染まったジェイドさんの耳が見えた。


「………でも、本当…よ?」


今日初めて敬語を解いた私を、バッと顔を上げたジェイドさんの赤い瞳が捕えた。


「…先に言ったのは…ジェイド、くん…だもん。」


「……ジェイド、じゃなくて、くん?」


絶対に面白がっているジェイドくんを見て、私は「くん。」と頷いた。


「くん…か。じゃあ次は名前で呼んでくれるよな?…コユキ。」


「…いいよ、その時が来たら…。」


ぷいっとそっぽ向くと、ジェイドくんは笑って「楽しみにしてる」と言うと、私の手を取って口付けた。


「…っ、」


「もう我慢しねえから。これからは堂々と、コユキに対しての愛情表現の仕方、変えて行くな?」


にっこりと笑った笑顔は、それはそれは楽しそうで、安心してもいいのか不安になって来るほどだった。


「……が、頑張る。」


でも、これだけジェイドさんに貰っておいて返せないのも嫌だから、私は顔を赤くしながらもそう返した。

…瞬間、目を見開いたジェイドさんだったが、次の瞬間には不敵な笑みを浮かべていた。


明日からの馬車の旅が、少しだけ不安だった、一日前の朝でした。

ここまで読んで下さってありがとうございます!

Ruru.echika.です!

今回は少しお話し短めでしたが、この世界での魔法の存在と二人の一段階の信頼度アップを書いてみました。

初めはこのまま二人をカイラーグまで持って行こうと思っていたのですが、知り合って日の浅い男女(しかもかたっぽはどう見ても女の子の方超好き)を二週間も同じ馬車に乗せていて良いのか!

と言うかなり私の都合に合わせて変更した次第です。

…ですが結局、同じ家で寝起きしてるんだから、同じでしたねと言う事は私気付いてません(キリッ

次回こそカイラーグへ!

それでは皆さまありがとうございました、Ruru.echika.でした☆

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