表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/15

神様の食堂

太郎は授業を終え食堂で夕食を食べていた。今晩の食堂のメニューはナンと、カレーだった。


  「うまいな、ここの料理は本当にうまい。」

太郎は言った。


太郎は、食堂で、有子先生と向い合せになって食べていた。


  「ここの食堂は、食の神様が経営しておられるので、料理はすべて、一流のものばかりなんですよ。」

洋子先生は、答えた。


日が暮れてきたころだった。太郎はかすかに食堂の隅から誰かが歩いてくるのを見た。

それは、透けて見えており、まるで、人間よりも少し大きいぐらいのニンジンが歩いてくるようだった。


   「あっ、太郎君に言うの忘れてましたけど、夕方になると、ここでは神様が食事に現れるのです。

   別に恐れることはございません。普通の人だと思って、話しかけてみても大丈夫ですよ。」


洋子先生は、食堂にくる神様とは全員と仲が良いらしく、神様も洋子先生を見ると、続々と、ナンとカレーをトレーに乗せて、彼女のテーブルの周りを囲み始めた。


すると、さっきのニンジンの様な神様が洋子先生のとなりに座った。


   「洋子先生こんばんは。」

ニンジンの様な神様は言った。


   「こんばんは。こちらは太郎君です。

    太郎君、こちらは、モミノミコト様です。太郎君、皆優しいですから、怖がらないでくださいね。」


太郎ほ、ナンを口にくわえたまま汗が噴き出てきて、顎が痙攣を起こし、歯が、カリカリ音を立てていた。


   「こ・・こんばんは、モミシダケノミコト様?」

太郎は少々狼狽しながらそう言った。


   「太郎君だね。これからよろしくね。ここの連中は大食いばかりだから、早めに来ないと、なくなっちゃうから、気を付けてね。」


モミノミコトはそういって、他にもマイタケモミジという植物が、建物の横に生えており、夜4時ごろ建物中にその植物の歯ぎしりがうるさいだの、私たちは、壁をすり抜けて、ここに入ってきたが、トウフノモメンという神様だけが、毎晩壁をすり抜けることができず、建物の壁で、今頃うずくまって泣いているだのと、太郎にここの習慣を聞かされたのだった。

  「太郎君、今君は、何歳かね?」


  「僕は17歳です。」


  「そうか、あと3年後に20才か、洋子先生、太郎君はいつ受講を終了する予定なんだい?」


  「2年後です。太郎君なら、確実に2年後の卒業試験には間に合うと思います。

  なんせ、飲み込みが非常に早い子なのです。」


  「20才になると、何かあるんですか?」


  「いや、ただお酒が飲めるだけだよ。我々と一緒にお酒が飲めるようになったら、またここに来なさよ。楽しいからね。」


太郎は神様と一緒にお酒を飲むなんて、とんでもないことだと思った。さらに神様の宴会に参加するには、神様でなければならないらしかった。


  「僕は、神様になんかなれませんよ。」


  「太郎君、あなたは下界の神様に会ったことは、あるかしら?」


  「いいえ、僕は神様に会うのも、モミシダケノミコト様が初めてです。」


  「そうかい、僕の事は、モミシダケと呼んでくれるといいよ。」


太郎は、少し狼狽し、分かりました。と言った。


  「太郎君、神様になるには、下界の神様に会ってごらんよ。そうすれば、何か方法を教えてくれるかもしれないよ。」


  「下界の神様って?」


  「さっきも言った、空豆池におられる神様です。下界の神様はこの建物を作った、

   いわば、ここの社長さんの様な存在です。」


洋子先生はいった。どうやら、空豆池とは、いわば、下界の一番神聖な場所で、そこには「タオライ人」しか、行くことができないらしかった。


  「太郎君が、黄色のリンゴの実をたべて、タオライ人に変身したのも、おそらく、意図的なもののようだね。」


太郎は、はっと思い出した。


  「そういえば、ここに来るときに、あった柴犬、何か見覚えがあったような気がするんです。

   でも、モミシダケ様はなぜそれを知っておられるのですか?」



  「私は、下界では煩悩の神様なんでね。常に下界の人間を観察しているのさ。

  きみがここに来るまでを思い出そうと思えば、すぐに思い出せるよ。

   太郎君には少し、たちの悪い煩悩があることも、手に取るように分かる。」


モミシダケ様は、太郎に「たちの悪い煩悩」が残っていることを教えた。


  「僕の煩悩っていったいなんですか?」


  「君の煩悩は矛盾だよ。」


  「矛盾?」


  「そう、太郎君、君には自分の中に矛盾が潜んでいる。

   君は、確か、ツチノコを探しているんだよね?」


  「そうです。僕は、ツチノコを探しに幹線道路の横にある草むらに居ました。」


  「君は本当はツチノコを探しているわけではないよ。」


モミシダケ様は自信満々にそう言った。太郎はそれをきいて、少しためらいはしたが、少しの沈黙の後また口を開いた。


   「そういえば、僕はツチノコを探しているつもりでしたが、実は自分でも本当になにを探しているのか、分からないのです。」


   「そうだね。君の中に潜む矛盾が、君をいつの間にかそうさせたんだよ。」


   「僕の中の矛盾・・・・」


   「太郎君、まだ時間はあるから、自分の中の矛盾を取り除けるように努力してみなさい。2年間この建物で過ごしていれば、きっと何か手がかりがつかめるよ。」


モミシダケ様は、そういうと、ナンとカレーライスをまるで、水を飲むかのように平らげ、食堂から、とぼとぼ歩いて出て行った。


   「僕は、どうすればいいんだろう・・・」


困っている太郎に洋子先生が言った。

  

   「太郎君は目の前にあることを一生懸命すればいいのよ。だからまず、アブチョウラ語を一生懸命勉強しましょう。」


 「太郎君は、29番室が自部屋になっているから、今日からはそこで、寝泊りしてくださいね。シャワーや、ベットなども完備されているから、安心してね。」


そう言って、洋子先生は掛けていたメガネをぴゅいっとかけなおした後、残っていたナンを半分ポケットにしまって、食堂を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ