学ぶべきこと
「ここからは当分出られませんよ。ここに来たあなたたちは何か学ぶべきものがあってきたのですから。」
女教師は薄笑いを浮かべながらそう言った。
「おい、お前名前は何ていうんだい?」
太郎は言った。
「私の名前は、洋子です。これからは洋子先生と呼んでください。」
「気に食わないね、あたしたちが、こんなところで何を学ぶっていうのさ?」
道子が言った。
「学ぶべき事はこれから申します。」
洋子先生が言った。
「ここからはいつ出られるんだ?」
太郎が言った。
「必要なことを学んでからです。」
洋子先生が言った。
洋子先生は、まるでそれが、義務であるかのような口調で彼ら二人にそう告げた。
「あなたは太郎君ですね。」
洋子先生は微笑みながらそう言った。顔は美人で、めはパッチリしていて、童顔のかわいらしい顔だ。
「なんで俺の名前を知っているんだい?」
「太郎君、これから当分ここで、語学の勉強をしてもらいます。
あなたは、今、タオライ人の姿をしていますので、これからこの教室で、
アブラ語を2年間に渡って、学んでもらいます。」
洋子先生によると、緑のリンゴを食べた太郎はタオライ人という部族に変身したのだ。
「そこの、浴衣を着た女性は、道子さんですね。」
「気安く呼ぶんじゃないよ!
いけ好かないね、インテリは嫌いだよ」
洋子先生微笑みながら、首を横に振った。
どうやら自分ではインテリだとは思っていないらしい。
「道子さんは、語学を学ぶ必要はありませんね、
浴衣を着ている様なので、これから、約2年間に渡って、踊りをマスターしてもらいます。」
道子は、しばらく呆然といていた。
すると教室のドアからまた一人入ってきた。
「道子さんは、ここにいらっしやいますでしょうか?」
そこには、さっき、SLから手を振っていた老人がいた。
「あなたが、道子さんですな。これから2年間にわたって、あなたに日本舞踊を教育させていただきます。マリウスと申します。」
さっき手を振っていた時の老人ではあったが、服装は浴衣に着替えていたようだった。
「あたしは、踊りなんて嫌いだよ。今までやったこともないし。」
「道子さん、あなたの教室は2289番室になります。あと、五分後に最初の受講が開始しますので、遅刻は厳禁ですよ。」
そう言うと、マリウスはそそくさと教室を出て行った。
ここは189番室だった。
「道子さん?何をボーっとしておられるのでしょう?早くいかないと、1934番室で、10年間バケツを持って立っておくことになりますよ。」
道子はそれを聞いて、ふんっと、洋子先生を睨みつけて、足早に、2289号室へ向かった。
どうやら道子もここの建物の神々しさには気づいているらしく、それには素直に応じた。
廊下には、彼ら二人以外に誰かいる様子もなく、189号室以外の教室には誰もいないようだった。
道子は突き当りのエレベーターに乗り、2289と書いているボタンを押して、
2289号室に向かった。