木の中へ
彼らは小麦畑に入って、半時間程になっていた。そしてそのころになると、前方に再びミステリーサークルの様な所が現れそこから、看板らしきものが見えてきた。
「俺これ読めんね。何て書いてあるか分からない」
「あたしにも分からないね、これは日本語じゃないみたいね。」
すると、柴犬に変身した先ほどの黒い物体は、地面に穴を掘り始めた。
ズガッズガッズガッ
ものすごい勢いで、穴を掘り、その中にすっぽりとうずくまり、顔だけ地面から出して、
舌を出して、へっへっへっと荒い息をしていた。
(この犬は、何をするつもりだろう?)
太郎は俯きながらそう思った。
柴犬は地面の底に根を張り始めた。
そしてたちまち柴犬からは枝が生え、背はぐんぐん伸び、3メートルほど高くなって、
リンゴの木に変身した。
そのリンゴの木には、いくつもの実がなっており、それぞれリンゴの色は異なっていた。
「急にどうしたんだろう?」
太郎は言った。
「どうしてこうなったんだい・・・あたしたちはどうしろっていうんだい?」
道子は言った。
「おそらくこのリンゴを俺たちにくれるんじゃないのかな?」
太郎は5つほどリンゴを取った。それは
赤、青、黄色、緑、紫
だった。
太郎はその中から、緑のリンゴを手でぬぐって、食べ始めた。
おおっ、うまい。それにみずみずしい。
すると、太郎の肌の色が、急に変わり始めた。
最初白色の肌だった彼の皮膚はたちまち黒色に変わり、また顔や、筋肉やら体全体が黒人の子になった。
「小僧・・その体は一体どうしたんだい?」
太郎は最初自分では気づかないでいた。
「俺・・・どうしたんだ?」
太郎は、自分の顔を手で触ってみた。
唇はたらこ唇のようになり、鼻は2倍ほどにも膨れあがって、少し丸みを帯びていた事に唖然とした。
「どうしてだろう・・きっと何か意味があるのかな?」
「さあねえ、あたしにはわからないわ。」
太郎は少し考えながらうーんうーんと言っていた。
すると、柴犬から生えてきた木はぱあーっと光を放ち、何か入り口の様なものが出現した。
「どこかにつながっているみたいだね。」
「小僧、あんた先に入んなよ。」
道子はそう言って太郎を無理矢理その入り口の中に押しやった。
しばらくして、中から太郎の声がした。
「姉さん、ここは入っても大丈夫そうだよ。」
それを聞いた女は、その入り口の中に入って行った。
するとそこは、学校のような建物になっていた。
入ったところは、教室になっており、その真ん中にはテーブルがあった。
「どこかの学校の様だね。」
「誰かいないのかい。こんなの薄気味悪くてたまんないよ。」
教室の部屋のドアから誰かが入ってきた。
「あら、新人さんみたいですね、ここに来るのは初めてですか?」
女教師が言った。女教師はメガネをかけて、ポニーテールをし、スーツを着て、右手には出席簿を持っていた。
二人はしばらく黙ったままだった。
木の光っていた入口が、閉まってしまい、入り口は教室の壁になってしまった。
「おい!どうなってるんだ!ここから出してくれ!」